リベンジ
ピピピピ
「う〜ん、もう朝かー」
私は頭上からやかましく響く機械音によって目を覚ました。伸びをして、乱れた髪の毛を手櫛で整えながらベットから降りると、カーテンと窓を開けて、朝の日差しと気持ちのいい風を体全体で感じながらもう一度大きく伸びをする。よし充填完了。時計を見ると6時を指している、今日は学校が休みなのでいつもより遅い時間だ。その後、かるくシャワーを浴びて、ドライヤーで髪を整え、身支度をし朝食を作る、今日の朝食は食パンとベーコンエッグだ。断じて昨日の失敗を気にしているわけだはない。
そして妹を起こしに行く。
「美春ー、朝ご飯出来たよー早く起きろー」
と大きめの声で言いながら、美春の部屋に入る。ベットの上の布団がモゾモゾと動いたが、起きる気配は無い。私はいつもしているように布団を引っぺがし、カーテンと窓を開ける。すると「お姉ひゃんおはよ〜」とまだ少し寝ぼけている美春が起き始める。
「ほら早くシャワー浴びてきて目を覚ましてくる」
と言ってベットから床に立たせる、美春は
「は〜い」
と言って寝ぼけ眼をこすりながら、シャワーを浴びに行く。私は自分と美春の布団を外に干し、昨日の夜回しておいた洗濯物を外に干して行く。干し終わり、台所に行って自分にはコヒーを美春には牛乳を入れて、机に朝食を並べ、席について美春を待つ。1、2分待っていると、寝癖だらけだった髪を何時ものサイドテールにして、タンクトップと短パンを履いた美春が「お姉ちゃんおはよう!」と言って元気に部屋に入ってきた。私は「おはよう美春」と返し美春が席に着くのを確認すると、「いただきます」と手を合わせて食べ始める。美春も「いただきまーす」と言って食べ始める。しばらく無言だったが美春が、
「お姉ちゃんさ、昨日の『IEO』やった?」
と聞いてきた、「やった」と答えると美春の目があきらかに輝きだし「どうだった?どうだった?」とすぐさま感想を聞いてきた。
「うん、良かったよ。思ってたよりもかなりリアルだし、美春が言ってたように現実より綺麗っていうのもわる」
美春は嬉しそうに、うんうんと頷いていた。それから美春に昨日の事を根掘り葉掘り聞かれた。
話しているうちに美春の表情がだんだんと残念なものを見る表情に変わって行った。「お姉ちゃんにそんな顔してはいけません」と思っていると、
「お姉ちゃん、どこから突っ込んでいいか分からなけど…まずなんでことごとく微妙スキルを選んじゃったの? 調合と錬金以外全部微妙スキルって凄いよ、しかも武器スキル短剣なんてゴミスキルなんて呼ばれてるのに…」
どうやら美春は私が選んだスキルが気に入らないらしい。理由を聞いてみると、
「百歩譲って他のスキルはいいとしても、何でよりにもよって短剣を選んじゃったの?双剣じゃダメだったの?β時代に色々な人が短剣使っていたけど、その殆どの人が双剣に乗り換えたんだよ。何故かと言うと、単純に双剣の方が圧倒的に性能がいいからなんだ。短剣は双剣の下位互換と言われる位に性能に差があるらしいよ」
と言う理由らしい。正直私は、前情報無しでスキルを選んでいたのでしょうがないと思う。
「弱くても、折角取ったんだし少し使ってみるよ」
「まあ使うのは自由だしね…でも、もうちょっと情報を知っておくといいと思うよ」
「うん、 そうする」
「それからもう一つ聞きたいことがあるんだけど、人の良さそうなお兄さんから松明買ったって言ってたけど、いくらで買ったの?」
「え? 2つで900Gだよ1つ1000Gだから結構お得だと思うよ?」
すると美春が「はー、やっぱりかー」と深くため息をついた。私がなんでそんな反応をするのか気になっていると。
「お姉ちゃん、松明なんて1つ100G位でそこら辺の露天で売ってるよ…」
と言われた。私は少し驚きながら、「それ本当?」と聞くと「本当だよ」と返された。
「お姉ちゃん多分、転売屋に騙されたんだよ」
「そんな人いるの?」
「そりゃあいるよ、おそらくお姉ちゃんが初心者って見抜いてつけてたんじゃないかな? お姉ちゃんしっかりしてそうで、実はそうでもないんだがらもっと注目しなきゃダメだよ?」
と何時も落ち着きが無い美春に言はわれた。私は悔しかったが事実なので素直に「今度から気をつけます」と言った。そして美春から色々話しを聞きながらの朝食を食べ終わる。
朝食を食べ終わった後、とりあえず公式サイトを見た。そこには、チュートリアルで教えられなかった色々な情報が書いてあった。一通り見て、「IEO」にログインした。まず向かった先は、昨日雇ってもらった「木漏れ日の喫茶店」だ。昨日、ガバンさんとシフトなどを話し合ったが、かなり緩かった。まず出勤する時間は決まって無く、いつでも良い。2日に1回(1時間)は必ず出勤すること。休む時は直接言いに来ること。だった、緩過ぎないか? と思ったがおそらく、プレイヤーの都合に合わせてあるのだろう。時給500Gだそうだ。
「ガバンさん質問いいんですか?」
「おう、なんだ?」
「昨日、私が目玉焼きを作る時、何で最初は作れなかったのに、エプロンを変えたら作れる様になったんですか?」
「ああそれか、まず何故失敗したかというとお前が『料理スキル』を持っていなかったからだな。で、何故エプロンを着けたら出来る様になったかというとエプロンに『料理スキル』が『エンチャント』されていたからだよ」
「エンチャント?」
「そこにある、エプロンの詳細を調べて見てくれ」
私は喫茶店に着いき、今日の仕事を始める前に昨日から気になっていた、何故料理スキルを覚えていないのに、目玉焼きを作れる様になったのかを、聞いてみた。すると、どうやらその秘密は、昨日私が着けていたピンク色のエプロンにあるらしい。とりあえず、エプロンの詳細を調べてて見る。
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名称 : 料理人のエプロン
カテゴリー: 防具
種類:布
詳細 :料理人が着けていたエプロン、美味し い料理が作れそう
防御力 2 耐久 30/30
必要能力 能力補正
筋力 - -
技量 - -
スキル 料理LV10
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エプロンのステータスを見ると、「スキル」と言う項目が増えていた。
「もしかしてこの『料理LV10』と言うのが、『エンチャント』されたスキルですか?」
「ああ、そのエンチャントされたスキルのおかげで料理スキルを持っていなくても、料理が出来る様になるって事よ」
「ガバンさんのエプロンにも、寄付されているんですか?」
「いや、俺はちゃんと『料理』スキルは覚えているぜ」
「まあ、そうですよね」
「エンチャントされたスキルはレベルが上がら無いからな、色々な料理を作りたいならちゃんとスキルを覚えた方がいいぜ。スキルについて詳しく知りたいなら、図書館に行くといい、あそこは色々な事が分かるからな一度行っみ見るといい」
「分かりました。色々教えてくれてありがとうございます」
「おう、じゃあそろそろはじめるか」
そして、喫茶店で2時間程働いた後、私は南門に向かった。昨日の雪辱を果たすべくフィールドに出るのだ。幸いにも公式サイトで知ったのだが今日明日は、夜が来ない設定になっているらしい(平日時間があまり取れない人のために)なので昨日のように真っ暗で何も見えないと言うことは無いだろう。
武器を装備してフィールドに出てみる。そこには開けた野原が広がっている、周りを見ると遠くの方で他のプレイヤーがチラホラ歩いているのが見える。とりあえず、私も歩いて探索して見ることにした。
南門を出て少し歩いた所を周りをキョロキョロ見渡しながら歩いていると、10m位の場所にヒョコヒョコと動く物が見えた。目を凝らしてみると、中型犬サイズのウサギだった。「かわいい!」と思いながら、音をたてないように慎重近づく。しかし後数メートルという所でウサギと目があった、一瞬見つめあったかと思うと、すぐさま俊敏な動きで逃げ出して仕舞った。私は直ぐ追いかけようとしたが、あまりにも動きが早くて見失ってしまった。少し落胆しながらも、先に進む事にした。
南門がかなり小さくなった頃に、周りに奇妙な生物(?)が沢山いることに気づいた。それを簡単に説明すると、一抱え位ある緑色のスライムだ。近づいてみてもただじっとしているだけで、何もしてこない。しばらく見ているとぼよんぼよんという効果音が似合いそうな動きで、ジャンプする様に動き出した。速度はとてつもなく遅く、普通に歩けば直ぐに追いつける程度の速度だった。私は少し興味がわいたのでついて行ってみようと思い、スライムの速度に合わせるようにゆっくりと後を追った。
「あなたなにしてるの?」
私がスライムの後を歩いていると、後ろから声をかけられた。振り向くとそこには、いかにも魔女です、という風貌の女性が立っていた。
「ちょっと、この変な生き物が気になってね」
「変な生き物って…それ、『グリーンスライム』でしょ。もしかして貴女初心者でしょ?」
「そうですけど」
「まあ、装備見れば分かるけどね。それより、何でスライム何か追っかけてるの? テイムでもする気?」
「いや、少し気になっただけです」
「そう、じゃあ私は行くわ」
と言って、女の人は興味がなくなったという様子になり、ローブを翻してその場を後にしようとした。私は少し疑問に思ったことがあったので、背を向けて歩きだそうとした女の人を呼び止めた。
「あのちょっと質問いいですか?」
女の人は足を止めて振り返る、
「なに?」
「貴女はいかにも初心者では無いのに、なんでこんな所にいるんですか?」
「ああ、それは新しく覚えた魔法の試し打ちと、ついでに薬草採集よ」
「薬草採集? ここって薬草手に入るんですか?」
「貴女…そんな事も知らずにここに来たの? ここは初心者御用達の薬草採集の名所よ」
「へー」
「…何か先輩として貴女が心配になって来たわ…決めた! 私の用事が終わったら、貴女にチュートリアルや公式サイトに載っていない初心者に有用な情報を教えてあげることにするわ!」
どうやら、魔女のお姉さんは結構親切な人らしい。
「え! いいんですか?」
「こっちから誘ったんだから、いいに決まってるでしょ。じゃあまず自己紹介をしましょう。私は『シア』よ、一応魔法使いをしているわ、よろしく」
「私は、『トウカ』です。昨日始めたばかりの初心者です。よろしくお願いします」
私が昨日始めたばかりと知ると、成る程という表情になった。
「昨日始めたばかりなら仕方ないわね、じゃあまず、新魔法の試し打ちするから着いてきて」
私は、シアさんに色々教えてもらうことになった。