黄金の桃の祝福
数多の炎の礫が頭上へと落ちてくる。それを結界で防げば、すぐにこちらの動きを封じようと、足元の土から蔓が大量に伸びてきた。落ち着いて、蔓を生み出す構成魔術に干渉し、蔓そのものを崩壊させながらレジェスは思う。
殺意が、殺意が強すぎる。魔王との戦いよりも、正直命の危険を覚える。
だが、レジェスにとってこの戦いは決して引けないものだ。この戦いに負けるということは、すなわちセラフィナと結婚できないということなのだから。
「面白くなってきたな」
魔術で造られた、咆哮を上げる恐るべき竜に向かってレジェスは笑う。
そして、周りの空気を凍結させて生み出した剣を、竜に向かって振りかぶった。
結婚式をやり直す。それはレジェスの中で決定事項だった。
妻であるセラフィナは、葬式としか思えない結婚式でも全く気にした様子はない。でも、それではレジェスの気が済まなかった。
誰よりも優しく、素敵なセラフィナが周りから祝福される機会を奪ってはいけない。家族や友人に祝われ、主役となる体験をしてほしい。
「結婚式を挙げるなら、やっぱりフィーナの故郷がいいよね」
「よろしいのですか?」
「もちろん。貴方の愛する家族や友人、領民たちもたくさん招待して、盛大な式にしたいよね」
「やっぱりウェディングケーキは欲しいですよね。私はチーズケーキがいいです」
「分かった。頑張って作るね」
「レジェスは当日は主役なんだから、ケーキを用意する時間はないんじゃないか?」
部屋の片隅で編み物をしていたフアナが、ツッコミを入れる。
「ザカリアス家の料理人は優秀ですから、任せてください。私も久しぶりに、料理長が作るケーキが食べたいです」
うっとりしたセラフィナの表情に、レジェスの心に嫉妬の炎が燃える。今度、料理長にぜひケーキのレシピを聞かなければ。レジェスは心の手帳に、重要事項として書き込んだ。
「んー? ちょっと待て、レジェス。何か大事なことを忘れていないかな」
「え、何。母さん」
フアナの真面目な表情に、レジェスも焦る。何を忘れたかと、頭をフル回転して考えるが答えを出す前にフアナが続ける。
「フィーナのお父上にきちんと結婚の挨拶と、改めて結婚の許しを得たのか? フィーナをさらってきたも同然なのだから、向こうの心象は最悪だろう」
「確かに。私は最低だ」
何故そんな一番大事なことを今の今まで忘れていたのか。セラフィナとの夫婦生活はゆうに7年を超えているから、完全に結婚を許された気でいたのだ。
あの後、何度かセラフィナと共に、セラフィナの父であるザカリアス公爵と話す機会もあったが、多少壁を感じるとはいえ普通だった。セラフィナを幸せにするよう再三釘を刺されたが、それは親として当たり前の心配であると心に刻みこそすれ、気にも止めなかった。
「父は大丈夫ですよ。私がどれだけレジーを愛しているかきちんとお話しましたから、もう反対はしていません」
セラフィナは涼しい顔で言う。なお、最終的にセラフィナが「これ以上反対するなら、お父様のことを嫌いになる」と言ったために、表向き公爵は口に出さなくなっただけだ。その内心は分からない。
「娘の結婚式なら、ザカリアス公爵だって色々と考えていることがあると思うぞ。まして、結婚式をザカリアス領で挙げようとしているのならな。フィーナを幸せにしたいなら、あちらの家族の心を掴むのは必至だ」
フアナのいつになく真面目な顔でのアドバイスに、レジェスは神妙に頷いた。
「これから公爵に予定を尋ねる手紙を書く。直接お会いして、誠心誠意お願いしてフィーナとの結婚を許してもらうよ」
「それが良い。今のままでは公爵に対してあまりにも不義理だ」
「あの、本当に父のことは気にしなくて良いですよ」
「そうはいかない。フィーナの大事なひとだ。かつてあの方の両眼を抉った私が言えた義理ではないのは、重々承知しているが、私は義父上のことも大事にしたい」
セラフィナは結婚の挨拶で実家を尋ねることに面倒な予感しか覚えなかったが、レジェスの誠意は素直に嬉しかったので、これ以上は何も言わなかった。
そして1週間後。セラフィナとレジェスは、公爵から正式に結婚の許しを得るため、セラフィナの実家であるザカリアス領に向かって旅立った。
レオカディオ王国の中でも南に位置するザカリアス公爵領。『オレンジの花咲く都』の名で知られ、どこまでも広がる紺碧の海と、白壁の家々の対比が美しいのどかな港町だ。
とはいえ、ザカリアス家は南の国境警備を任せれ、海からの敵を常に監視している一族だ。
街の住民も、万一の時には自衛が出来るように日頃から訓練されている。
郊外には緑の田園風景が広がり、街路樹には色鮮やかなオレンジの実がなり、民家の白壁にはほぼ全ての家々にピンクや赤のゼラニウムの鉢が飾られている。おとぎ話の世界のような美しい街並みと、美味しいシーフードを目当てに観光客もよく訪れる。
ちなみに、窓辺に花が飾られた美しい街並みは、敵に侵入されたさいに敵の動きを撹乱するため、わざと迷路のような造りになっており、また家々も同じ様な建築様式に統一されている。よって、初見ではたいへんに迷いやすい。『花の迷宮都市』として、観光客泣かせの一面もある。
ザカリアス公爵家の屋敷は、海上と街を一望できる丘の上にある。桃の森を抜けた先。桃の花をかたどった装飾が優美ではあるが、王国の武を司る一族らしい質実剛健な造りの城。ここがセラフィナが育った実家だ。
夫の呪いが解けてからは何度か里帰りをしたが、やはり実家に着けばホッとする。レジェスの手を借りて馬車を降りれば、懐かしい面々が出迎えてくれた。
「無事のお越しをお待ち申し上げておりました」
「出迎えありがとう。父はまだお仕事かしら?」
「旦那様は書類仕事をなされていらっしゃいますが、お嬢様がお戻りになられた際には、仕事を切り上げて会う時間を作ると仰られております。長旅の疲れもございましょう。ひとまず応接室にご案内致します」
執事の後ろで、深々と礼をしていた侍女の案内で、屋敷の中でも特に重要な客人を案内する部屋へと通される。普段のように、セラフィナ1人の帰郷であれば速攻で父の書斎か、もしくは自分の部屋へと案内されている。
いくらセラフィナの夫といえど、やはり国の第三王子に礼を失する真似は出来ないよね。普段よりさらに丁寧な扱いに、セラフィナは内心でウンウン頷く。
レジェスの顔は緊張で強ばっている。これからする話が話だからな。セラフィナは勇気づけるように、レジェスの手をそっと握った。
「ありがとう。私は確実に貴方のお父上には嫌われているだろうから、これ以上評価を下げないよう頑張るね」
「父はレジェス様と私の結婚に反対はしていませんよ。父も時間が経てば、レジーに慣れると思います。だから、安心してください」
「こうして会って話をして頂けるだけでも、私は奇跡だと思っているよ」
ワゴンを押して戻って侍女が、テキパキとお茶の用意を整えていく。セラフィナの好む、オレンジのレアチーズケーキが出されて、セラフィナの心は踊る。
一礼して退出した侍女と入れ替わるようにして、ニコニコと全開の笑顔を浮かべた公爵が部屋に入ってきた。
「フィーナ、よく来たね! 今回はゆっくりこの屋敷で過ごしてくれるんだろう? 嬉しいな。元気にしていたかい?」
「お父様、お変わりないようで良かったです。私は元気にしております」
「義父上、ご無沙汰しており申し訳ありません。それから、急な訪問にも関わらずこうしてもてなして頂きありがとうございます」
「あぁ、いえ。ここはセラフィナの実家ですから、いつでも来てくださって構いませんよ。フィーナも遠慮せずいつでも帰ってきていいんだからね。ここは君の家なんだから、連絡とかも必要ない。いつでも歓迎するよ」
「ありがとうございます。それで、今日はお父様に大事なお話があったのです」
「あぁ、そうだったね。何かあったのかい?」
公爵は娘のセラフィナには心配そうな眼差しを向けるが、レジェスには一転して地獄の業火のような恐ろしい眼差しを向ける。
内容次第では本気で殺されかねないな。レジェスは内心で冷や汗を流す。
「フィーナ、君はもう十分カラスの王子に報いたよ。だから、いつでも離婚してこの家に帰ってきていいんだからね」
「お父様、録でもないことを言わないでください」
離婚、という言葉に顔を青ざめさせるレジェスの手を強く握りながらセラフィナが言う。威圧感のある半目に、父である公爵は降参とばかりに手を上げる。
「それじゃ、一体何の話で来たんだい?」
「セラフィナを私の妻として迎え入れるにあたって、改めてセラフィナの父である公爵にご挨拶を申し上げようと思ったのです。セラフィナは必ず私が幸せにいたします。どうか私とセラフィナの結婚を許して頂けませんか?」
「あのように有無を言わさぬ契約を用いて娘をさらっておいて、今さら許可が必要なのですか?」
「お父様!」
公爵の馬鹿にしたような笑いに、レジェスは悲痛な顔で頭を下げた。
「仰るとおりです。私はあの頃呪いを解くことができる花嫁という存在だけを求めていました。そのために公爵にも許されない非道な真似をした。私を許せなどと口が割けても申せません」
一瞬、レジェスが横にいるセラフィナに目を向けた。
「ですが、今私がセラフィナを愛しているのは本当です。すぐに私を信用できない気持ちは分かります。だから、義父上の信頼を得られるように精進いたします」
「貴方は……娘への愛を私に示せますか? どんな困難にあおうとも、娘を決して諦めない、裏切らないとそう証明できますか? 出来るのなら、私は娘と貴方との結婚に祝福を贈りますよ」
「もちろんです。一体何をすればよろしいのでしょう?」
「ザカリアス家には、我が家の宝である娘の婿として相応しい相手かどうか確かめるための試しがあるのです」
やはりその話が出たか。結婚の許しを得る、という話が夫から出た時から、セラフィナはこの展開を半ば予想していた。
両親が結婚した時も、母に見初められた父が周りに認めさせるためにその試練を受けたと聞いている。
「レジェス様。危険なのでお止めください。試練など受けなくても結婚は出来ますから大丈夫ですよ」
セラフィナはレジェスの実力を疑ってはいない。自分が敵わないほどに、レジェスが強いことは分かっている。
だが、あの試練は性質が悪い。セラフィナは万に1つの可能性であっても、レジェスにケガをしてほしくないのだ。
「私はどちらでも構いませんよ。ただ、試練を突破されたのなら貴方の娘への愛は本物だとして、私からは反対する理由がなくなります。喜んで、セラフィナを頼みますと頭を下げましょう」
迷うような顔は一瞬。レジェスは決意を込めて頷いた。
「試しを受けます。私はセラフィナを皆から祝福される花嫁にしたいのです」
「レジー。そんな、私のために無理は……」
「無理じゃないよ、フィーナ。それに私は貴方に愛の証を立てられる機会があることが嬉しいんだ」
「そんなの、十分わかっていますよ」
レジェスの目を見たら、反対しても無駄なのだとセラフィナは悟った。覚悟を決めた男の顔。公爵家の騎士たちでさんざん見てきたから分かる。
「私のレジーのカッコいいところ、たくさん見せてくださいね」
「うん。フィーナのために頑張るよ」
微笑む夫が可愛くて、セラフィナとしてはキスの1つも贈りたかったのだが、わざとらしい父の咳払いに邪魔をされてしまう。
イラッとしないわけではないが、実の父の前でイチャつくのは、セラフィナからしてもやはり気まずい。ここは正気に戻してくれたことに感謝をしよう。
「それで、試しとは一体どういう類いのものなのですか?」
「当家の屋敷の裏にそびえるノーチェ山。そこが我らの守護神であらせられる黒い女神像を祀る聖なる山であるのはご存知ですよね?」
「はい、もちろんです」
レオカディオ王国でも有名なパワースポットであるノーチェ山。はるか昔、羊飼いが岩山の洞窟で発見した黒い女神像を丁重に祀ったところ、その女神像は皆の願いに応え様々な奇跡を起こしたのだと言う。今では国内外から熱心な信者が訪れる巡礼地となっている。
「ノーチェ山は観光客も多くいることから、山頂まではケーブルカーを通して楽に行くことが出来ます。ですが、実は我が家の婿となるに相応しい者かどうか見極めるための、試しに使う裏ルートがございます。レジェス様にはその裏ルートから山に入って山頂まで登っていただき、そこで我が家の守り神たる女神様から黄金の桃を授かれば成功です」
「なるほど、分かりました」
「なにぶん国境を守護する家なため、婿の実力を図れるよう道中には危険な罠が張り巡らされています。決して舐めてかかって良い試練ではありません。お止めになるなら今ですよ?」
「構いません。必ずや黄金の桃を持ち帰ってみせます」
試しが行われる日は、山中が魔術の罠だらけになるため、事前に布告されてノーチェ山には関係者以外誰も入れなくなる。
セラフィナはレジェスのために朝からお弁当を作っていた。
「レジー、ご武運をお祈り申し上げております」
セラフィナは、レジェスの頬に祈りを込めてキスをする。どうか無事に戻ってきますように。
「ありがとう。行ってきます」
レジェスもセラフィナの頬にキスを返して微笑む。その顔に、不安げな様子は一切ない。カラスの王たるもの当然か。
セラフィナは深々とお辞儀をして、手を振り登山口に向かうレジェスを見送った。
「さて、私たちも山頂に向かうか。婿殿を迎え撃つ用意をしなければ」
不安げにレジェスが向かった方向を見るセラフィナの肩を、父である公爵は軽く叩いた。
「お父様、相手は私の愛する夫。貴方の義理の息子です。どうかお手柔らかにお願い致しますね」
「生半可な覚悟の者に、私の宝物たるフィーナはあげられないよ。娘を必ず守れるという実力を示して頂かないと」
悪い笑顔を見せる父に、セラフィナはこれ見よがしにため息を吐いてみせた。
ノーチェ山、山頂。黒い女神を祀る教会の中庭には、この地一帯の強力な魔力が集まる場所がある。ザカリアス家の者は有事の際はこの場に立ち、聖なる山の魔力を借りて人間ではおよそ扱えない規模の強力な魔法を展開し、敵を迎え撃つ。
魔法円が刻まれたその場所に立つのは、現ザカリアス公爵である。先ほどから、間髪いれずに様々な魔術を行使している。
その様子を遠くから椅子に座って眺めているのは娘のセラフィナだ。
側に控える侍女がかいがいしく世話をしてくれるので、セラフィナ自身はとても快適に過ごせている。
今は料理長が新作だと言って出してくれた、コーヒー風味のバスク風チーズケーキに舌鼓を打っていた。
ふわりと口の中で蕩ける、濃厚なチーズの味。香り高いコーヒーのほろ苦い風味。口当たりも滑らかで、美味しいのにすぐ無くなるのが悲しい。セラフィナは小さく眉を下げた。
ノーチェ山一帯に張り巡らされた魔術の罠は、全てここから現公爵が魔力を行使して発動させたものだ。映像魔法により、レジェスの様子は鮮明な映像と共にリアルタイムで追うことが出来る。
セラフィナの父は、天才の名をほしいままにした魔法の天才だ。ザカリアス家の姫から婚約の打診がなければ、王国の魔術師団を率いる団長になっていただろう。公爵と普通に戦ったとして、魔術の腕に覚えがある者でさえ勝つのはかなり難しい。
そのようにただでさえ強力な公爵の魔法が、聖なる山の魔力の助けを借りてより強力な魔法となってレジェスに襲いかかる。だが、レジェスはそれら全てを涼しい顔で回避し、着実に山頂に向けて歩を進めていた。
「さすがはカラスの王か。若造め。楽しませてくれるじゃないか」
どう見ても魔王のソレで、公爵は断続的に雷をレジェスに向かって落とす。だが、術式ごと消去されて決してレジェスまでは届かない。
ケーキの最後の一口を食べたセラフィナが、優雅に立ち上がる。
「お父様、少し変わって頂けますか」
「フィーナ? いや、君の不安は分かるがこれは男同士の戦いで」
「まさか。私のレジーは強いのです。お父様に負けるはずがないでしょう? 代わって頂けますね」
ノーチェ山の魔法円の本来の主は、魔法の桃の守護を受けるザカリアス家の直系子孫だ。公爵はあくまで前公爵だった妻が亡くなってから、その娘であるセラフィナが成人して公爵位を継ぐまでの代理。
セラフィナが魔法円に近づけば、公爵の思惑とは関係なく、本来の主であるセラフィナに簡単に術の支配権は移る。
「レジーをいじめていいのは、私だけだ」
セラフィナから魔力があふれ、それは炎の礫の雨としてレジェスへと一気に降り注いだ。まだ相手が第三王子だからと多少の遠慮はしていた公爵も、これには口をあんぐり開ける。どう考えても、本気の魔法だ。
「フィ、フィーナ? ひょっとして、君は実はカラスの王を殺したかったのかい? パパが事故に見せかけて殺してあげようか」
セラフィナは呆れかえった目線を父に向ける。
「何を馬鹿なことを仰っているのですか。私はレジーを愛していますよ。レジーは強いのだから、これくらいの魔法、なんてことありませんわ」
レジェスを捕縛しようとした蔓の魔法も根本から破壊されて、セラフィナはうっとり微笑む。
「さすが私のレジー。惚れなおしました」
公爵はかつて自分が試練を受けた時を思い出した。妻のナタリエルから望まれた結婚だったが、ナタリエルは社交界のバラとうたわれる美貌の令嬢だ。当然ライバルも多くいる。余計な横やりを防ぐためにも、黄金の桃を手に入れる必要があった。
そして、ノーチェ山に登ったのだが。婚約者のカッコいいところが見たい。私が選んだ夫は誰よりも強いのだと、それは手加減なしの本気の魔法をナタリエルは嬉々としてぶつけてきた。
後にも先にも、あれ以上に命の危機を感じた経験が公爵にはない。その時のナタリエルの姿と、今のセラフィナの姿はそっくりだ。娘から愛しい妻の面影を感じ、公爵は懐かしさと恋しさにまた涙した。
公爵の目の前では、娘が魔力で作り出した竜をレジェスが氷の剣で一刀両断する光景が展開されていた。あぁ、ナタリエルにも最後、炎の竜をけしかけられたな。娘や、そこも同じなんだね。
レジェスは無事に山頂の教会にたどり着いた。黒い女神像が神々しく光輝くと、黄金の桃へと姿を変える。
『愛しい姫君の守護者へ』
澄んだ声音と共に、黄金の桃はひとりでにレジェスの手元へとおさまった。レジェスは丁寧に礼をとり、感謝の口上を述べる。
再び顔を上げると、そこには何事もなかったかのように黒い女神像が静かに鎮座していた。
「レジー、お待ちしておりました! さすがですね」
「ただいま、フィーナ。君が信じてくれたおかげだ」
セラフィナはレジェスの首に腕をまわし、情熱的なキスでもって出迎える。
黄金の桃を手に入れた婿ということは、すなわち女神様がお認めになられた花婿と同義。もはや公爵に結婚を反対できる理由は皆無だ。
可愛い、可愛い、フィーナ。本当にお嫁に行ってしまうんだね。
公爵の涙の滝の水量が、また増した。
次回は満を持して、セラフィナさんとレジェスさんが結婚式を挙げるお話です。




