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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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92話(神サイド) 急襲


 黒いが暗くない不気味な世界で、恐ろしい少女は踊る。

 独学であるそのダンスは、人々を魅了させる何かがある。

 超能力ではない、努力、才能、そしてその容姿と性格から見て取れる自信。

 その自信は半端な物ではない。

 自分の行動は全て正解だと言わんばかりに……いや、全て正解なのだろう。

 全て、正解にしてしまえるのだろう。

 そんな事を可能とする、力を持っているのであろう。

 だから、その少女──ダクネス・エクスカリバー・シェスは、宏人たちの前に現れた。


「きみは……?」


 だからなのだろうか。

 宏人は、ダクネスに不気味さを感じ、恐怖を覚えると共に……憧れを抱いた。

 そんな宏人を、ダクネスは見た。


「私の名前はダクネスだよ。まあ私の事はともかく……きみは向井宏人くんだよね?」


「え……ああ、そうだが。……なんで俺の名前を?」


「宏人くんは結構有名人だよー。なにせ、初めてのほぼ完璧な『器』なんだから」


「『器』……?」


「オイ宏人、今すぐ逃げるぞ!」


 ダクネスと宏人が話していると、智也が叫んだ。

 宏人はなぜここでアスファスが自分たちを育てていた理由である『器』という単語が出てくるのか疑問に思ったが、智也によって思考が中断された。


「ちょっと待て──」


「『火弾操作』!」


 智也は宏人の静止を聞かず構わず『火弾』と『操作』の混合能力を放った。

 昔智也が『魔王剣』を所持していた時付与された能力である『バオイオレンス・オーバー』によって二つの能力を混ぜる事が可能となっているのである。

 クンネルによって『吸収』を奪われたものの、智也は結構な数の『超能力』を所有しているのだ。

 通常の超能力の威力を高く上回るそれが、ダクネスを襲うが──


「やめなよ。きみが一番私に勝てないって知ってるでしょ?」


 ダクネスが手を凄まじい勢いで虚空に振ると……『吸収操作』がかき消された。

 だが、ダクネスはそれだけでは止まらない。


「実はね、『NoS』において1番と2番、3番、11番……そして0番の私以外は失敗作だから暇あったら殺せ!って言われてるんだよねー」


「……だから?」


 ダクネスは頬に人差し指を置きながら目を明後日の方に向けながら悩んでいるフリをしながらそう言うと、智也は緊張を含んだ声でそう聞いた。

 するとダクネスは、ニコッ!と笑う。

 ……智也は知っている。

 ダクネスがニコッ!とすると、ロクな事が起こると言う事を……。

 智也の読み通り、ダクネスは答えた。


「宏人くん以外全員……殺します!」


「だが断るー!」


 ダクネスが智也に手を向けると、虚空より男が叫びながらダクネスの前に現れた。

 智也はダクネスの前では何人も敵わないと絶望していたため、たとえ誰かが助けに来たとしても死ぬ事は回避出来ないと確信していたが……。

 

 ──希望が見えた。


「……おい、狂弥。なんでテメーもここにいる?」


 ダクネスの口調が、いきなり変わった。

 まるで目の前の男を憎むようなダクネスよ顔は、気持ち悪いものを見るかのように歪んでいる。

 男──狂弥と呼ばれた男。

 またもや、宏人の知らない人物だ。

 宏人から見た狂弥は……ダクネスと似た、どこか不気味な存在だった。

 そんな狂弥は、ダクネスに向かって手を向ける。


「『時空支配(暁コントロール)』」


 狂弥は、そう呟いた。


「『天地万象古ノ世界(旧世界)』」


 それに対し、ダクネスはそう呟いた。


 二つの『世界』が、激突した──!


「あ、向井宏人!山崎智也!」


 どちらの『世界』の方が高度か式が絡み合っている中、狂弥は宏人を呼んだ。


「な、なんだ……?」


 宏人は狂弥に恐る恐る答えた。

 なぜみんながみんか自分の名前を知っているのか不思議で堪らなかったが、宏人は狂弥の目を見る。

 目が合ってるはずなのに、どこか違う所を見ているような、不思議な目だ。

 果たして目が見えてるのかと思うが、ちゃんと目は合っている。

 人……ではないか、そうじゃないかすらも曖昧なその男は、笑いながら宏人と智也に向かって叫んだ。


「凌駕を、頼んだよ!そして向井宏人!きみはアルドノイズを頑張って倒して!」


「……は?凌駕はともかく、なんで宏人にアルドノイズを……!」


「頼んだよ!」


 智也は意味がわからないと言うように狂弥に質問するが……。

 狂弥はそれだけ言うと『世界』に吸い込まれていった。


「「……」」


 どちらの『世界』が勝ったのか、それとも混ざったのかは定かではないが、とりあえず場は治った……と二人は思ったが。


「は?」


「あ?」


 黒い『世界』が、光に包まれた。


 *


 アルドノイズが、凌駕に向かって『バースホーシャ』を放った。

 『エンブレム』だとまた何かしらのアクシデントが起きた時対処出来ないと考えたのか、爆炎の業火が凌駕に迫る。

 

 だが、凌駕は目を瞑った。


 凌駕は吐夢狂弥の幹部だ。

 ここで死んでも、もとよりこの『世界』は捨てるつもり。

 だから終わりではない。

 かと言ってもこの『世界』での自分は死ぬのだ。

 怖くないわけがない。

 しかし、これが初めてではないと聞いている。

 だからなのか……絶望というのは感じない。


「……」


 凌駕は、『バースホーシャ』を受け入れ──


「「ああああああああああああ!?」」


「ッ───────────!?」


 突然、凌駕の目の前の炎のさらに前に……宏人と智也と美琴が降ってきた。


「「「!?」」」


 当たり前だが、『バースホーシャ』の前に落ちてきた3人の前に、『バースホーシャ』が迫ってきた……!

 

「ッ……!『破矢』!」


「『火弾軌道』!」


「きゃあああああああああああああ!?」


 凌駕が残る力を振り絞って『破矢』を、智也が『火弾軌道』を、そして美琴は……悲鳴をあげた。

 だが、それだけでは『バースホーシャ』は止まらない。

 そのため、宏人は──


「『神の手』!」


 手を、『アスファス』に『変化』させた──!


「なに!?」


 それにより、『バースホーシャ』はかき消された。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 数秒、アルドノイズの驚きの声と、凌駕と宏人と智也の呼吸の音と、美琴の強く唾を飲み込む音が支配した。

 いや、数秒以上、それが続くはずだった。

 この場には、まだあと一人いる。


「アルドノイズ様、お下がりください。久しぶりの再会でまたお怪我をされては敵いません」


「……セバス」


 『死神』、セバス・ブレスレットが。


 セバスはアルドノイズにそう言うと、前に出た。

 

「……ッ」


 宏人も右手に『神の手』を宿したまま、前に出る。


 しかし、宏人はこの『暗館』という世界で相手の姿を視認する事が出来ない。

 今さっきの『バースホーシャ』の件は、『暗館』の対象外のため見えただけだ。

 そしてこの場でセバスが『死神』という事を知らない人物は、宏人と美琴だけ。

 それに美琴は今さっき起きたばかりのため、この状況に混乱している。

 今戦えるのは、宏人しかいない……!


「アルドノイズ!俺だ!」


「……智也か!」


 智也がアルドノイズにそう言うと、アルドノイズも少し嬉しそうに返した。


「……マジかよ」


 そんな二人を見ながら、凌駕は苦笑いをして言った。

 宏人も、ゴクンと唾を飲み込む。

 もう、この状況ではっきりした。

 この場は、アルドノイズと智也とセバス対宏人と凌駕と美琴ということ。

 しかも凌駕は見るからに戦えそうにない。


 アルドノイズの紅色の目が、ギラギラと光る。


「……」


「……!」


 宏人と、アルドノイズの目が合った──


「『バースホーシャ』!」


「うおおおおおおおお!」


 アルドノイズの『バースホーシャ』と、宏人の『神の手』が衝突する──


 直前。


 ──誰かが、笑った気がした。



 そして、この『世界』からアルドノイズと向井宏人が消えた。



「……は?」


「な……!?」


「え……?」


 凌駕と智也と美琴の声が、この世界に木霊し……。


「あ、あ……アルドノイズ様ァァァァアアアアアアアアアア!?」


 セバスは絶叫し、暴走した。

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