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噂好き(ミステリー小説 第七話 ほ・く・ろ)

「弘明、今日もコンビニバイト頑張っているわ。N大学でも成績良かったし、就職も弁護士事務所に決まったけど、辞めて正解よ。あんな二流どこで満足してるわけないっちゅうの。私の子よ。きっと来年こそは弁護士資格所得よ。26で若手弁護士誕生、凄いじゃない!」


幸子は自分勝手な妄想にとらわれているだけなのに気が付きもしない。

全く世間知らずで自分勝手。

夫、昭の気持ちもすら全く理解しようとしていない。


だが、この頃幸子は体重計に乗っていない。

怖いのだ。

日ごとに自身がやつれ、食欲も無いのをもう誤魔化しきれなくなっている。

冷蔵庫には幸子好物のプリンやチョコレートケーキが眠っている。

日ごとやせ細っていく幸子の姿に離婚を考えている昭もさすがに目を覆う様相を呈していく。

「弘明くんこの頃帰り遅いのよ。」

幸子は息子をくんづきで呼ぶ、子離れ出来ていないのだ。


お得意様との商談が決まりそうな昭は連日仕事で午前様だ。

嘱託での仕事とは言っても資料づくりは家では出来ない。

個人情報に漏れがあってはならない、 昭は幸子を信用していなかったのだ。

幸子はパソコン操作が出来ない。

スマホだけで買い物等必要最小限の機能は使えるらしいが。

昭のパソコンの暗証番号すら知らないが、気分の問題だった。

それほど昭は幸子を嫌っていた、が、幸子は昭の気持ちなんて関係なく日々を送っている。

「そうか。」

昭の言葉に幸子の怒りは爆発。

「貴方、弘明が心配じゃないの、この頃ここら辺も物騒になって来てるし、例の事件アパートでの若い女の変死事件よ、犯人高田高貴じゃ無かったのよ、ほんとぼーっとしてるわね、もし、弘明が犯人に襲われたらどうしたらいいか。」

「わかったよ、でも弘明は男じゃないか、やられっぱなしとは限らない、娘を持つ親御さんの方が心配じゃないのかな?」

「人の事なんてどうでもいいわよ。」

その言葉に昭は芯から呆れた。

昭は先日黙って弘明の仕事ぶりを見に行ったのを幸子には隠していた。

いや、話す気になれなかったのだ。

暫くすると、ようやく弘明が帰って来た。

だまって、「ただいま」も言わずに自室に帰っていく姿は幸子に新たな恐怖心を植え付けた。

時刻は10時は過ぎていたような。


翌朝のワイドショーでは柳井まどかさんの事件で持ち切り。

県警から新しい情報がマスコミを通し入ってきているから。

どうやら犯人は幸子の予想通り左利きらしい。

スマホに右手人差し指の腹が誤って写っていたがその状態で右手でシャッターを押すのは無理。

(そのスマホは右上方にカメラがある、故に右手人差し指の腹側が誤って写ってしまったと言うことは左親指でしかシャッタが押せない、おそらく震えを抑えるのに必死で両手でスマホを抑えシャッタを押したと思われる。急いで高田高貴さん部屋から柳井さんの姿を映しからだろうか。)

犯人、左手説は完璧だった。

しかし、あの夜斎藤さんから電話もらった時点では小雨がふっていたはず。

側溝にあった千切られていた写真の一部(犯人が急いで高田高貴さんの部屋から写真を取った為に誤って右手人差し指の腹が写ったもの)多少は濡れていたはず、いくら今の鑑識でも、採取は不可能だったんでは?

県警はなにか隠しているんじゃないかしら?

どうやら自宅でのプリンターを使用したらしいことも分かって来た。

付近の大手電機店、コンビニ、虱潰しに回ったが犯人に繋がる情報がなかったのだ。

幸子も思った、犯人宅のプリンターに違いないと。

とっさの行動で「なぜ、側溝に写真を捨てたのか?焼却処分が出来なかったということは、一人暮らしではなく家族に見つかってしまうのを懸念して?」

幸子の直観力は冴えている。

恐怖は人の神経に触りそれゆえにかえって力を発揮する。


本当に指紋が写っていたのか、もしかしてそれ以外の な・に・か が?

幸子は大きく首を振った。

なにかおかしい、指紋じゃない、傷とか、タトゥーとかだったらどうだろうか?


そんな思いにとらわれていると既に時は5時を過ぎていた。

夕方のニュースで県警は新たな真実を流し、一般市民に広く情報を募った。

「犯人は右手人差し指に直径1センチ程の大きめなほくろがあったそうです。県警は広く一般市民からの情報を求めています。皆さんぜひ右手人差し指の腹側にほくろのある方をご存じな場合県警に連絡をください。」

ニュースキャスターの口調がいつもより強かった。

これで幸子は最大の疑問が解決した。

県警が必死に隠していたのは「ほくろ」の存在。


幸子の意識は事件があった夜に戻っていった。

昭の帰りは11時はとうに過ぎていたような。

そんな時間に噂好きの主婦斎藤さんからスマホに電話があった。

斎藤さんは介護が必要な義理の母親の世話で大変だった事実を、後日幸子は耳にした。

これまた、噂好きの近藤さんからに情報。

近藤さんは古くからこの栗山団地に住んでいる情報通。

斎藤さんがタクシーで車椅子に乗った母親を運転手と共に乗せていることろを偶然見たのだ。

まるで隠れるように細心の注意を斎藤さんは払っている様子らしかったが、運悪く近藤さんに見つかっていたのだ。

だから、わざわざ遠くても皆川祭がバイトしている激安スーパー「タクミ」で買い物をしていたのだ。

その斎藤さんがスマホ越しでも興奮を隠せない様子で「外を見て大変なことになっているのよっと。」と語った。

すると居間のカーテンを開けた幸子は、初めて外が日中のような明るさだったのに気が付いた。

パトカーも三台止まっている。

夜間という事もあってかサイレンを鳴らさずにやって来たのだろう。

そして、翌朝、散歩にかこつけて斎藤家の前を通り事件当時の話を聞く事となる。

幸子たちが住む栗山団地の通り一本超えたアパートの前に黄色い規制線が貼ってあったことを11時過ぎに帰って来た夫から聞いて驚き幸子に電話した。

そして、警官が側溝を剥ぐっていたのを斎藤さんの夫が見かけたのだ。

そのよう話を聞いたような。

翌朝の新聞は事件について全く触れてなかったは不可解だったが。


幸子は合唱の練習で必死だった故にそれどころではなかったのだ。


「ほ・く・ろ」幸子はつぶやいた。

頬に、一粒の涙が伝う。

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