亡国の徒花。非時の橘。このまま永遠を生き続け、 人間は増え続け、 ダンジョンへ拡げ続け、 地母神が愛し続けて下さる。 聖なるかな、性なるかな、盛なるかな、青なるかな。
このまま永遠を生き続け、
人間は増え続け、
ダンジョンへ拡げ続け、
青き少年神は愛し続けて下さる。
聖なるかな
性なるかな
盛なるかな
青なるかな
「ツンドラ世代の貧困問題が昨今、深刻に、致命的に、なりまして、私にも何か出来ないかと考えたのが始まりであります」
一介の老人であった。政治なんて門外漢の。縁故も何もなく、彼は敢えてそれから己を遠ざけてすらいた。
「しかし、我が国は疲弊致しました。現行を支えることが精一杯であることは素人の私にも理解できるところであります」
しかし、講演と書籍により多くの賛同を得て彼はここにたっていた。1人政党、1議席、それだけの影響力。偉大な一雫。
「もちろん、今この場で解決しないでしょうが議事録には残る。これは、今だけでなく10年後、20年後、そして100年後の皆さんが参照する為のものである、と、記しておいて頂きたい」
もちろん、他の野党らだって本当は正道で政治を進めたいのだ。人気取りに終始せずに。
老人の言葉に、かつてアカデミーの先生を思い出すものがいた。あるいはそのものこの老人に教わっていたものもいた。
「まずは、20年前から続きます、林業振興に関して。発端は薪燃料としての杉の植林奨励と、かの魔王率いる皇国から輸入した石油ストーブの普及が重なり、多くの、杉材がダブついた事に始まります。これは薪炭材目的のため、粗放に植樹したこともあって建材その他への転用は不可。花粉によるアレルギーも……」
これだ、政治劇ではなくそのもの政治。華もなければ体面も気にしない、ただ国を善くするための議論!
これが若者を中心に支持されたのだ。今の若者には、論理に耳を傾ける用意がある!
先細るばかりだと思われていた我が国に、若者に押し上げられた老人が現れた。希望はあるのかもしれない。
そこへ、講義のような会議に、ふわりとそれが舞い降りて来た。青く美しい悪魔が。
「お前、若い頃は切れ長の美少年だったんだってな」
「もう国とかどおでもいいのぉぉぉ!100年先?知らない!今、一瞬の魔王さまとの繋がりが大事なのぉぉぉこんな国亡んじゃえぇぇほろ、おほろぉぉぉぉ」
何か、糸で操られる人形のように、身動き出来なくなった我らの前で、老人は瞬く間に若者へ、そして少年へと変わっていった。これが噂の、レベルドレイン。
永遠の若さを求めて、この魔王に降る裏切り者も多いと聞く。
老人は、我らの希望は、そのまま魔王に抱えられて連れ去られてしまった。あらゆる分野の偉人たちが、こうして突然連れ去られていくのが、現在我が国の、実に嫌な流行りであった。
「どうすることもできなかった。せんせいはもう、かえってこないだろうな」
「お隣は、それで、それだけで国が滅んだそうだな」
「ああ、このめでみるまでは、わたしもしんじられなかったよ」
「なあ、我が友よ」
「どうしたあらたまって」
「お前、若返ってないか?」
「……」
「……」
「そうか?」
「……いやお前」
「ジム通いとエステだな。体力が無ければ政務にも支障が出るからな」
「嘘つけよぉ!じゃあ何で幼年学校の短パンはいてんだよぉ泥だらけだしよう!」
「お前にはわからないだろうさ俺の気持ちは!」
「若さのために祖国を売った気持ちか!?」
「お前みたいに!家が自由な気風と違って!ウチは厳格だった!カニ釣りしたりムシ捕りしたり!失った青春を取り戻すんだ!」
「意外と多そうで悲しいお前みたいな理由で裏切る奴!」
「そして中学に上がったら女の子と詩集の読み合いとかもするんだ!」
「今時の子はせん!詩集はせん!」
「みすずはしてくれるからだいじょぶだもん!」
「おま、……奥方まで?」
「……」
「あ、しまった!じゃねぇ!なんだそのコテコテのお口チャックはやめろ!ムカつくんだよ中身オッサンだと思うと!!」
「いや、実際善いよ若返ると。政務早く処理できるし」
「急にお前」
「集中力の差だな。あと、認めたくないけど認知力な。いつの間にかイエスマンだけになってたし、露骨なお追従も気づかなくなってたなぁ反省だわ」
「いや、それは嘘だろ。……嘘だよね?」
「俺らも、先達みてああはなるまい、って思ってたろ?きっと、先達もそう思ってたんだぜ。若返って善かったわマジで。あれ、何でこんな常識的な判断出来てなかったんだろ、って案件めちゃくちゃ多かった。俺らの同期じゃ防衛の副大臣が一番、年食っても正気保ってるな。下に見てたあいつが一番」
「……」
「国民を思うなら、このせんたくしもありだとおもうぞ」
「考えさせてくれ」
「覚悟ができたら魔王さま呼んどくよ。じゃ、俺は午後から授業だから」
「まさかお前、学校まで通ってるのか?」
「うん、泥団子ピカピカに磨くんだ」
「……」
バタン。
「おお、神よ。もしいらっしゃるのならば、どうかお救い下さい」
バタン。
「呼んだ?」
聖なるかな
性なるかな
盛なるかな
青なるかな
青たる煩悩の神よ