最初から大混乱
私が乗っている馬車は、白いレンガが整然と敷き詰められた道を、がたがたと軽快に揺れながら進んでいた。半開きの窓のカーテン越しに、私は屋台を並べて商品を売り叫ぶ商人たちの姿を覗き見た。
私と同じチュニックを着た若い少女たちが、屋台の一つで果物を買っているのが見えた。なぜかその光景に、私は無意識のうちに口元を緩め、優しく微笑んでしまった。
「レディ・アリシア、もうすぐ到着です」
御者が馬車の前方からそう言った。
私は小さく頷いただけだった。
数分後、馬車はついに巨大な門の正面で止まった。まるで頭上に広がる果てしない青空に挑むかのように、傲然とそびえ立つ門だった。それは、外の世界と、私がこれから入学する最も名高い魔法学院を隔てる象徴となる門でもあった。
御者の合図を待つことなく、私はショルダーバッグを掴み、興奮したまま扉を勢いよく開け、靴先が地面に触れた瞬間に駆け出した。
「ま、待ってください、レディ——」
「じゃあね、ウェグホルスト。お父様によろしく伝えて。」
私は明るく手を振り、忠実な御者が言い終える前に、すぐさま姿を消した。
背後から、苛立ちのこもった大声が聞こえてきて、私は思わずくすりと笑った。間違いなくウェグホルストだ。
「ごめん、ごめん。どうしても我慢できなかったの、ウェグホルスト。」
やがて、私の足取りはゆっくりと落ち着いていった。私は長く息を吐き、コマドリの卵のように淡く染まった朝空を見上げた。
「もしかして……本当のアリシアも、こんな気持ちだったのかな」
私は小さく呟いた。
そう。人々は私を、港町アムステルダムを治めるヴァン・バステン公爵の娘、アリシア・ヴァン・バステンとして知っている。けれど、誰も知らないことがある。私は、本当のアリシアではないかもしれないということだ。
十七年前、亡き母の胎内からこの世に生まれ落ちた時、私は別の世界から転生してきた存在だった。魔法のない場所でありながら、科学だけが急速に発展していた世界。
そしてもう一つ。数年後、私は気づいた。今私が生きているこの世界は、私が暇な時によく遊んでいた少女向け恋愛シミュレーションゲーム、その舞台そのものだったのだ。『Starlight Romance』。
私はぶれることのない視線で、迷いなく前へ進んだ。
門をくぐった瞬間、私は目を見開き、顎が外れそうになった。靭帯がなければ、本当に落ちていたかもしれない。
背後の巨大な門よりもさらに傲然と、高い塔がそびえ立っていた。鋭い先端は、上空を漂う雲を切り裂いているかのように見えた。塔の周囲には、いくつもの長方形の建物が並んでいる。おそらく寮か、あるいは魔法学院の学生たちが授業を受ける教室だろう。
左右へ顔を向けると、色とりどりの花園が満開だった。芳しい香りに、薬草の匂いが混ざっていたが、どこで育てているのかは分からない。
「この匂い……でも薬草が見当たらない。どこで育ててるの?」
私は立ち止まり、腰に手を当てて少しの間考えたが無駄だった。何も見つからない。
「やっぱりここは最高ね。」
満足して、私は振り返り、再び軽やかに歩き出した。
ソラリア。それが、マドリードの街にある魔法学院の名だった。この学院は、ほぼあらゆる面で常に一位を誇ってきた。帝都アルカトラズの中心に位置していながら、他のどの魔法学院よりも中立的だとされている場所でもある。
才能と将来性を持つ学生たちが多く志願する。入学試験も当然のように厳格に行われる。たとえ皇帝の子であろうと、試験に落ちれば容赦などない。
「やっとだわ〜。私の努力が、今日すべて報われる。」
ゲームの中で、アリシア……今の私が主人公だった。物語の都合で成功が約束されているかもしれない。けれどそれは、ゲームの中だけの話だ。生まれただけで、私はすでに運命に影響を与えるバタフライエフェクトを起こしてしまっている。
だからこそ、私は十七年間ずっと努力を続けてきた。万が一、運命が軌道を外れることがあった時のために。
起こるとは思っていなかったけれど。もし突然学院に入れなくなって、物語が別の女に移ってしまったら、それは馬鹿げている。なぜならそうなれば、私もこの王国も、確実にバッドエンドへ向かうからだ。
静かに息が漏れた。
「後で考えよう。今はゲームを楽しむの!」
私は周囲を慎重に見回し、誰かに遭遇しないか探した。
「そろそろ最初のイベントが始まる頃じゃない?」
掲示板を見ようとした時、私は人だかりを見つけた。掲示板の前ではなく、数メートル横に、蠅のように群がっている。
私は片眉を上げた。すぐに分かった。これは、物語のメインルートへ入る最初の分岐点だ。
私は迷いなく受験者の集団の間をすり抜けた。幸い、この細く小さな身体なら、狭い隙間にも簡単に入れる。
「すみません……すみません……可愛い子が通りまーす。」
最前列で、私ははっきりと見た。二人の争う姿。片方は金髪の男で、横目で睨みつけていた。貴族の徽章が、まるでわざと見せつけるように左胸に留められている。もう片方は、茶髪の少年で、地面に座り込み、拳を握りしめていた。何かを必死に堪えているように。
「お前みたいな能力で、ソラリアに足を踏み入れる資格があると思っているのか?」
金髪の声は鋭く、騒ぎの中を切り裂いた。
「ここは選ばれた者の場所だ。乞食がそれを装う場所じゃない。」
私は深く息を吸った。どうして、ほとんどのゲームやフィクションって、入口で必ずこういうテンプレ展開を入れるんだろう? 他に発想はないの? 制作チームは創造性がないの?
そう。いいわ、忘れて台本通りに進めよう。これで、メインルートの男主人公、レオ王子へ繋がる強制イベントが発生する。
でもその瞬間、私は偶然、茶髪の少年の握りしめた手に目が落ちた。それは、堪えている者の握り方だった。あるいは、反撃の準備をしている者の。
まただ……ゲームにはなかった細部。
もっと見ていたかった。でも時間がない。群衆がざわめき始めていた。今動かなければ、イベントがキャンセルされ、別の男主人公ルートに強制されるかもしれない。
よし。やるしかない!
私は一歩踏み出し、少年へ手を差し伸べた。
「何があったの?」
茶色い瞳の少年が顔を上げた。答えることをためらう色が、その目に満ちていた。
「い、いえ、レディ」
彼は掠れながらも澄んだ声で言った。
「これは……あなたのようなお方が関わるべき問題ではありません。」
そして背後から、ブーツの足音が近づいてきた。安定した、威厳ある足取り。囁き声が一斉に立ち上がり、彼の存在を伴って広がった。まるでゲームの脚本が運命そのものだったかのように、完璧なタイミングで。
風が突然吹き、太陽のように輝く金髪が揺れた。自然そのものが、彼の登場を演出しているようだった。
彼の人差し指が、先ほどまで虐めていた貴族へ向けられた。
「名誉ある貴族として、他者に対して残酷な振る舞いをするべきではない。彼は何も悪くない。今すぐ彼に謝罪しろ。跪いて。」
その大きな命令に、貴族は一歩後ずさった。顎が引き締まり、拳が握られる。明らかにやりたくないのだろう。だが周囲の冷ややかな視線が、彼を追い詰めていた。
結局、彼は不安定な動きのまま、前へ出た。
私にとって、跪いて謝罪するのは当然だった。どんな理由があろうと、身分が少し低いだけで人を嘲るなど、真似すべき行為ではない。悪いのは明らかに貴族の側だ。
「そこまでする必要はないんじゃないか?」
貴族NPCが跪こうとした瞬間、突然声が割り込んだ。乱れた赤髪の少年だった。琥珀色の瞳は美しいほど澄んでいながら、吸い込まれるような深さを秘めている。
待って……誰、この人?!
私は目を見開いた。私はこのゲームを何千回もプレイした。それなのに、こんなふうに物語へ介入できるNPCなんて、一度も覚えがない。
いったい何が起きてるの?!
私は王子の方へ振り向いた。なぜか彼は唇を強く結び、冷や汗がこめかみをじわりと濡らしていた。
「全部見ていたよ、王子。」
赤髪の少年は冷ややかな口調で言った。
「その貴族にだけ謝罪を求めるのは不公平だ。本当は、ピンク髪のお嬢さんの隣にいた男が、よそ見をしてぶつかったんだ。」
少年の口元が、わずかに上がった。
「それに、小さなミス一つで跪かせるのは、行き過ぎじゃないか? 君は何だ、正義の神か? 好き勝手に罰を決められるのか? もしそうなら、その傲慢さはあの貴族と変わらないだろ。ああ、違いがあるとすれば、君が守る相手を選んでいるってことだけだ。」
うぐ……
刺さる言葉だった。でも……なぜか……彼の言うことは全部筋が通っている。私は一文たりとも反論できなかった。王子の反応も、私と同じだった。
少年は続けた。
「賢い王子なら、握手で終わらせる程度で十分公平だろ? 本当に賢い王子ならね。庶民から同情を買いたいだけの人間じゃないなら。」
王子の手が握りしめられた。表情が暗くなる。そしてついに、深いため息を吐いた。
「君の言う通りだ。私は間違っていた。感情に流されて、あの貴族に過剰な要求をしてしまった。」
「感情……ね。まあいい。年齢の割に、まだ不安定だな。」
もう一度、私は注意深く見た。彼の口元が一瞬だけ上がり、冷ややかな笑みを形作った。
「じゃあ、ここで終わりにしよう。試験はもうすぐ始まる。二度と会わないことを願うよ。」
男は背を向け、手を振った。
私はその背中を見送った。広い背中。肩は完全に伸びきっておらず、歩みも少し重い。彼の年齢の少年らしくはなかった。
男は一瞬立ち止まり、獲物を狩る獅子のように鋭く振り返った。琥珀色の虹彩が、私の空色の瞳と重なったと気づいた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
え……私を見てる?
だが数秒後、彼は舌打ちをし、そのまま歩き去っていった。
あの視線、何だったの?




