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噂好き(ミステリー小説 第三話 写真)



「あああああ、いいいいい、ううううう、えええええ!」

「もういいんじゃないかしら。」

合唱団のみんなと発声練習をしながら幸子の毒舌が始まるが、あくまでも心の中の声。

しかし、さっきから探しているのに、皆川祭の姿が見えない。

もう、発声練習を始めてから30分は過ぎただろうに、生真面目な彼女は練習に遅れてきたことがない。

「皆さん、集まってください。」

突然、団長兼指導者、音楽教室講師の高見彩子(団員はたかみささんと呼ぶ)が手を叩きながら大きな声で叫ぶ。

気が付かれたと思いますが、ソプラノの皆川祭さん今日から暫くお休みです。

「どうしたんですか。」

何処からか声が聞こえる。

「ご家庭の事情です。もしかしたら発表会も無理かもと仰っていましたが、戻って来られるのをお待ちしましょう。」

なにか隠しているの違いない。

幸子の直感が心の中でつぶやく。

ふと、伴奏者、神代優の顔が崩れたのを幸子は見逃さなかった。

この人何か知ってる。

練習後、幸子は小声で神代優に声をかけた。

「貴方、皆川さんが休んでいる理由知っているんじゃなくって。」

訳知り顔で神代優に聞くと案の定だった。

「違うんです。後をつけたわけじゃないんです。たまたま、皆川さんがスーパーの品出しをしてたの見ただけ。」

「やっぱり、知っていらっしゃたのね。気を使ったんでしょ。」

このお嬢さん育ちは音大卒で自宅や音楽教室でピアノを教えている。

まったくいい身分だわ。

育ちが良いせいか、おとなしくて世間知らず。

本音を引き出すなんて赤子の手をひねるよか簡単。

「私も知っていたのよ。」

幸子は嘘も上手い!

「迷ったんです。でも、勇気出してお声掛けしたんです。働いていらっしゃったなんて知らなかったって。そしたら皆川さんが仰ったんです。長男に子供が出来て何かと物入りで働き始めましたって。皆さんにご迷惑おかけします。発表会も無理かも知れませんって。」

神代は優しい性格だ。

頬に涙が伝わっている。

誰かに見られてはまずい。

そう思った幸子は彼女の手を引っ張り、練習に使用している小学校体育館の死角に連れ込んだ。

「知っているのは誰、団長だけ。」

はいっと一言神代はつぶやいた。

「黙っていてやってね。私も知っていたのよ、えええっと何処のスーパーだったかしら。年を取ると忘れっぽくなって。」

「スーパー タクミ です。」

「そうだったわね、くれぐれも黙っていてね、秘密よ、」

「私、皆川さんの声大好きだったんです、あの方の高音、透き通っていて、早く弾く所も上手く弾けるんです、あの方の声はピアノの私も引っ張ってくれる。貴重な声の持ち主だけにもったいなくって」

ええ、ミスってたんじゃなかったの。

私の勘違い?


暫くすると団長の声が聞こえてくる。

「次からは通常の速度で合わせるわよ。」

えええ、速度ゆっくりだったんだ、ぜんぜん知らなかったわ。

幸子はこんな性格。

人の事は分かるが自分の置かれた立場が全く理解できていない。

神代優の伴奏は全くミスっていなかったのだ。

練習に合わせてゆっくりと弾いてくれていただけ。

しかし、幸子は譲らない。

「神代優さん絶対に伴奏早く弾くとこ間違ってんだから、あの人分かってないんだから、もう、音大卒なのに」

心の声がつぶやく。


翌日、幸子の姿は神代優から聞き出した、皆川祭のバイト先、スーパー タクミ近くにあった。

「たしか、ここだと思うんだけど、自転車で40分かかったからかなりの遠くに勤めを探したわけか。神代さん3時ごろ偶然、皆川さんにここで出逢って話しかけたって言ってたわよね。」

あ、いた。

遠くからでも見えた。

皆川祭がスーパー入口で野菜を品出ししている姿が。

声をかけようとした途端、後ろから話しかけられた。

「どうしたの、幸子さん、こんな遠くのスーパーに来るなんて。」

斎藤さんの声だ。

「ええ、気分転換に来たのよ。」

焦った様子に気づかれないか、嘘つくのも大変だわ。

「斎藤さんこそどうしてこんなところまできたの?」

「あら、ここのスーパー、今日特売なのよ、知らないの?」

特売なんて幸子は本当に知らなかった。

「よかったら、一緒にお茶しない。」

断る理由がない。

皆川祭に見つからない様に、買い物を済ませ、スーパー近くのカフェに入った。

「ねえ、知ってる、側溝からばらばらに千切られた写真の一部が出てきたらしいわよ、昼過ぎのワイドショーでやってたのよ。」

「ホントに、ばらばらの写真が出てきたの。」

幸子は皆川祭の事で頭がいっぱいになっていたのだ。

あの夜、警察が側溝剥ぐって探していたのは写真だったのだ。

暗闇での捜索。

流されやすい軽いものに違いないと思っていた幸子の直観力に今更ながら、脱帽。

「でね、見つかった写真なんだけどね、真向いに、ほら、似たような作りのアパートがあるでしょ。そこの住人が殺された若い女性を部屋の窓越しに映したものだったんだって。写真の構図がそこから映したものだったのね。それにご近所さん達が犯人?がよく目深に帽子をかぶってつけていたの見ていたらしいわよ、ほんーと、何処に目があるかわかんない時代になったもんだわ、ここらも物騒になったてことかしら。」

「ぜんぜん、分からなかったわ、テレビも見ていなかったし、合唱の発表会が近くて練習も忙しかったから。」

幸子はワザと暇人な貴方とは違うのと言ったのだが、このボケた斎藤さんは嫌味すら感じないのも分かっている。

暇人、斎藤さんの話は続く。

「お風呂場で亡くなっていた女性の回りにばらばらに千切られた写真があったんだけど一部見つからなくって、その写真の残りが側溝にあってパズルが組み合わさったんだって。これで、一件落着ってかしら。」

なにかおかしい、出来過ぎだ。

幸子は思った。

なんで犯人がそんな写真をばらばらにして、しかもワザと見つかる様にしかも一部だけ隠そうとしたなんて矛盾がある。

やっぱり幸子は嫌味な性格だが敵には回せない。

直観力冴えわたってる。

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