僕を守る悪魔7
2行で書いたあらすじの半分くらいまで書けました
さっさとトラックをぶつけるべきだったかもしれません
ベッドの中でスマホをいじりながら、色々な事を考えていた。
入学してから三か月足らずで転校していく人なんてそうそういないだろう。絶対にそうしたくないという強い思いがあるわけじゃないけど、かなり複雑な気持ちがあるのも事実だ。
まるでそうなることが分かっていたかのように転校先が決まってしまったことにも大きな不信感を持っている。絶対に何か僕の知らない事情があるという確信めいたものがあった。
それでもなお受け入れたのは状況が手に負えないというシンプルで絶望的な理由があるからだ。
グラサンハゲやチンピラホスト、そしてご機嫌な山田のことが思い出される。
あの時見た悪魔は僕のところのやつとそっくりだった。おそらく山田が呼び出したであろうそれはアストラルと呼ばれていた。
悪魔には同属の仲間がいる。
会いたいと思うのだろうか?
朝以外の時間はいつも気まぐれに出てくるアイツの姿は今は見えない。
出来ることであれば何かしてやりたいと思う。命を助けてくれたんだし、毎朝起こしてくれるし、見えない時も傍らで見守っていてくれている気がする。
でもそれにしたって今の僕には何かが出来るわけではないのだ、残念なことにあの不審人物たちに不用意に接触すればせっかく助けられた命を無駄にしかねない。
ではどうすればいいか、それを考え出すだけの力が僕にはまだなかった。
そしてそれとは別方向から降りかかる問題もある。
責任、賠償というこれもまた人によって見えたり見えなかったりするからアストラルと似ている。
さて僕はそれとどう向き合う?
何を行う?
それを考えるだけの能力がない僕はまさしく子供であり、逃げ回るほかに手が無いのだった。
僕は無力だ。きっと大人になったって無力なままなのだ。少なくとも今のような生活の延長線上では。
だから受け入れた、受け入れるほかにない。
逃げ回る以外の選択肢を見出したいのなら、力をつける他にない。
だから父さんの示したプランに乗る。
どこまでも横に伸びて抜け道を見つけてやろうじゃないか。
スマホの画面には花森学園のホームページが映っている。
こちらは本校の方の情報ばかりで僕が通うことになる分校についてはどこにも書かれていなかった。
やっぱりかなり怪しい。
一応検索サイトで複数単語による検索をかけてみるとかなり古いデザインの掲示板サイトのようなものがヒットした。
噂話程度の信用度しかないが、その当時に成績優秀者を選抜した特別学級のための校舎を分校という形で作るらしいという話があったようだ。
まことしやかに書き綴られる話題を追っているうちに僕は自然と眠りに落ちていた。
そして朝が訪れる。
『オハ ヨ ウ』
その声が聞こえる、時刻はいつも通り6時半。
おはようと返事をしてのそのそとベッドを下りる。
色々あったせいでよく眠れなかった、今日からも色々あって疲れる日々が続くだろう。
寮ではコイツとどう接していこうか。
考えなければならないことが沢山ありすぎる。
憂鬱さと眠気を引きずったまま、重い足取りで部屋を出ようとする。そのとき不意に背後からそれが聞こえてきた。
『ニンゲン クウ』
あまりの衝撃に僕は音速を超える速度で振り返った。
『ク ウ ゼッタ イ ダメ』
なんてカワイイ奴なのだろう。
バッチリしっかりと眠気が飛んで行った。