黄金の公爵と愛の約束を
「エドワードちゃん!」
「お父様ーっ」
玄関にたくさんの人を従えてきたお腹の出たおじさんに抱きつく。ふくらんだお腹は、ぶつかっても跳ね返されるだけで、痛くなかった。
「お父様、おみやげは?」
「お前の部屋に、後で持って行かせるよ」
「わあいっ、ありがとうお父様!」
顔中にキスをふらされ、くすぐったくはないけれども、逃げる。
「エドワード様」
そこにキリガネが来た。良かった……!
「なあに?」
「そろそろ、お休みになられませんと」
「あ、そっかあ」
さりげなく、さりげなく、離れる。
「それじゃあ、お父様お休みなさい」
にぱあっと花みたいに可愛く笑う。そうすれば誰もが僕を苛めない。何も、怖くない。
「そんな……折角帰ってきたんだから今日は一緒に寝よう」
「わっ」
ぐいっと後ろに引かれる。足が宙に浮く。
「お、父様」
「いいだろう? エドワードちゃん」
うなじに息がかかる。体に腕が巻きつく。
「お父様を、愛してくれるだろう?」
一度だけ、キリガネの顔を見る。苦しげに顔をふせるキリガネに笑う。
「お休みなさいっ、キリガネ」
誰かとめて、誰か言って。誰か、僕の口を針で縫って、そして二度と開けないようにしてよ。
「お父様、エドワードはお父様のことを、愛してます」
お願い……。