プロローグ
カラ〜ン カラ〜ン
「一等賞おめでとう」
「......は?」
此処は商店街の一角にある空き地、今は大きく「本部」と書かれたテントが張られている。
今私は、口をだらしなく「ポカン」と開けたマヌケ面で、法被を着てハンドベルを鳴らしている町内会のおばさんを見つめている。
「じゃあ今包んじゃうから、ちょっと待っててね」
と言いながら、自身の後ろの棚の一番上、一等賞の札と共に置かれている「箱」を、梯子に登り慎重に降ろしてくる。
「はあ」
と未だに状況を掴めていない私は、マヌケな顔をしながら答え「箱」が花柄の包装紙に、手際良く包まれて行くのを見つめる。
「出来たよじゃあ、これ一等賞の『バーチャルリアリティーヘッドギア』ね、冬華ちゃんそろそろ夏休みでしょ? 存分に楽しんでおくれ」
と綺麗なほうれい線の目立つ笑顔で言った。
私は丁寧に包装された「箱」を受け取り、「は!」と我に返り慌てて
「あ、ありがとうございます」
と少しお辞儀しながら言うと。「いいて、いいて」と返された。私はもう一度御礼を言うと、自分の後ろに並んでいる人の事を考えて、食材が入ったエコバックを肩に掛けて「箱」を両手に抱えて、そそくさと夕暮れのなか、家路についた。
「まさか一等賞が出るなんて、明日雪でも降るのかな?」
途中にある信号を待ちながら、そんな事を呟く。そもそもどうしてこんな事になったかと言うと、夕食にカレーを作ろうと思い、冷蔵庫の中を覗くと材料が色々足りていない事に気づいた。そして、近所の商店街に食材を買い足しに行くついでに、貯まっていた福引券を使いに行った。
で、今に至る。私は玄関の鍵を開けて、家のなかに入る。
「ただいまー」
「......」
帰宅したことを告げるが、返事がない。留守とゆうわけではなく、妹がちゃんと帰宅済みである事は、家を出る前に確認済みである。では何故返事がないかと言うと、十中八九「あれ」だろう。
「まだやっているのかな?まあ、夕食が出来る頃に呼べばいいか」
と言い、荷物をリビングに置き、ピンク色のシンプルなエプロンを着ける。台所へ行き夕食の準備に取り掛かる。
「ふう、とりあえず夕食の支度は終わったかな」
と呟きながら、エプロンを脱ぐ。今日の夕食はカレーとレタスのサラダだ、夕食の準備が終わったので妹を呼ぼうと二階に向かって、
「美春ーご飯できたよー」
と呼んでみたが返事がない、もう一度少し大きめで「美春ーご飯食べないのー」と呼んでみたが返事が帰ってこない。
「はー...しょうがないなー」
やれやれという感じで階段を上がって行く。「これで3回目だよ、どうしてくれようか」などと考えながら、階段を上がり終える。二階は左右に部屋が1部屋ずつあり右が私で、左が妹の部屋だ。そして、私は左の部屋の扉のドアノブに手をかける......
「ハル!そっち一匹行った!」
「任せて!」
此処は、深い森の木々が立ち並ぶ中少し開けた場所、6人の少女達と青色の狼3匹が対峙していた。そして、1匹の狼が少女達の1人に飛びかかったところだった。
「せい!」
と大きな掛け声とともに、飛びかかられた少女は、自身の身長程ある巨大な「大剣」を狼の横っ腹に叩き込んだ。「ガウッ!」と苦しそうな鳴き声とともに狼はそのまま吹き飛ばされていく。と同時に残り2匹の狼が剣を振り抜いた体制でいる少女に飛びかかった。
「マイちゃんお願い!」
「分かってるわよ!」『ブロック』
「ツーハンドソード」の少女の前に「盾」と「片手剣」を持った、少女が出て盾を構える。その時、盾が光を放ち狼達がその盾にぶつかって後ろに跳ね飛ばされる。
そして、先ほど吹き飛ばされたていたもう一匹の狼が復帰してきて、3匹と6人が対峙した。その時に少女の中の1人が
「あ⁉︎」
と何かを思い出したように呟く。その反応に、「どうしたの?」とたずねられるが「なんでもない」と返す。
そして、大きな「槌」を担いだ少女が
「次はこっちの番だ!」『グレートプレス』
と跳び上がり大きな「槌」を狼に向かって振り下ろす。「ズガン」と激しい音が鳴り狼を踏み潰す。踏み潰された狼は、完全に動かなくなった。
「よし!一匹目!」
そして、間髪入れずに「双剣」を持った少女が素早い動きで、最初にダメージを受けた狼に近づき「ほいほいっと」となんとも気の抜けた掛け声で、ラッシュをかけてゆく。狼はもともとダメージを受けいていたこともあって、呆気なく地面に沈んで行った。
狼は最後の1匹になり、勝てないと踏んだのか背中を見せて、駆け出した。
「にがしません!『ファイアーアロー』」
と「杖」を構えた少女が呪文を唱えると、「杖」の先端から炎で作られたような「矢」が出現した。そしてその「矢」は、狼を追尾するようにして飛んで行き、狼の背中に突き刺さった。その瞬間狼の背中が燃え上がり、「キャウッ」と声をあげ走るスピードが遅くなった。そして、
「もらった!」
と掛け声と共に後ろから追って来ていた「大剣」の少女によって斬り伏せられて、地面に崩れた。
「ふー、危ない危ない逃げられるところだった」
と「大剣」を鞘に納めて背中に担ぎながら言うハル
「あんた!剣を最後まで振り抜くんじゃないわよ!ただでさえ隙が大きんだから」
「マイちゃんが守ってくれなくても、あれ位簡単に避けれますよー」
「避けたらリリーやルカの方に敵が行っちゃうじゃない!」
「まあまあ、その辺で、倒したんだしいいじゃない」
とハルにあたっている「片手剣」と「盾」を持っているのがマイで、それをなだめているのが「双剣」を使っていたシズだ。
「ごめんなさい!全然役にたてなくて...」
「ルカさん大丈夫です。そもそも『ブルーウルフ』は、水属性の耐性が強いので水属性中心のルカさんには相性が悪かったので、仕方が無いです」
「う、でも…」
と頭を下げて謝っている、「杖」を持っている少女がルカでそれを励ましている先程『ファイアーアロー』を放った少女がリリーだ。
「そういえば、ハルのさっきの『あ⁉︎』てやつは何だったんだ?」
とハルに問い掛けている「槌」を持っているのがマリーだ。
「あ!忘れてた早くログアウトしないとお姉ちゃんに怒られる!」
と慌てるハル
「そうだね、そろそろみんなも一回ログアウトしない?」
とシズの提案に「それもそうね」「そろそろ夕食だしね」
と他のメンバーも同意する。
「じゃあまた、夜に『ゴダの街』の西門に待ち合わせね」
とハルの提案に「オッケー」と同意してみんなはそれぞれログアウトして行く。