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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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89話(神サイド) 従順


「ほう……ここが、『神の間』でございますか」


 『神の間』の前で、エラメスがそう呟いた。

 『神の間』とは、現界と神界を繋ぐ扉である。

 神界には神族という神たちが住んでおり、人間とは比べ物にならない圧倒的な力を持っている。

 その世界とこの世界を繋ぐ橋が、この『神の間』なのである。


「ああ、お前でも見るのは初めてだったな。入るぞ」


 アスファスはそう言い、エラメスとともに『神の間』の扉を開いた。

 中は光で満ち満ちしおり、直視することが出来ないのに加え、凄まじい風が吹き出している。

 通常ならば、無理やり入ろうとすると目が潰れ、肌が切り裂かれるところだろう。

 だが、エラメスの隣には、その世界の住人……いや、神がいる。


「さぁ、こい」


「はい」


 アスファスとエラメスは、『神の間』に入った。


 *


「ここは……?」


 アスファスとエラメスは、まるで王城の王室のような、無駄に金、金、金が使われた部屋に来ていた。

 エラメスが後ろを振り返ると、やはり『神の間』があった。


「こっちだ」


 エラメスは黙ってアスファスについて行く。

 部屋の扉を開けた先には、まるで無限に続いているのではないかと思うほど、先の見えない廊下を歩く。

 ……20分ほど歩いただろうか。

 いくつもの扉が並ぶなか、アスファスはその内の一つの扉の前で止まった。

 他の扉とは違い、鍵が二重となっている。

 大きさも2倍近くあり、明らかに特別な部屋だ。

 アスファスがその扉に手を添えると、カチッという解錠音が二回鳴り、開いた。

 その扉の先には━━


「少々遅れました。申し訳ございません」


 アスファスが頭を下げた相手の名は。


「いやいや、僕常にヒマしてるから」


 二柱目の器神、アルベスト。

 アスファスの二人目の兄である。

 体全身が蒼色の、穏やかそうな青年の姿をした神だ。

 アスファスが頭を下げるとともに、エラメスも急いで頭を下げた。

 アスファスはアルベストにそう言われて頭を上げるが、エラメスは上がる気になれず目だけで辺りを見渡す。

 するとなぜか、十席ある席のうち、アルベストしかいなかったのである。

 アスファスもそれが気になったのか、アルベストに聞く。


「おや……どうやらアルベスト様しかいないご様子。ニーラグラとソウマトウはどうしましたのでしょうか?」


「ソウマトウはまたキミ悪い変な事で楽しんでるよ。僕が言っても聞きやしない。まあいいんだけどね。……ニーラグラは、僕も知らない」


 アスファスは「そうですか」とあまり興味なさそうに呟いたのち、五番目の席に座った。

 もちろん、エラメスはアスファスの斜め後ろに立って仕える。

 十ある席の配置は、一つの席を九席が囲っているという構図だ。

 真ん中にある、一つの席は……神ノーズの特定席である。


「……アスファス様」


 エラメスは、アスファスとアルベストの会話の区切りを見計らった後、アスファスに言う。

 アスファスは顎を少し上げ、エラメスに頭を上げるよう促す。

 

「きみは?」


「わたくし、エラメス・コウセイ・ロンドンと申します。失礼ながら、あなた方様の世界にお邪魔しております」


「エラメスか。凄まじい異能を持っているな。すごいな、天然物だ」


「はい。左様でございます」


 アルベストとエラメスが会話しているうちに、アスファスはパチンと指を鳴らし、腕を組んだ。

 すると、すぐにコンコンと扉を叩く音が聞こえる。

 

「アスファス様、アルベスト様。失礼します」


「入れ」


 アスファスがそう命令すると、メイド服を来た女性が入って来た。

 その女性の目はエメラルドグリーンであり、髪も緑色。

 美しいが、不気味という印象が先にくる。

 その女性はアスファスの元まで来ると、椅子の隣にある小さな机の上に、資料を置いた。


「これでよろしいでしょうか」


「ああ、下がれ。メイナス」


 メイナスと呼ばれた女性は、それだけすると出て行った。

 エラメスはただ、見ている事しか出来ない。

 だが、それでよかった。

 それだけで、幸福だ。

 なにせ、普通の人間は見る事も、知る事すら許されない、まさに神の行事。

 

「アルベスト様、これを」


「ああ」


「あと、これらはニーラグラとソウマトウに」


 アスファスはアルベストにメイナスに持って来させた資料を渡し、話し出した。


「では、今回アルベスト様に来てもらったのは、『器』完成の報告のためです」


「ほう……」


 アスファスがそう言うと、アルベストは興味深そうにアスファスから渡された資料を見る。

 

「完成は一人、完成の可能性を多分に含んだ者が一人です」


「ほうほう。で?」


 アルベストは顎に手を置きながら資料をめくる。

 アスファスはニヤッと笑いながら、


「完成した人間の名は、向井宏人。能力名は『変化』です。可能性のある方は河合凌駕。能力は『自由者』です。私としては、河合凌駕の完成を待ったのち、判断しようと思っています」


 アスファスのその言葉に、エラメスは目を見開いた。

 『NoS』は、『器』を造るための組織だとは理解していたが、まさか適正のある者から順に番号を与えられているとは知らなかったのである。

 となると、アスファス様が吐夢狂弥に強く出れない理由を理解する事が出来た。

 吐夢狂弥に迫っても、河合凌駕を盾にされたらたまったものではないからだ。

 というかまず、アスファスサイドからしても吐夢狂弥と対等に戦える者が二名。

 十分に戦える者がエラメスを含んだ二名だ。

 計四名と、アスファス。

 アルドノイズサイドは最高戦力は吐夢狂弥だとしても、他の人間も十分に強い。

 アスファスとエラメスが分かっているだけでも『魔王剣』を持つ元勇者である偽物の魔王と、『模倣者』により『カミノミワザ』を使用出来る大きな不安要素だ。

 他にいないとも限らないのに加え、エラメスにとってなぜかアスファスがアルドノイズサイドに向井宏人を差し出しているのである。

 向井宏人と、河合凌駕。

 『器』適正のあるこの二人は、どちらもアスファスサイドにいない。


「私の報告のためご足労いただいてありがとうございます。これにて、終了したいと思います」


「……!」


 エラメスが思考に耽っているうちに、アスファスとアルベストの会議が終わっていた。

 アスファスは深く頭をアルベストに下げた後、部屋を出て行こうとしたが……。


「ああ、ちょっと待ってくれアスファス。一つ、質問させてくれ」


「……なんでしょう?」


 アスファスは足を止め、アルベストを振り返った。

 アルベストは静かに、アスファスに質問する。


「No.3以降は駄目なのか?」


「……書いてある通りですが」


「……そうか」


 アスファスが答えると、アルベストは目を細めた。

 だが、諦めるように首を振ると、アスファスの肩に手を置きながら……。


「ナイショ事なんて、すぐバレるからな?」


「……肝に命じておきます」


「そうした方がいい。特にお前は、目をつけられているからな」


 アルベストはそう言うと、アスファスよりも先に部屋を出て行った。

 エラメスにはこの一連の意味が分からない。

 おそらく、アスファスとアルベストにしか分からない会話だったのだろう。

 だが、なぜかエラメスは不安を拭う事が出来なかった。

 

「私たちも帰るぞ、エラメス」


「……はい」


 しかし、エラメスはアスファスに従う。

 余計な質問はせずに、従順なアスファスの使徒となる。

 なにせ、アスファスについていけば、必ず成功の道に連れて行ってもらえると信じているからだ。

 エラメス自身の不安など、関係ない。


「分かりました」


 エラメスはこれからも従順な使徒であり続ける。

 

 アスファスを、守るために。


 自分を、幸せにするために。


「吐夢狂弥……お前は、死ね」


 エラメスは、静かに呟いた。

 

 アスファスはそんなエラメスを見て、静かに微笑んだ。

はい、久しぶりの単語のサブタイトルの話です。なんとこの話、19話の続きです。数字がほぼ一転しました。……やろうと思えば91話に出来たんですけどね。これ以上二章の続き長引かせるとやってらんなくなるので……。まあとにかく、90話からはド本編をちゃんと進めたいなーとおもっていまして。なんと、次からは20話の続きです!やっと、やっと!向井宏人くんが登場します!ですので、四章と五章の題名の意味がようやく分かると思います!……最近月一でしたので、頑張って月二したい……!

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