効率的なクエスト消化と、人権という概念の死
冒険者ギルド
朝一番、冒険者ギルド。 受付嬢が引きつった笑顔で迎える。
受付嬢「お、おはようございます、ユウトさん……」
ユウト「クエスト、全部」
「え?」
「掲示板の、全部受ける」
アリア「ちょっと待て!」
【クエストを受注しました】
【貴族令嬢救出クエスト】
【灯台のランプ修復クエスト】
【薬草採取クエスト×99】
【ゴブリン討伐クエスト】
シエナ「……99?」
ユウト「薬草は受注制限ないから、99個受けといた」
アリア「そういう問題じゃない!」
盗賊のアジト:貴族令嬢救出
洞窟の奥。 盗賊たちが倒れている。
ユウト「はい、救出完了」
金髪の少女(5歳)が震えながら立っている。 高級なドレスを着た、明らかに貴族の娘。
エミリア「あ、ありがとうございます……お家に……」
ユウト「え、まだクエスト残ってるし」
「え?」
【パーティメンバーに追加しました】
【経験値ボーナス+10%】
ユウト「バフ要員確保。はい、アリア持ってて」
アリア「持ってて!?」
ユウトがエミリアを抱き上げ、アリアに渡す。
アリア「ちょ、待っ……」
エミリア「わぁ!お姉ちゃん、猫さんだ!」
アリア「……はい」(諦め)
薬草リポップ地獄
森の洞窟。 宝箱が青く光る。
ユウト「ここ、30秒でリポップするから」
宝箱を開ける。薬草×10。
ユウト「はい、アリア」
アリア「……はい」
30秒後。宝箱が再び光る。
ユウト「はい、アリア」
アリア「……はい」
背中のエミリア「すごーい!宝箱が光ってる!」
1時間後
シエナ「……これは、何でしょう?」
アリア「あー、気にしないで。いつものことだから……」
【アリアの持ち物:薬草×99,999】
エミリア「お姉ちゃん、お花の匂いがする!」
アリア(この子だけが……この地獄で唯一の癒し……)
ゴブリン狩り:コマンドバトル地獄
薄暗い洞窟。 ゴブリンが3匹、のんびりと座っている。
ユウトの前に半透明のウィンドウが展開。
【戦闘開始】
ユウト「よし、戦闘」
→【アリア】→【たたかう】→【ゴブリンA】ピッ♪
アリア「は!?」
体が勝手に前に出る。 巨大ハンマーを振りかぶる。
アリア「ちょっと待て!背中に子供いるのに!?」
ブンッ! スカッ。
ゴブリンAは微動だにせず。 ハンマーが重すぎて当たらない。
→【アリア】→【たたかう】→【ゴブリンA】 ピッ♪
スカッ。
エミリア「お姉ちゃん、がんばれー!」
→【アリア】→【たたかう】→【ゴブリンA】 ピッ♪
スカッ。
アリア「なんで!何度も!同じことを!」
ゴブリンA「?」(首を傾げる)
30分後
ユウト「日が暮れるなぁ……」
アリア「あ、あたしのせいじゃないから!武器のせいだから!!」
怒りのままに全力で振り下ろす。
ドゴォォン!!
ゴブリンAが光となって消える。 【経験値+30(ボーナス込み+33)】
エミリア「やったー!光った!きれー!」
ユウト「次」
→【シエナ】→【たたかう】→【ゴブリンB】ピッ♪
シエナが無言で前に出る。 杖でゴブリンBを叩く。
ポコッ。
【ゴブリンBに1のダメージ】
アリア「……何で魔法使いが杖で殴ってるのよ!魔法あるでしょ!魔法は!?」
ユウト「MP勿体ない」
アリア「はいはい……さようでございますか……」
さらに1時間後
洞窟の奥から、ゾロゾロとゴブリンが湧いてくる。
ゴブリンC、D、E、F…… ゴブリンG、H、I、J…… まだまだ増える。
→【アリア】→【たたかう】→【ゴブリンZ】 ピッ♪
スカッ。
アリア「Z!?もうアルファベット終わりじゃない!」
さらに奥から。 ゴブリンAA、ゴブリンAB、ゴブリンAC……
アリア「二周目!?」
ゴブリンBA、ゴブリンBB、ゴブリンBC……
アリア「もぉぉぉぉ!!おかわり多すぎでしょ!」
エミリア「すごい!いっぱいいる!」
ユウト「んー、さすがに飽きた」
中二病詠唱の悲劇
→【シエナ】 →【魔法】 →【メテオストーム】→【全体】ピッ♪
シエナの目つきが変わる。 声に謎のエコーがかかり始める。
【第一節:呼びかけ】
シエナ「「星辰よ……星辰よ……星辰よ……」」
右手で顔を覆い、指の間から赤い瞳。
シエナ「「永劫の彼方に封印されし、我が第七の契約よ――」」
髪が逆立つ。謎の紫のオーラ。
【第二節:顕現】
両手を広げ、回転。
シエナ「「天空の理は崩壊し、大地の掟は反転する!」」
片膝をつき、地面に手をつく。
シエナ「「星辰の涙は業火となり――星辰の怒りは隕石となる!」」
【第三節:真名解放】
杖を頭上で回転させる。
シエナ「「我が名は『星辰を統べし終焉の巫女』――」」
決めポーズ。右手で左目を隠し、左手で杖を斜め上に。
シエナ「「『「『スターダスト・アルマゲドン・レクイエム』』」!!」」
最後だけ三重エコー。
ドッカァァァァン!!
洞窟の天井(岩、高さ3m)はそのまま。
なぜか宇宙空間が見える。
隕石が天井をすり抜けて降る。
炎は紫色でキラキラ。 BGMまで流れている。
アリア「……」(口あんぐり)
エミリア「お姉ちゃん、光ってる!羽生えてる!」
確かに、なぜか背中に半透明の光の翼。
ゴブリン軍団「「「ぐあああ!!」」」
全て終わる。煙が晴れる。
ユウト「いやぁ、やっぱり魔法はこうじゃないと♪」
シエナ「……!」
ユウト「メテオ!とか、ファイアボール!とかで発動したら共感性羞恥の極致でしょ」
アリア(そーかなー)
チラッとシエナを見る。
シエナ、耳まで真っ赤。 両手で顔を覆ってプルプル震えている。
【経験値+3000(ボーナス込み+3300)】
【大量のゴールドを入手】
【竜の鱗×1を入手】
ユウト「あ、らっきーレアドロ」
灯台の悲劇:マント事件
灯台の最上階。 ランプの修理完了。宝箱発見。
ユウト「あった、あった。風のマント」
【風のマント:高所から安全に降りられる】
ユウトがマントを装着。
アリア「……まさか飛び降りるんじゃないでしょうね」
ユウト「効率いいし。じゃーんぷ」
窓から飛び出すユウト。
アリア「私たちの分はーーー!?」
シエナ「え?」
エミリア「わぁ!」
【パーティは一緒に移動します】
三人の体が青く光る。 次の瞬間、空中にワープ。
アリア「ぎゃああああ!!」
シエナ「!?」(声も出ない)
エミリア「お空だー!」(大喜び)
ユウトだけマントでふわり。 他の三人は――
【パーティメンバーはリーダーと同じ効果を受けます】
謎の力でふわりと浮遊。 マントもないのに、ゆっくりと降下。
アリア「な、何これ!?」
シエナ「……物理法則が……」
全員着地。
ユウト「ほら、効率的」
アリア「マント一枚で全員って!」
シエナ「……」(もう考えるのをやめた)
エミリア「もう一回!もう一回やって!」
ギルドに帰還:カンストの狂気
受付嬢「薬草×99,999ですね……はい、確かに」
【報酬:999,999ゴールド】
【ユウトの所持金:999,999,999ゴールド】
シエナ「そんなに貯めて、国でも買うんですか?」
アリア「この小さな街、薬草で埋める気じゃない……」
ユウト「とりあえず、カンストしとかないと気持ち悪いでしょ」
エミリア「お兄ちゃん、すごーい!」
受付嬢「あの……令嬢をご両親の元へ……」
ユウト「え、まだ他のクエスト残ってるし」
「え?」
ユウト「明日も使うから、これバフ要員」
エミリア「やったー!明日も冒険だ!」
酒場:その日の夜
アリア、シエナ、エミリアが座っている。 ユウトは受付でクエストボードを確認中。
エミリア「今日楽しかった!お姉ちゃんたち大好き!」
アリア「……そう、よかったわね」(複雑)
冒険者A「『星辰を統べし終焉の巫女』だってよ」
冒険者B「決めポーズまでしてたらしい」
冒険者C「指の隙間から片目とか……」
冒険者D「洞窟で隕石降らせたって」
シエナ「……」(テーブルに突っ伏す)
アリア(この世界、本当に地獄ね……)
エミリア「明日も星降らせて!」
シエナ「……」(もう魂が抜けている)
ユウト「明日は討伐系多めで回ろう」
アリア&シエナ「「……はい」」(死んだ目)
【第6話 終わり】




