黄金の公爵と人外の約束を
「まあ、可愛い男の子ね」
僕の胸よりも下に頭がある、ちょーんとちんまりとした女の子が僕を見上げて言った。
「シトラス。これ誰?」
「これ、なんて失礼な子ね。私は地を這うものよ」
きゅっと眉を寄せて唇をすぼめた顔が可愛い。どっかの良いトコのお嬢さんかな? って、名前おかしくない?
「地を這うもの?」
「私は能力者だから。貴方のお兄さんのパートナーなのよ」
よろしくね、って手を合わせてきゅんっと小悪魔的なポーズをとるから、
「そっか! よろしくねっ」
にぱーっと笑って手を出したら、能力者はそれをじっと見つめてきた。
「……よくもマスターに怪我をさせてくれたわね。おかげでここ五ヶ月の間、私は大変だったのよ」
そう言うと笑顔を歪ませて、
「私の能力は触れたり照準した物を爆発させるの。触ってみる?」
と手を出してきた。
「いい!」
僕はぞっとして手を引っ込めた。なんって、気持ち悪いんだ、コレ!
「そう。残念ね」
クスクスと笑って後ろを向いてしまう。
「ちょっ、ちょっとシトラス! あれ、なんなのさ」
「ですから、エディス様のパートナーです。今は能力封じの手袋をしているので触っても平気ですよ」
「……性格悪くない?」
「悪いです」
シトラスも僕も、額に手を当ててそっぽを向く。やっぱり、僕らの感覚は似てるみたいだ。
「お二人さん」
くるんっと赤いワンピースが翻って、能力者が僕を見る。
「来ないんだったら私、帰っちゃうわよ」
人であって、人じゃないものが僕を見ている。気持ち悪い、気持ち悪い。こんな物と同じ場所にいることが。空気を吸っていることすら、気持ち悪い。ここは僕の住む世界じゃない、此処は僕の舞台じゃない。だけど、それでも僕は進む。僕は進まなきゃ。
「行きましょう。エドワード」
シトラスが僕の手をゆっくりと握ってくれる。
「っ、う……うん!」
それに僕は頷いて。笑ったんだ。