黄金の公爵と呪いの約束を
「そういえば、昨日の兄様は変だったなあ」
朝、起きてすぐ。キリガネに着替えさせてもらって、紅茶を飲んだ後。僕は昨日のことを思い出した。
「兄様、お父様に怒ってたのかな」
でも、僕にも怒ってた気がする。ぞっとした。その場にしゃがみこみたくなった。
もし、兄様が僕からお父様を盗りにきたのだとしたら。もし、兄様が僕を変な目で見てきたら。
「……ど、すればっ」
カタカタと体が震える。僕は怖い。僕が愛さない人が、僕を愛さない人が。
「怖い!」
どうすれば、いい?どうすれば、お父様を守れる?僕のものでおいていかせられるの?お父様が愛さない僕なんて、どこにもいらない僕なんだ。
「僕を、殺すつもりなんだ、アレ」
顔をあげた。世界が真っ赤に染まってる。
「そう……そうなんだね」
くすくすと笑いがとまらない。
「ダメ、だよ。そんなこと、させない」
目に入った鏡に映る自分の姿を見、僕はさらに笑った。
「お父様は僕のもの」
音を立てて、その唇にキスをする。にっこりと僕が笑む。
「ね、そうでしょう?」
「兄様っ」
にぱーっと、太陽よりも明るくって可愛い笑顔。これを見たらどんな人だって僕の言う通りにしてくれる。
「エドワードさん……」
少し、後ろにお兄様が身を引く。お兄様はやっぱり、僕を簡単に見てる。
「おはよーございます、兄様ぁっ」
ぎゅっと、腕に抱きつく。
「お兄様、甘い物は好きですか?」
「えっ、いえ……すみません、少し」
そう。そうなんだ。
「ええーっ、美味しいですよー!」
そうなんだぁ。じゃあ、甘ーい、甘ーいお菓子を用意しておくよ。お兄様が死にたくなるくらいの、甘い快楽の渦。
「ねえ、一緒に食べようよっ」