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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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90話(神サイド) 始祖の悪魔との戦い③


「なっ……!?オイ、今回はなんかいつもと違うぞ……」


 凌駕は、緊張を含んだ声でそう呟いた。

 アルドノイズは『今回』という単語が気になったが、構わず見続ける。

 アルドノイズの部下である、『死神』を宿した少年、セバス・ブレスレットを。

 ちょうど今、セバスが永井快と羽島雫を吹っ飛ばしたところであった。

 快と雫がボロボロになりながらも、フラフラと立とうとする姿を見て凌駕はいち早く駆けつけたくなったが、グッと堪えてアルドノイズと見つめ合う。


「ちっ……まさか、『死神』がお前たちに協力していたとはな。『魂』の事しか頭にないんじゃないかと思ってたんだけどなぁ……失敗した」


 凌駕はぶつぶつとそう呟いた後、アルドノイズと向き合った。

 既に満身創痍な凌駕と違い、アルドノイズは余裕そうだ。

 一回目と違い、なぜかアルドノイズは『アルドノイズ』のままで強化されている。

 だが、凌駕は諦めない。

 一回目諦めそうになった時に、凪に言われた言葉が脳裏に過ぎる。


『弱気になんな。河合凌駕』


「ああ、当たり前だっ!」


 凌駕は叫ぶと共に式神を剣型にした『フリーダム』を構えながらアルドノイズに向かって駆け出す。

 だが、アルドノイズはそれを片手で制すと。


「『エンブレム』」


 凌駕の視界いっぱいに地獄の業火が広がる。

 逃げ場はない。

 だから、『フリーダム』により、斬って進む。

 だが、『エンブレム』はそんなヤワではない。

 仮にも神が創り出した業火は、凌駕の体のあちこちを焼く。

 もう何度目になるか分からない展開だ。

 

「うおおおおおおおお!」


 叫ぶ。

 とにかく叫びながら、炎の中へ突っ込んでいき━━


「アルドノイズ!」


 凌駕はアルドノイズへ斬りかかる。

 だがアルドノイズは至極落ち着きながら、右手に持つ神剣『黒龍』によって凌駕をいなし、追撃する。

 凌駕は僅かに残っている『自由者』の残りカスによって『風撃』を自身の足元に撃ち、反動で飛んで距離を取る。

 その繰り返しをまたやった……かと思ったが、今回は違った。


「ニーラグラ魔法!『破矢』!」


 距離を取った瞬間、凌駕は光の弓を撃った。

 

「ッ!『バースホーシャ』」


 それに対し、アルドノイズは一瞬焦りを見せるが、すぐに対応する。

 そのため、『破矢』が『バースホーシャ』に焼かれた。

 『バースホーシャ』はそのままの勢いで凌駕に迫ったが、凌駕はサイドステップで避けた。

 そして、避けた勢いそのまま、凌駕はアルドノイズの元へ走りながらもう一度『破矢』を撃つ。


「そろそろ、終わりにしよう」


 アルドノイズも苛立ちながら、再度『バースホーシャ』を撃つ。

 『バースホーシャ』は基本的にコスパが悪いが、『エンブレム』では『破矢』を砕く事が出来ないのだ。

 しかし、『バースホーシャ』は『破矢』を砕くどころか貫通までする。

 いかんせん速さで負けているため、威力で勝負しなければならない。

 案の定、凌駕の『破矢』は『バースホーシャ』に焼かれ霧散した。

 アルドノイズはため息を吐く。

 ここからは今さっきの展開と同じだ、と思ったからである。

 だが、現実は違った。


「ああ、終わりにしようぜ!アルドノイズ!」


 なんと凌駕は『バースホーシャ』を避けず、突っ込んできたのである。

 

「ッ!?」


 一瞬、アルドノイズは一旦状況を確認するため辺りを見渡した。

 なにせ『バースホーシャ』は全てを焼き尽くす紅蓮の炎。

 いくら強力な『超能力』の持ち主である河合凌駕でさて、ただでくらえば死ぬ。

 焼死体なんて生温いものではなく、完全なる消滅。

 アルドノイズはここ数十年、ぬるま湯という言葉とは無関係な日々を送ってきたのだ。

 相手を見た瞬間、強いか弱いか、敵か味方か、嘘か本当か、など大体わかると自負している。

 そんなアルドノイズから見た凌駕は……


「お前は、愚者ではない!」


 アルドノイズは、見つけた。

 いや、偶然、目に映った。

 本当なら、今見るべきではない場所。

 信頼している強力な仲間が、その場で敵を蹂躙している所。

 だが、あった。

 アルドノイズの目に、雫が凌駕に向かって手を向けているのが、映った。

 

 『金剛』。


 それは、どんな攻撃でも一度だけ耐えうる事が出来る、常識外れの、しかし弱点も多い、強力な『超能力』。

 

「正解だ、アルドノイズ」


 アルドノイズが理解した時には、凌駕が既に目の前にいた。

 『バースホーシャ』を抜け、アルドノイズの目の前まで迫っていた。

 アルドノイズは、震える。

 恐怖ではない、愉悦。

 アルドノイズは、凌駕との再びの戦いを楽しんでいる自分を見つけた事を、驚いた。

 凌駕の手が、アルドノイズに向けられる。


「『植樹』!」


「『エンブレム』!」


 かつての……というよりか数時間前の戦いと同じように、両者は互いに今できる最大限の攻撃を放った。

 お互い『破矢』か『バースホーシャ』という最大火力の攻撃があるというのに。

 理由は単純であり、両者とも時間がなかっただけである。

 凌駕の場合は瞬時に、そしてタメなく矢なんて撃てるわけなく、アルドノイズの『バースホーシャ』も、数瞬のタメがいるのである。

 そんな『植樹』と『エンブレム』だが、お互いに、息が合うブラフであった。


「うおおおおおおおお!」


「チイイイイイイイイ!」


 凌駕の『フリーダム』と、アルドノイズの『黒龍』が激突する。

 それと同時に、『植樹』と『エンブレム』もぶつかり火花が散る。

 勢いの『植樹』と、豪炎の『エンブレム』。

 互いに負けじと、衝突し続ける。

 だが、それは序盤だけであり……。


「『バースホーシャ』!」


「マジかよっ……!」


 アルドノイズは『黒龍』から左手を離し、凌駕に向かって『バースホーシャ』を撃とうとする。

 一瞬の出来事。

 アルドノイズの手に、全てを無に帰す地獄の炎が、どんどんと収束されていく。

 

「『破矢』!」


 だが、凌駕も負けていない。

 アルドノイズよりも一瞬遅れたが、凌駕も現時点での最大火力である『破矢』を放とうとする。

 どちらも同じ階級である『カミノミワザ』。

 だが、だからかこそ、一瞬が差であった。


 鍔迫り合いをする二人の間で、『バースホーシャ』と『破矢』が激突した。

 

「ッーーーーーー!」


「がはっ……!」


 近距離での大爆発。

 凌駕もアルドノイズも『能力』を身体に覆い身を固めるが……凌駕が吹っ飛んだ。

 アルドノイズも覆うようにしていた腕が焦げたが、それだけ。

 凌駕はいつまでも続く暗い『世界』を転がり続け、止まる頃にはもう瀕死の状態であった。


「く、そぉぉ……!マジかよ……」


 凌駕は地面に横になりながら呟いた。

 凌駕はよろよろと、身体にムチを打ちながら立ち上がる。

 それだけで肉から血が出る、骨が軋む。

 痛すぎてもうどこが痛いのか分からない状態に恐怖を感じる。

 しかし、凌駕はなぜ自分がまだ生きているのか、そして意識もあるのか疑問に思う。

 だがその答えはすぐに分かった。


「『フリーダム』……」


 そう、いつの間にか手元に『フリーダム』がなかったことから、盾にしてしまったことを理解した。

 近距離での『カミノミワザ』同士の爆発だ。

 不死身の『式神』とはいえ、今の凌駕の状態での蘇生は難しいだろう。

 『能力』も底そこついている。

 助けも来ることはないだろう。

 狂弥も凪も、それぞれにちゃんとした仕事があるのだ。

 

「やるしかないか……」


「まだ、なにかあるのか……」


 凌駕はふらふらとしながら、目の前にいるアルドノイズに目を向ける。

 そんな凌駕をアルドノイズはため息を吐きながら見つめた。

 凌駕とアルドノイズは互いに目を合わせ……否、凌駕は『眼』を合わせた。

 凌駕の左眼の瞳孔が、不自然な動きをする。


「お前も、『眼』を持っているのか!」


 アルドノイズはそれを確認すると、焦るように凌駕に手を向けた。

 繰り出すのは『バースホーシャ』。

 アルドノイズは『眼』の強さを知っているのである。

 アルドノイズの脳裏に、太刀花創弥の顔が過ぎったのだ。

 だが、凌駕の方が速かった。

 

「『牙眼』」


 凌駕の左眼が、潰れた。

やっっっっっと!やっと当初から僕が書きたかった話が書けます!今話からアルドノイズとの最終決戦です!はい、僕の自己満足です!

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