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昔からみんなとは違う考え方を持つ空音は ママに連れられて遠い遠い空の彼方にある 『ソライロ水族館』という所に来てしまった 。そこでは大きな事件が発生して_________!!??

第一章 “水たまり”


「ねぇ。空音。

ちょっと起きて。」

ママの落ち着いた声が空音の耳に届いた

空音は眠たそうに小さな手で目を擦った

時計を見るとまだ朝の3時だった

「ママ。まだ早いよ。

空音が起きるの、7時だよ。」

空音は大きなあくびをしながらママに聞いた

「うん。でもねママ。

空音にどうしても見てほしいものがあるの」

ママはこっちへ来て、と言わんばかりに手をちょいちょいと振った

空音は用意しておいた着替えを着ると

急いでママの元に行った

ママは綺麗な白のネグリジェを着て

自分の青色の髪を止めていた髪ゴムをほどくと

サンダルを履いて外へ出た

空音は自分の靴を履いてママの跡を追った

明けかけた夜明けの日差しが少しずつ明るくなっていく

ザワザワと海風が家の近くにある林道を揺らす

空音は今までなんとも気にしていなかったこの自然を

今はただ、それぞれが自分のとっておきの宝物のように思えた

空音はみんなとは少し違っている子だった

みんなが美しいと言うものを空音はなんとも普通に思えて

みんなが興味なさそうに目を逸らすものはとても美しい宝物のように思えた

おかしい。自分はおかしい。

ずっとずっと空音はそう言われ続けていた


一人で幼稚園のクラスの端っこで絵本を読んでいることの

何がおかしいのか。


一人夢中になって自然の観察をしていることの何がおかしいのか


そんなことが空音の頭を抱えさせる

ずっとそんな風に言われ続けていた空音の唯一の理解者はママ一人だけだった

「空音はおかしくないよ。」

どんなにいじめられようが、殴られようが

ママのその一言と笑顔で空音は何もなかったことにできたのだった

「空音はね、他の子とは少し違うような考え方を

しているの。でもそれは決しておかしくなんか無い

ママも空音と同じような時期があったわ。今、空音が悩んでいることは

小さい頃のママが悩んでいた事と一緒なのよ。」

「今はそんなことを思うかもしれないけど

他の子達にはなくて、自分にしか無いもの。

それって自分以外の誰も持っていない自分だけの

“タカラモノ”なんじゃ無いかなってママは思うんだ。」

その言葉は少し難しくて小さな空音にはあんまり理解のできないことだったが

暗く湿った空音の心を明るく照らす太陽のような存在に思えた。

「着いたよ」

ママはまたさっきと同じような穏やかな声でいった

前を向くとそこには

「水たまり……?」

空音は思わず口に出してしまった

「この水たまりの色を覚えていてね」

ママはそう呟き、

一つのペンダントを取り出したかと思うと

水たまりの上に落とした

ペンダントはそのままコトンっと地面に落とす

音も立てずに

そのまま水溜りに吸い込まれてしまった

ママはギュッと空音の手首を掴むと

水溜りの上にジャンプをした

「ええええええぇぇぇぇ!!!???」

あまりの驚きに叫び声しか出せない私がいた。

叫びながら私とママは水たまりに吸い込まれていってしまった


第二章 “ソライロ水族館”


変な夢を見た

ママに起こされて夜明けに外に連れ出されて

そして水たまりの中に入った夢だ

あれは夢だ。そうだそうに違いない。

昨日変な本を読んで頭がおかしくなったかな

水溜りに吸い込まれるだなんて友達に話しただけで

「厨二病」と言われてしまう。

すると、近くから何やらお経みたいな声が聞こえてきた

気になって少しだけ目を開けると、天井はいつもの空音の部屋の木製の天井

………じゃなくて、大きな青空が見えた

びっくりして目を開けるとそこには

骸骨の仮面をつけたお婆さんがいた

「ギャアアアァァァァァ!!!!!!」

びっくりしておき上がると

骸骨の仮面に頭が思いっきりぶつかった

両者二人とも頭を抱えてその場にへたり込んだ

「コラ!!空音!!失礼でしょ。

謝りなさい!!」

そばからママの声が聞こえた

見ると青色の見知らぬ着物を着込んだ

ママがいた。

「ママァァ。」

半べそかいてママのお膝の上にダイブした

「あのね!!ママ!!お骨の仮面を被ったお婆さんがいきなり……」

「はいはい。わかっています。一部始終この目で見ていましたから。」

「何を?」

空音はスットンキョウな声を出して聞いた

「あなたが館長様に体当たりをするところを。」

ぎくっと空音は気まずそうな顔をした

そしてお婆さんに「ごめんなさい」をした

「いえいえ。別にいいんですよ

幼い子供に怖がれるのは全然ありますから。」

館長様は穏やかに笑った。

「落ち着いたなら少し着いてきてもらえませんか」

館長様はずり落ちたメガネをかけ直すと

肩にかけてあったスカーフを首にかけ直すと部屋から出ていった

空音は少しぼーっと館長様が出ていった扉を眺めていたが

すぐに部屋に横たわった

「なんだったんだろう。あれ……。」

ずっと驚いたりしてじっくり考える暇がなかった

空音はほっぺたを軽くつねった

夢ではないことだけがわかった

それでも夢だとでしか思えなかった。いや、思いたかったのかもしれない。

「ねぇ、ママ。あれって……。」

振り向くとそこにはママはいなかった

「ママ?」

空音が呼びかけてもママの返事は返ってこなかった

空音が首を傾げている後ろで

大きな生き物が窓を横切ったことを空音は知らなかった


_____館長はじっと窓の外を眺めていた

館長の視線を追って窓に目を向けると

見えるのは果てしなく広がる青い空と白い雲だけだった

「館長様。」

空音は外をぼんやり眺めている館長に声をかけた

館長様はゆっくり

空音の方を向いた。

「あら、少し落ち着いた?」

館長様は穏やかな顔で問いかけてくる

「はい。」

空音も戸惑っているままの心を隠していった

「それじゃあ改めて___」

館長様はスウっと息を吐いて

「ようこそ、空音さん。

“ソライロ水族館”へ。」

館長様はパチンと指を鳴らした

と、同時に後ろにあった細い円形の

ガラスがぐにゃりと変形し

あっという間に水槽へと変わった

水槽の中には

イルカ、かめ、エイなどが自由気ままに泳いでいた

それがなんとも言えないくらいに美しく

一つ一つがかけがえのない宝石のアクアマリンに見えた

しかし、空音が1番胸を打たれたのは

濃い藍色の大きなクジラだった

クジラは黒曜石のような瞳でじっと空音を見つめている


“君はどこから来たの”


クジラが喋ったことにびっくりしていた

「私はここの館長を務める

“ハスナ”と、申します。」

ハスナさんは丁寧にぺこりとお辞儀をした

空音も慌ててぺこりとお辞儀をした

「わ、私の名前は空音です

大空の空に、音って書いて空音と読みます。」

少し慌てながらも

空音は自己紹介をした

「よろしくね、空音さん。

それじゃ当館のご案内を……」

ハスナさんの声を遮るように

とてつもない地響きがとどろいた

「い、一体何が……。」

空音は驚いて尻もちをついてしまった

「ま、まずいです。」

ハスナさんは真っ青な顔にして

つぶやいた

急いで広いテラスに走ると

ハスナさんはそこで立ち止まっていた

「ハスナさん?」

空音は恐る恐る聞いた

「ど、どうかしま……。」

「空音さん。」

ハスナさんは空音の声を遮っていった

「ホールの真ん中にある円形の水槽の脇に階段があります。

その階段を登ってこのペンダントを投げ入れてください。

そうすればあなたは元の世界に戻れます。」

「へ?ちょ、ちょっと待ってください

一体何が……。」

「「「「急いで!!!!!!」」」」

ハスナさんが叫んだ

「1000年に一度の大震災が起きます!!!!

ここはもう危険です!!早く逃げてください!!!!」

「っっ!!!!」

空音はダッと走り出した

目の中から涙がポツポツ流れ出てくる

だが、涙をぬぐっている時間はない

「ついた!!!!」

ホールの真ん中にはまだ

煌めきながら泳ぐ

生き物たちがいた

空音は急いで階段を登り

水槽の上に立つとペンダントを投げつけた

すると吸い込まれるようにして

ペンダントがなくなった

空音は勢いよく水槽の中に飛び込んだ

一瞬、水の中が宇宙空間のように見えた

と、思ったら

空音はあっという間に吸い込まれていってしまった


もう何も苦しくない もう何も怖くない

ずっとずっと空音の心を締め付けていた鎖が一気に解けたような感じがした

開いていた瞼を閉じかけたその時だった

“空音。”

突然どこからか優しい声がした

気づいたら前にあの大きなクジラがいた

“またね。”

クジラは最後に小さくボォォと、鳴いてから水面に上がっていった

_____待って。

空音は最後にそう言いたかった

だが、いうより先に

意識を失ってしまった。

空音は深く深く

水の彼方へ吸い込まれてしまった



第三章 “子クジラ”


「空音!!!!起きなさい遅刻するわよ!!!!」

下から怒声が聞こえた

空音は怒声が自分の耳に入らないように

布団にくるまった

が、すぐに綾子おばさんにひっぺ剥がされてしまった

「いつまでそうしてんの‼︎‼︎

ほら、早く起きなさい!!!!」

「う〜わかったよぉ」

空音は渋々布団から出た。

「朝ごはんはもう用意してあるから。こら‼︎先に着替えなさい‼︎‼︎」

後ろからおばさんの怒鳴り声がする

空音は急いで着替え、

学校に行く用意をした

机の上に置かれてあった目玉焼きパンと牛乳を

一口で平らげて、髪をまとめて靴を履いた

「いってきます!!!!」

空音はランドセルを担ぎ、家を出た

公園の時計を見るとまだ7時45分だったので

学校に行く時はゆっくりと歩けた


____空音は最近、奇妙な夢を見ている

4歳の誕生日、母に連れられて

不思議な水族館に行った夢だ

その水族館はソライロで館長らしき人も

夢に出てきたが1番心に残っているのが

_____薄い藍色のクジラだった

薄い藍色で染まった全身の体は日の光に照らされて

輝いていた

が、クジラの黒曜石のような目は自分に訴えかけているような感じがした

よく見てみればその薄い藍色もどこかから儚さを感じた

夢はいつもそこで終わる


 空音の母はとある大震災で行方不明になってしまった

が、土砂崩れの起きた山で

身元不明の無惨になった女性の遺体が見つかり

その遺体は母のものだと証明された

母の葬式の時、葬式に参加した全員が泣いた

死んだ母の一人娘である私を除いて。

私は何にも感じなかった。心の感じ方が少し違う私を

唯一の理解者だったのに

葬式の後、母の姉だった綾子おばさんは

「うちの子になんなさい。」って私を引き取ってくれた

厳しいけれど私の母親変わりの存在だった


 空音はふと、空を見上げた

もう帰ってくるはずのない母の顔を思い出した

薄っすら透明になっている月が見えた

____あの子に会いたい

夢の中で出会ったあのクジラ。

宝石のような美しい輝きを放つ藍色はどこか儚い目をしていた


__「キュー」____。

どこからか可愛らしい声がした

声の方を見るとそこには小さなクジラの赤ちゃんがいた

釣り糸に絡まって砂浜で動けなくなっていた

空音はすぐに砂浜に降りた

「大丈夫?」

みれば明らかに大丈夫ではないことはわかっていたが

思わず聞いてしまった

その途端に空音は背筋が凍りつくような

感覚を覚えた

その子の目には夢の中で見た

あのクジラと同じどこか儚い黒曜石のような瞳だった

空音はすぐさま

その子に絡まっていた

水筒の水でハンカチを濡らして釣り糸が絡まって

跡がついていたところを冷やした

すると小クジラはすぐに元気になり

すぐに海の中に潜ってしまった。

かと思ったら海の中の小魚をとってきた

小クジラなりのお礼なのか

それをとったら今度は本当に行ってしまった

空音は小クジラが置いてった

小魚をしっかりと握って

近くにある母の墓地に置いてった

『思い出の食べ物』という手紙を添えて。



第四章 『もう一度』


 「空音おっそーい!!!!」

「遅刻なんて空音にしては珍しいいね」

口々にいうのは私の友達の

輝羅美ちゃんと綾瀬ちゃんだ

綾瀬ちゃんは、スポーツが大好きですごく

陽気で元気な女の子。

輝羅美ちゃんはおとなしくてクールな

お金持ちのお嬢様

この二人は小さい頃からの友達で

いつも一緒に遊んでいる

「いや〜ちょっとね。

来る途中で忘れ物しちゃって……」

「えーー!!!私なんか毎日忘れ物してんのに!!!!

取りに帰るなんて空音は偉いなぁ〜。」

「綾瀬、それ自慢になってない。」

あははは、とにぎやかに笑う中

あ、と綺羅実ちゃんが何かを思い出したように

つぶやいた

「ねぇねぇ知ってる?

蘭菜ちゃんがね自分の彼氏の風斗くんにキスしたらしいよ!!!!」

「まじ!?やっぱり愛情表現の1番はキスよね!!!!!!」

恋話大好き綺羅美ちゃんの話に

綾瀬ちゃんが乗っかって大袈裟に驚いた

あはは、と空音は苦笑いをする

正直自分は恋愛などはしたことがない

興味もないし自分から進んでしようなんて全く思わない

ため息をつきながらも二人の話に付き合っていると

いつの間にか学校を大きな影が包み込んだ

窓の外を見上げると

空音が朝助けた小クジラだった

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

クラス中が驚きと恐怖の大絶叫で賑わった

小クジラは窓ガラスを割ると

すぐに器用に嘴で空音を摘んだ

「空音!!!!!」

綾瀬ちゃんと輝羅美ちゃんが

助けようと手を伸ばすが

小クジラが大空に飛び立つの方が早かった

小クジラはすごい速さで飛び立って見えなくなってしまった

「どうした!!!!!?????」

先生が慌てて教室に来たが遅かった

先生の目に映っていたのは

割れた窓ガラスと

消えた生徒一名の散らばった机だった


 第五章 “翠凛と紫蓮”


 空音は夢を見ていた

大きな大きな好物のわたあめを食べる夢だ。

ふわふわのわたあめが口の中でほんわかと溶けてゆく

いくら食べても減らないため

食べる以外にそのふわふわなわたあめに寝っ転がったり、

頬を擦り付けていたりと

幸せを満喫していた。が、

突然、空音を呼ぶ声に目が覚めてしまった

せっかくの素晴らしい夢を見ていたのになんなのだ、と

不機嫌な気持ちで

目を開くと____。

「起きた?」

突然、謎の白髪男子が顔を覗き込んだ

「?」

突然のことに目をカッピらいてしまった

「??」

心のハテナマークが一つから二つへと変わっていく

驚きと困惑で頭が強制的に停止してしまった空音。

「だいじょーぶ?」

子供らしい幼い子供のような声で

空音は無事現世に戻ってきた

子供はじっと空音のことを見つめている

その子の瞳にはあの小クジラの黒曜石の様なの瞳と同じ色だった

白髪の色も小クジラの体の色と全く一緒だった

『よく見たらこの子……。お人形さんみたいに美人。』

空音は心の中でそう思った。

自分の頬がどんどん熱くなる

ポーッと眺めていると

「?おーい。生きてるー?」

子供が手をわたしの目の前で手首をぶんぶんふった

ハッと空音は意識を取り戻すと

『って、騙されちゃダメだ!!!!

何よりこの人誰!?ここはどこ!?めちゃくちゃ怪しい!!!!」』

空音は猫のような警戒ポーズをとった

相手をしっかりと睨みつけ、

『シャーーーーー!!!!!』

と、唸り声を上げた。

「猫?」

少年は呆れていった

「あなた誰!?ここはどこ!?一体何が起こって……。」

「しーーー!!!静かにして!!!!!ちゃんと説明するから!!!!!」

少年は慌てて指を唇に添えて吸うっと息を吸うと

一気に説明した

「僕の名前は“紫蓮”

君が砂浜で助けたクジラだよ。」

その時点で言っている意味がわからなかった。

ただの短い自己紹介のはずなのに

全然内容について行けていない

「どういうことですか?」

驚きとかびっくりとかそんなものを軽〜くすっ飛ばしているような感覚だ

それでも少年は関係のないように話を続けた

「僕は海を司る大海の主神なんだ。

この水族館の案内人でもある。君には此方の諸事情で

どうしても来ないといけないんだ。きっと君にも分かると思う。」

落ち着いた笑顔で話してくれる紫蓮にはもうしわけないが

全く理解ができない。

は? 諸事情? 

「ちょっとすいません。

全く分からないのですが。」

「へ?君ここに来た事あるでしょ?」

「いいえ。全く心当たりもないし、記憶にございません。」

キッパリと言い放った空音は少しの気まずさを覚えた

彼は、覚えていると思って話してくれたのだろうが、

わたしにはそんな事1mたりとも憶えていないのだ。それは仕方がない事だった。

少し気まずそうにモジモジしていると

「うーん、じゃあ最近ずっと同じ夢を見るって事はない?」

突然、紫蓮が聞いてきた。

「何かこの建物みたいなのを見たとかさ、なんか無い?」

紫蓮があたふたした様子で聞いてきた

何か……見覚えのある物?

夢に出てきたのは、空色の建物と

優しそうなお婆さんとスイスイと泳ぐ魚たち。

後は……。

「…鯨……?」

空音はボソッと呟いた

「鯨?」

紫蓮が不思議そうなこえをだした

空音は慌てて口を押さえた

「いえ。なんでもありません。」

そう言ったが「話して」と強い目つきでじーっと見られて結局話すしかなくなった

「夢の中に出てきた大きな鯨です。

濃い藍色してて、貴方と同じ黒曜石の様な瞳をしていました。」

それを言った途端、少年は動揺した様な青ざめた様な顔で空音を見つめた

「そ、その鯨は他に何かした?」

紫蓮は動揺した様な顔で言った

「他は……。」

空音は考え込む。

「夢の終わり、鯨は最後に小さな鳴き声を出しました。

不思議な鯨でわたしの心に喋りかけられたりもしました。」

「やっぱり……。」

紫蓮はグッと顰めっ面をした

「あ、あの……どうかしましたか?」

「君は呪われたんだよ。」

頭の中に疑問符が浮かんだ

呪い?呪いなんてものがこの世にあるわけがない

「ええ、今なんと?」

気のせいだと思ってもう一度

紫蓮に聞いてみた

「呪いだよ、呪い。

君は翠凛というクジラに呪われてたんだ。」

それを聞いた瞬間、空音の心の中は

真っ暗な闇に放り込まれたような感覚になった

「しかもこの呪いは厄介な呪いでね

1日経つごとに、5年もの寿命が減らされる呪いだ。」

空音はもう絶望の淵の心の中で泣いていたので

紫蓮の声は耳に入っていなかった

「でも大丈夫。

この呪いを解く方法があるんだ。」

それを聞いた途端、空音はばっと顔をあげた

その青磁色の瞳には希望の光が輝いていた

「呪いをかけた張本人、翠凛は

この水族館の何処かに封印されていて

私の呪いを解くためには翠凛を封印から目覚めさせないといけないんだけど

僕は翠凛が何処に封印されたのかはわかっていない

でもこの水族館にしまってある

四つの本に翠凛の居場所のヒントと

封印の解き方についてかいてある

でね、その翠凛というクジラは

僕の…………母親なんだ。でも僕はそんな母親嫌いだから大丈夫だよ。」

紫蓮の左耳についているピアスがシャランと揺れる

紫蓮が次に言いたいことなど、空音にはわかっていたことだった

「君にこの水族館の館長を務めてほしい。」

紫蓮はやる気に満ちた眼差しで

空音を見つめた

最初は子供っぽくって頼りない存在だったけど

今はとても頼もしい友人に見えてきた

空音は自分の寿命のためならと、

館長職を引き受けた。


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