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綾乃×梓:孤独の二人

作者: 藤谷 葵

練習作品です

・三人称

・地の文の描写を自分なりに精密に書いてみました

・作品の内容よりも、書き方でコメント頂けると嬉しいです


【設定】

・二条綾乃……何でも出来るお嬢様系女子

・芹澤梓……文芸部所属地味系女子

 暑苦しいほどの夏も終わり、やっと過ごしやすい秋がやってきた。

 授業の三時限目と四時限目の間にある休み時間、窓から涼し気な秋風が、カーテンをふわりとなびかす。

 二条綾乃(にじょうあやの)が窓の外を眺めると、次の授業の体育の為に、校庭で騒いでいる生徒が目に入る。そして、綾乃の視線は喧騒とした教室に向けられる。なんと生産性のない話題をしていることか。教室内を眺めていると、綾乃の視線は、ふと一人の女子生徒に目がいった。椅子に座り、机の上に本を開いて読んでいるようだ。その子は芹澤梓だった。

 芹澤梓(せりざわあずさ)が本を読んでいる。サイズからして文庫本のようだ。教室内の騒がしさとは違い、そこは別世界のように見えた。綾乃は多趣味で、読書も趣味の一環として、本を読んでいる。つい気になって、梓の正面に立って見下ろす。そして、興味津々に口を開く。


「芹澤さん、ごきげんよう。私も読書は好きなので気になったのですが、何を読んでいるのですか?」


 笑顔で明るい声をかけた。

 芹澤梓は、いつも独りでいる。見た感じ、綾乃のように好き好んで独りでいるのとは違い、いつも人に馴染めないような感じがある。そんな芹澤梓は、一瞬の戸惑いを見せ、おどおどとした感じで、綾乃の方を上目遣いで見上げ、質問に答える。


「あ、こ、これはライトノベルです。戦闘シーンの描写が上手で勉強になるので、読んでいます」


 綾乃は、芹澤梓のおどおどした態度に、何となく嫌悪をする。綾乃は自分の言動に誇りを持っているが、芹澤梓は自分の存在に自信がないように見える。おでこに手をやり、イラつきを抑えつつ考える。

 勉強……確か、芹澤さんは文芸部に入っていましたわね。

 自分が脅しているように見えてしまっているかもしれないので、綾乃は明るく話題を振ってみる。


「芹澤さんて、確か文芸部でしたよね?」


 芹澤梓は、前髪で隠れてあまり見えていないような目が、これでもかと見開く。


「え? 僕のことなんか知っていたのですか?」


 『僕のことなんか』、その言葉に綾乃は、更なる苛立ちを感じてしまう。なぜ、芹澤梓は、こんなにも自分に自信がないのであろうかと。自分に自信を持っている綾乃とは、対極的である。ついつい上から目線で、きつい言葉が出てしまった。


「芹澤さん、なぜ貴女はそんなに自分に自信がないのですか? 好きな文芸部の勉強の為に読書をしている。それは立派なことではないですか?」


 そう言って、芹澤梓の反応を見るためにチラッと目を向ける。すると、顔は青ざめ、本を持つ手は震えている。目は潤んで、今にも涙を零しそうだ。これではまるで、綾乃がいじめをしているかのように思われてしまう。自分にそんな気持ちは微塵もないということを、慌てて身振り手振りしながら、言い訳をする。


「せ、芹澤さんのことを悪く言っているわけではありませんのよ? ただ、芹澤さんが努力をしているのに、なぜそんな自分を誇りに思えないのかと思いまして」


 綾乃は自分でも思うが、口下手である。人を称賛しているのに、いつも上から目線に見られてしまう。


「僕は二条さんみたいに、何でもできる才能に恵まれた人間ではないんです! 二条さんに僕の気持ちはわかりませんよ!」


 普段大人しい芹澤梓が、机に手をバンと叩きつけて、椅子から立ち上がった。その表情は最早泣き崩れていた。そして、そのまま教室を飛び出していった。

 芹澤梓の言葉が、心を突き刺す。綾乃自身は自分が何でも出来ていたから、他人の気持ちが分からない。ふと我に返ると、休み時間で喧騒としていた教室は静まり返り、クラスメイトの視線は綾乃に向けられていた。

 綾乃は周囲からの視線の居たたまれなさと、芹澤梓に誤解を解きたいという気持ちで教室のドアを荒々しく開けて、廊下へと飛び出した。

 長い髪を風になびかせつつ、廊下を走りながら考える。なんと言葉をかければよいのか。


***


 綾乃が廊下を走っていると、次の授業で移動している生徒たちが、障害物のようにはばかる。


「ちょっと、ごめんなさいね」


 ぶつかりそうになる身体をひねらせて避けつつ、芹澤梓を探し回る。校舎内にはいないようだ。


「ハァ、ハァ、どこに行ったのかしら」


 肩で息をしつつ、芹澤梓が一人になりたいときに、行きそうな場所を考える。考えつくのは屋上扉前の踊り場と、屋外の非常階段である。綾乃も普段一人になりたいときがあるので、想像は容易だ。

 屋上扉前の踊り場は、素行の悪い生徒がたむろしている時がある。それは、クラスの中でも、たまに話題になっている。それは芹澤梓も知っているはずだ。それならば、屋外の非常階段に向かうべきだろう。踵を返して、屋外非常階段に向かう。

 非常階段に辿り着くと、また芹澤梓が逃げないようにと、音をなるべく消して上がっていく。ペンキも剥げて錆び付いている非常階段の、所々が茶色くなっている。仄かに鉄臭さを匂わせる。

 錆び付いている手すりに手をかける。錆びのざらざらとした感触が、手から伝わってくる。その不快な感触を我慢しつつ、手の方になるべく体重をかけて、足をそっと階段の上へと進めて行く。休み時間が終わってしまうので、音をたてずになるべく早く。

 すると、手すりの隙間から、誰かの姿が見えた。バレないようにそっと確認する。そこには芹澤梓が座っていた。

 綾乃は、急に階段を駆け上がり、芹澤梓の腕を、力強く掴んだ。


「見つけましたわ。芹澤さん、嫌な思いをさせたのならごめんなさい。でも、わたくしは、芹澤さんの前向きに勉強している姿を、尊敬していますのよ?」


 次の授業までに、時間がないので、早口でまくし立てる。芹澤梓は驚きつつも、逃げるような素振りは見せない。


「そ、尊敬?」

「そうですわ。貴女は休み時間も必死に努力をしているじゃないですか!」


 また、芹澤梓が泣き出す。綾乃はこれ以上どうしていいのか分からずに、オロオロとする。少しすると、芹澤梓は、制服の袖でグイっと涙を拭い、目の淵に涙を浮かべた潤んだ瞳で微笑んだ。


「そう言って頂けて嬉しいです。しかもわざわざ探しに来てくれるなんて」


 綾乃は自分の気持ちが通じて、ほっとした。

 すると、次の授業開始のチャイムが鳴り始めたのが聞こえてきた。


「芹澤さん、急いで戻りましょう」


 綾乃は芹澤梓の手を握りしめた。柔らかで温かな感触が伝わってくる。

 二人でチャイムの音しか聞こえない、静寂している廊下を、バタバタと走る。

 そして、チャイムが鳴り終わり、一分ほど過ぎてしまったが、教室にはまだ先生は来ていなかった。

自分で読み返してみると、繊細さに欠けるな~って思います

でも、どこをどうすべきかは、これ以上考えつきませんでした(汗

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