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短編その3『南極帰りの黒1点』

かつて、帝国海軍が艦名の命名基準を設定した時、明治天皇はおっしゃったそうである。

「沈んだりしたら故人に失礼」

その結果、日本海軍(海上自衛隊も継承)では、人名を艦名に使用して来なかった。


欧米では、むしろ故人を讃える意味とかで、人名を使用して命名する場合が多い様だが。

一方、日本では人名を使用しない事もあって、女性名としても違和感の無い艦名が多い。


*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*


艦魂。それは「ふね」を愛するものたちの語り継ぐ伝説。

彼らは、彼らの愛する「ふね」に、命と心が宿ると信じた。

ゆえに、“それ”ではなく、“彼女”と呼んだ。

ゆえに、彼らは信じる。目に見えないだけ、耳に聞こえないだけ。

1パイの「ふね」には、必ず、1人の「彼女」が居る。

若く美しい乙女の姿をした、心優しき精霊。


もしも、「ふね」を愛するものたちの想いが生み出したのなら、

もしも「名」という「言霊ことだま」を受け継ぐときには、その命と心は受け継がれるのだろうか。

だとしたら、あの「ふね」は…


*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*


欧米では、むしろ故人とかを讃える意味で、人名を使用して命名する場合が少なく無い。

その場合、その名前を呼ぶ方は、どんな言霊ことだまを込めているのだろうか。

特に、その故人が男性だった場合。

まさか、輪廻転生を否定するがゆえに「彼女」を「彼」の名で呼ぶ、と言う事なのだろうか。


「その」矛盾を回避するため?

日本海軍は、女性名でも違和感の無い艦名を選択し、故人の名を選ばなかった。

今の海上自衛隊でも、例外は南極探検艦「しらせ」位だろう。


*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*


今年も、南極から「しらせ」は帰国して来た。

そして、南極が夏へと向う北半球の秋までを過ごす母港へと戻って来た。


その「しらせ」を出迎える「戦友」たち。

この探検艦を運用する海上自衛隊の自衛艦に宿る「乙女」たちが

「しらせ」の艦上に転移して来ていた。

果たして、誰かに「それ」が見えていただろうか。

しかし「彼女」たちを愛する者たちは「彼女」たちの存在を信じる。


その乙女たちに囲まれて、黒1点とも言える“男性”が照れていた。

何故か、明治時代の陸軍中尉の姿をした“彼”。


白瀬矗

日本における南極探検の先駆けと成った陸軍中尉

南極探検艦に相応しい名前が一般から募集された時、

最も多数が相応しいとしたのは、白瀬中尉の名だった。

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