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リインカーネイターVSリグレッサー  作者: ダン・水木
アーク1 - 入学試験

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偽りの希望

私は前方を見据えた。そこには、ただ深まりゆく影が私たちを待っているだけだった。空気はより重く感じられ、草は十分な陽光を受けられずにまばらになっている。虫の羽音や鳥のさえずりは、ゆっくりと耳から消えていった。

当然のことだ。小さく弱い生き物は、常に外縁部を住処に選ぶ。それが本能だからだ。森の中心、影の中には、より強い存在が棲んでいる。

「ここ、なんだかぞくっとするわ。」首の後ろをさすりながら、アムステルダムの宝石が言った。「正直に言って、森に入るのはこれが初めてなの。私の領地では、見渡す限り海しかないから。」

私はその隣に立つフランスの少女へ視線を向けた。「お友達に比べると、レディは慣れているようですね。以前から森に入ることが多かったのですか?」

「ええ。」彼女は短く答えた。

「本当? クレア、よく森に入るの?」アムステルダムの少女は、フランスの寡黙なレディに顔を近づけた。瞳を好奇心で輝かせ、止まることなく質問を浴びせる。

私はわずかに目を細め、それから再び緩めた。

彼女は自由に笑い、瞳を輝かせている。その中に、未来で聞いた「優しく母性的な女王」の姿は見えなかった。ただおしゃべりが止まらない少女がいるだけだ。

私は息を吐いた。

いや、まだその時ではないのかもしれない。それでも、今のところ私は、未来で彼女が持つ三つの毒のうち一つしか見ていない。あるいは、まだ表に出ていないだけか。

「オ、オーレンズの私たちの領地には広大な森がたくさんあります。私は侯爵家の唯一の後継ぎなので、父がよく森へ狩りに連れていってくれました。だ、だからこの雰囲気には慣れているんです。」

「わあ、すごいわクレア。私は狩人が書いた文学の中でしか森を見たことがないの。もし私の領地にも森がたくさんあったら……きっと素敵でしょうね。」

私の領地……私たちの領地……か。

彼女たちが自分の土地をどう呼ぶか、それだけで環境がいかに彼女たちを形作ったか、本質がどういうものか理解できる。一人は自由奔放で、自らの権利を主張する少女。もう一人は静かで、上位者にまだ依存している少女。おおよそ、そんなところだ。

「でも、アリシア。あなたの領地は海産物が豊富で、王国間交易の先進的な中心地だと聞いたわ。それで十分じゃないの?」

「もちろん分かっているわ。」アリシアは顎を上げた。「私の領地は王国間交易で確かに裕福よ。でも、それでもアムステルダムは天然資源に恵まれた都市ではないの。」

思わず笑いが檻から抜け出した。二人は困惑した顔で私を見る。きっと気が触れたと思っただろう。

「何がおかしいの?」

私はゆっくり首を振った。「何でもない。ただ……昔読んだ本を思い出しただけ。人間は強欲な生き物だ。何かを得ると、別の何かを欲し始める。」

二人は首を傾げる。

「分からない?」私は片眉を上げた。「貧しくて満足に生活できない人々を見たことは? 彼らは裕福になりたいと願う。そして誰かが大金を与え、一夜で富豪にする。彼らはそれで満足すると思う?」

「も、もちろん。」

再び私は首を振った。「違うわ、レディ。彼らは決して満足しない。さらに求め、強欲になり、浪費し、怠惰になる。やがて自分のことしか考えない腐敗した貴族と変わらなくなる。」

「でも、全員がそうじゃないでしょう? 本当に満足する人もいるはずよ?」アリシアは声を荒げた。

「確かに……本当に満足する者もいる。でも少なくない数が、私の言った通りになる。結局は本性に帰結するのよ。」

「分かった?」

二人は何も言わず、深く頭を下げた。

気づかぬうちに、私の視線はアリシアへ鋭く向けられていた。

ああ……あの怨嗟の炎はまだ胸に燃えている。今生で二度目に会っただけだというのに、私はまだ彼女を憎んでいる。冷静であろうとしても、浮かぶのは遠い未来の悪夢の残滓ばかり。

私が彼女の誘いを受けた理由は、学院ポイントのためではない。このアリシアが、私の知るアリシアと同じなのか確かめたかった。それとも……本当に女王になる前に変われるのか。

「まだ分かりません……」クレアが呟いた。

「構わない。いつか分かるわ。」

アリシアが何か言いかけた瞬間、左の闇から低い唸り声が響いた。私は小さく舌打ちする。会話はここまでのようだ。巨大な黒い猪が風のように突進してきた。

アリシアは素早く地面に手を打ちつけた。鋭い氷が隆起し、前方に尖った防壁を形成する。薄い霜が地面に広がっていく。

キィィ……

猪は滑った。巨体が前へ滑走し、鋭い氷に激突する。厚く悪臭を放つ液体が体の穴から溢れ出した。

私は彼女の素早い判断に拍手した。実に効率的だ。防ぐだけでなく、滑らせて容易に仕留める。単純な策だが、この時代では誰も思いつかないかもしれない。

「お見事、レディ。」

「す、すごいわ。どうしてそんなに早く思いつくの、アリシア?」

「えへへ~ありがとう。大したことじゃない、ただの偶然よ。」

「それでも見事です、レディ。将来あなたはきっと“千策の美女”と呼ばれるでしょう。」

アリシアは突然一歩下がった。顔に浮かんだ衝撃は隠せない。やや過剰な反応だ。何かおかしかっただろうか。しかし……それは確かに未来の彼女の称号だ。

「どうかしましたか、レディ?」

「な、なんでもないわ。」

ぎこちなく笑い、後頭部を掻く。その不自然な仕草に、何かを隠しているような違和感を覚えた。だが、単に褒めすぎただけかもしれない。

「まったく……」腕を組み、息を吐く。そして前方を見ると、再び赤い目が潜んでいた。「どうやら次の獲物のようね。」

二人は私の視線を追う。クレアが両手を上げ、構えを取る。アリシアも同じく。

だが私は腕を解き、気軽に後退した。

「ま、待って……どこへ行くの?」

私はアリシアに手を振った。「戦えないの。足手まといになるだけ。二人でできるでしょう? それとも囮になる? ポイントは気にしないで。いらないわ。」

「そ、そういう意味じゃなくて……」

「前にも言ったでしょう? 戦えないって。」

アリシアは苛立ちを隠せず、桃色がかった赤い髪をかき乱した。「ああもう、知らない! 好きにしなさい!」

「役立たずを誘ったのは誰?」私は小さく笑い、闇に潜む影と向き合う二人に空間を与えた。

「ルォォォ!」

「はああっ!」

ドンッ!

戦いの音が背後で渦巻く。私は微笑むだけ。どう戦おうと構わない。

私はいつも衝突を避けてきた。回帰前からそうだ。何も気にせず、できるだけ遠くへ逃げる。ただ心のどこかで……あの怪物が未来の女王を殺してくれればと、わずかに願った。

「……無理ね。」肩をすくめた。

「グルル……」

振り向くと、赤金の鋭い目をした身長一・五メートルほどの二足歩行のトカゲが数体。牙は鋭く、爪は鎌のよう。鱗には赤、黄、青の模様。色に応じて魔法を使う変異個体だ。

私は苦笑した。

「ヴェロキラプトル……か。」

彼らの視線は私だけでなく、背後の戦いにも向いている。負傷者や疲弊した獲物を狙うのが本能なのだろう。あるいは私を先に殺し、その後を襲うつもりか。

一体が跳びかかる。

私はわずかに身体をずらす。

掴む。

首を握り、洗濯物を絞るように捻る。鈍い音が響き、首は不自然に折れ曲がった。

私は戦闘が得意ではない。特別な力もない。ただ少し体が丈夫な鍛冶師に過ぎない。

残り二体を見る。「次はどっち?」

仲間の死を見て、低く唸り、逃げようとする。普段なら見逃すが、今回は駄目だ。変異個体は危険だ。

「Erscheinen……」

両手に魔力を流す。左手に大弓、右手に矢が現れる。弦を強く引く。

彼らは闇へ走る。

「残念。もう心臓を捉えている。逃がさない。」

放つ。矢は風のように走り、雷光のように闇を裂いた。

「ギャアッ!」

「ギャアッ!」

叫びはすぐ消えた。

私は息を吐き、足元の死骸を見る。耳がない。ポイントは得られないかもしれない。

卵生には耳がない。だが目ならどうか。

本来、鍛冶師の私にとっては素材の方が重要だ。変異個体ならなおさら。

「持っていくか。ポイントにならなくても、失敗作の材料にはなる。」

死体を持ち上げ、自作の収納指輪へ。市場の十倍の容量。売らなかった数少ない成功作。

振り返ると戦闘は終わっていた。血痕を見られ、戦えると誤解されるのは面倒だ。

「さて、行きましょう。」青空を見上げ、しばし沈黙する。「……所詮、虚ろな希望に過ぎないけれど。」

私は再び歩き出す。憎んでいる少女へ。変わってほしいと願う少女へ。自分の優しさがどれほど危険か、決して気づかないかもしれない少女へ。



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