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初期機体は初心者にあらず!  作者: バショウ科バショウ属
セントラル
34/75

枯樹生華?

「なぜ、ここに……」

「Vさんを探していたから」


 なぜ、俺を──心当たりしかないぜ。


 笑顔を浮かべるアルビナ先生はヘイズと同等か、それ以上の威圧感を纏っていた。

 ふと、笑顔は威嚇云々の話を思い出す。


「いや、張っていたが正解かな」

「張っていた?」


 教えを説く時と同じ調子で、先生は人差し指を立てて語り出す。


「Vさんは、このアドマイヤでJ・Bさんと知り合ったらしいね」

「はい」

「J・BさんはXW155HR、レールガンの愛好家として知られている」

「愛好家…?」


 師匠は愛好家の域じゃないと思うんだ。

 サイボーグとはいえ、レールガンを右手に移植する人なんだぜ?


「彼に感化されたなら…というか間違いなく感化されたVさんは、XWシリーズを求めて()()()()()()

「他のショップに現れる可能性も──」

「セントラルで候補となるショップは21店……でも、Vさんは知らないと思った」


 はい、知らなかったです。

 一歩詰める先生、一歩下がる俺。


「正解だったみたいね」


 きらりと赤目を光らせる先生、探偵みたいだぜ。

 さすが先生だ。

 お見通しってわけか。


「さて……色々と話したいことはあるけど、まずは──」


 先生は、初心者を騙る俺に配信をめちゃくちゃにされたのだ。


 配信者じゃなくても分かる──先生の怒りが。


 だから、腰に回した右手が得物を抜こうとも、俺は逃げない。

 甘んじて受け入れる。

 一思いにやってくれ!


「ここから脱出しないとね」

「ゑ?」


 そう言って先生は、小さな穴の開いた筒を取り出す。

 ガンアクションで見るフラッシュバンに似ている。

 いや、それよりも脱出って?


「脱出ですか?」

「私に推理できることは、他の人も当然してるってことだよ」


 先生はフードの下で視線を左右へ走らせる。

 その視線を追えば、顔を背けてショーケースへ隠れる不審者が数名。

 また、こういうパターン?

 今度はスパイアクションみたいな展開だけど。


「ゾエ」

「はい、なんでしょう?」


 諸元表の隅から隅まで見ていたゾエに、自然を装って声をかける。


「鑑賞会は、また今度だ」

「なぜですか?」

「ちょっと面倒なお客様が来たみたいだ」


 ショーケースの影から様子を窺うサイボーグを睨む。

 ゾエも不審者を発見し、スカイブルーの目を細める。


「むぅ……あ!」


 不満げなゾエは俺の背後を見た瞬間、ぱっと表情を輝かせる。

 背後にはアルビナ先生しかいない。

 そういえば、動画で見たことがあるって──


「芙花・アルビナです!」


 ゾエの声が響いた瞬間、店内の空気が変わる。

 苦笑を浮かべるアルビナ先生は、フラッシュバンの安全ピン2本を抜いた。


「2人とも目と耳を塞いで!」


 それを躊躇なく投擲。

 ゾエが耳を塞いだのを見届け、俺も倣う。


 誰かの怒鳴り声、悲鳴、そして──炸裂音が空気を震わす。


 耳鳴りを無視し、目を開ける。

 微かに煙った店内を見回し、入口近くで手招きする先生に頷く。


「ショップ巡りは大変ですね!」


 ゾエの手を握って、入口から飛び出す。

 炸裂音を聞きつけた人集りを抜け、先生を追う。


「待ちやがれ!」

「目標捕捉」

「出会えっ出会え!」


 背後から追ってくる気配は複数。

 金属同士の触れ合う音から物騒な得物を持っているらしい。

 当局の皆さん、こいつらです!


「ゆっくり見て回りたいな!」

「まず、その容姿を何とかしよっか!」


 鼠色のオーバーコートを靡かせて駆ける先生が笑う。

 人と人の間を縫い、眼前に徐行運転中の装甲車が現れる。

 先生は避けることなく車体に手をつき、地を蹴った。


 宙を舞う鼠色の影──飛距離の長いロンダート。


「おお、すげぇ…!」


 装甲車の後ろへ軽やかに降り立ち、見物人から歓声が上がる。

 逃走中でも魅せる人だ。


「ゾエも行きます!」

「マジか…!?」


 そいつは予想外!

 止める間もなく、手を離したゾエは装甲車へ突撃。

 先生と全く同じ動作を見せ、先生より高く飛ぶ。

 なんてこったい。


「どうですか、V!」


 装甲車の脇を抜け、着地点で万歳を披露するゾエ。

 路面の凹みは見なかったことにした。


「ああ、凄かったぞ」


 逃走中じゃなければ、カメラを構えてるところだ。


「何事も挑戦ですね!」


 その姿勢、すごく良いと思う。

 大事にするんだぞ。


「よし、先生を追おう」

「はい!」


 拍手する見物人の皆さんを潜り抜ける。

 気分はハリウッドスターだぜ。


「あ、セントラル・ガードです」


 ゾエの視線を追った先には、すっかり見慣れた当局の皆さん。

 パトロールカーと白いエクソスケルトン2機が雑踏を分けて進んでくる。

 本日もご苦労様だ。

 捕まる前に、曲がり角で待つ先生の下へ──


「治安出動を要請しましょう!」

「え、ちょっゾエ!」


 白いエクソスケルトンへ真正面から向かっていくゾエ。

 当局は昨日見た公安4課じゃないぞ!


 意気揚々と現れたゾエ──それを局員は困惑の表情で迎える。


 そりゃそうだ。

 先生の隣へ走り込み、ゾエと追手の不審者を交互に見る。

 さすがにまずい。


「あれ…大丈夫?」

「まずいです」


 局員が一人でもゾエの顔を知ってたら厄介だ。

 俺はヘイズと違って大立ち回りはできないが、ここは行くしかねぇな。


「連れ戻しに──」

「待って…!」


 先生に手を掴まれ、足を止める。


 局員の鋭い視線は俺たちを──見ない。


 通り過ぎて、追手の不審者ご一行を注視する。

 そりゃ往来で武器を持ってたら目立つよな。


「そこの貴様ら、止まれ!」


 路地に響き渡る鋭い声。

 臨戦態勢に入った当局を前にして、追手は()()()を踏んだ。

 見事に誘導しちまった。


「すごいね、あの子」


 先生の呟きに頷くしかない。

 突如、始まった捕物によって路地の喧騒は最高潮へ達する。

 それに乗じ、当局の目を盗んで駆け寄ってくるゾエ。


「やりました!」

「お手柄だったな、ゾエ」


 小さく胸を張り、どや顔を見せる。

 かわいい。

 今日はゾエのおかげで穏便に一日を終えられ──


「これで一安心かな……さて、行こっか」

「うっす」


 有無を言わさぬ空気!

 知ってた。


「ゾエも芙花・アルビナと話したいです!」


 助け舟は来ない。

 仕方ねぇ、ゾエにとっても有名人だもんな。

 しかし、いざ相対すると2人の容姿は、やっぱり似てる。 


 アルビナ先生は──微かに驚きの表情を浮かべていた。 


「…もちろん、いいよ」 


 すぐ小悪魔な笑みに戻ったけど、ただ容姿に驚いてたようには見えない。 

 なんだったんだろ? 

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