プロローグ2
「やっぱりまだやってたんだ」
私は美春の部屋に入り、少し呆れた感じに呟いた。もう日がほとんど沈み薄暗くなっている、部屋の電気を付けて、ヘルメットのような器具を着けて、ベッドで眠っている少女に近ずく。「これでゲームしてるんだがら凄いよね」と思いながら、少女のかぶっているヘルメットに幾つかついているボタンの中の1つを押した。
ボタンを押して1、2分経った頃だろうか、眠っていた少女が、「うん〜」と言う声と共に起き始めた。
「美春おはよう」
「ん〜、お姉ちゃんおはよう〜」
「もう、ご飯出来てるから」
と言い美春の部屋を出る、後ろから「今行く〜」と美春もついてくる。リビングに入り夕食の並んだ席に着き美春を待つ、「お腹空いた」と言いながら美春もリビングに入ってくる。
「ん?お姉ちゃんそれ何?」
と美春はリビングに放置してあった「箱」を指差す。私は「あー、そういえば忘れてた」と思いながら、
「さっき商店街の福引きで当たったん「開けていい!」え、いいけど」
説明を最後まで聞く前に、美春は「箱」に飛びついた。「そんなに急がなくても…」と思う私を尻目に、綺麗に包装されていた「箱」からビリビリと雑に包装紙を破いて行く。
「‼︎、お姉ちゃんこれって! VRギア! しかも「IEO」の特別版じゃん何処で手にいれたの!」
と凄い驚いた顔でこっちを見てくる。
「だから、さっき商店街の福引きで当たったの」
と答えると、
「確かその商店の福引街きでVRギアって一等賞じゃなかった?」
私が「うん」言うと「やっぱり…」と少し微妙な表情になる、
「お姉ちゃん相変わらずの強運だね、私の「IEO」βテスト募集の抽選の時も、お姉ちゃんのIDが当たったんだよね」
「別に強運と言う程のものでもないと思うけど…」
妹が何を言っているのかと言うと、数ヶ月位前にVRMMOゲームの新作「IdealEarthOnline」のβテストの募集があった、そこで妹がどうしてもテスターに選ばれたいと言うことで、家族、親戚に頼み込み募集に応募してもらった、
そしうしたら、私の応募したIDが当たったのである。
その時に妹が抱きついてきて「お姉ちゃん大好き!」と言ってきたのがとても可愛かったなー、どうして私は可愛げがないのか、はあ…
「そ☆れ☆で、お姉ちゃんも「IEO」やるの?」
とキラキラした目で見てくる、
「せっかく当たったんだしやろうかなとは思ってる」
と言うと「ヤッター! お姉ちゃんと一緒できるー」などと言っているので
「私はソロでマッタリやるつもりだけど?」
と訂正を入れると、
「えー、一緒のパーティー入ってくれないのー」
と返されたので、
「3回も夕食の時間を忘れる人がいるパーティーに入ったら夕食を作る人がいなくなるじゃない?」
と笑顔で返すと
「ぐぬぬ…ごめんなさい」
としょんぼりした顔で謝られた。そんなしょんぼりした顔で謝られると少し罪悪感が出てくる、でも心を鬼にして、
「今回の3回の件は、トイレ掃除で勘弁してあげる。だけど、ゲームの事以外もちゃんとやりなさいよ?」
と注意すると「はーい、そんな事よりご飯食べちゃおう!」と言って席につく、「本当にわかってるのかな?」と少し不安に思いながら私も席につく。
「ご馳走様、お姉ちゃんカレー美味しかったよ」
「お粗末様、美春はこの後どうするの?」
「もちろん『IEO』だよ」
「程々にしなよ」
「わかってる♪」
たわいも無い話をしながらの夕食が終わると、美春はそそくさと食器を台所に置いて二階に上がって行く。「本当にわかっているのかな」と思いながら、私は自分と美春の食器お手早く洗って片付ける。
「折角当たったんだしやってみよう」
自分の部屋に入り、福引きで当たった「VRギア」の箱を開封して行く。箱の中には「IEO」インストール済みのヘッドギア、接続コード数本、簡易型全身スキャナ、各種説明書が入っていた。とりあえず、ヘッドギアをパソコンに接続し、説明書を見ながら初期設定して行く、
「ふぅ、こんな感じでいいかな?」
とVRギアの説明書を置き、「IEO」の説明書を手に取る。
「IdealEarthOnline(イデアル アース オンライン)」通称「IEO」数年前に一般に普及し始めた「ヴァーチャルリアリティ(VR)技術」を使ったゲームハード「ヴァーチャルリアリティヘッドギア」通称「VRギア」のソフトで、VR技術をふんだんに使った物凄く完成度の高いMMORPGゲームらしい。
妹曰く「現実より綺麗」との事、人気があり過ぎて、第一陣は販売開始30分程度で完売、第二陣も予約はすでに一杯だ。妹が何故そんなレアなゲームを持っているかと言うと、βテストを受けた時に優先して購入出来る権利が貰えたらしい。
と、此処までが私の知っていることだ、
「説明書にも特に何も書いてないな」
説明書には、MMOでの基本的なマナーや注意書きなどゲームについての情報が殆ど書いてなかった。
「とりあえず、やってみよう」
VRギアを頭にかぶりベッドに仰向けにねこるぶ、そしてVRギアについているログインボタンを押すと視界がブラックアウトした。