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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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88話(神サイド) 『魔王剣』と『断罪人』②


 『魔化』とは、『魔王剣』所持者専用能力であり、身体能力の上昇や頭の活性化させるなどといった能力である。

 

 『炭界』とは、使用者以外の人物に対して、使用者の周りの物質を全て炭素とする驚異的な能力である。


 『結界』とは、使用者に対する物理以外のモノの効果を全て下げる能力である。


 『凌駕』とは、使用者の『人』としての格を一段階上げる能力である。


 『alzv』とは……


 全ての『能力』を一時的に『カミノミワザ』クラスに引き立てる能力である。


 *


「邪魔だクソがぁ!」


 祐雅が『魔王剣』を横一文字に凄まじい速さで振り、二体の『断罪人』は上半身と下半身を泣き別れにしながら吹っ飛ばした。

 もちろん、それでも『断罪人』は死なない。

 斬り口から細長い糸が何百と飛び出してき、結び合って結合する。

 

「死ね!」


 それでも祐雅は結合する前に斬り刻む。

 

「……?」


 そんな祐雅を、『断罪人』の術者であるアトミックは不思議そうにしながらも、目・を・瞑・っ・て・い・た・。

 そう、アトミックの『超能力』である『視線界』は、使用者が目を瞑っている間、この世界から消える能力である。

 しかし目を瞑っているため、アトミックも状況を判断する事は出来ない。

 だがアトミックはそのデメリットをメリットが上回る『式神』である、『断罪人』を持っている。

 『断罪人』はただの雑魚だが、二体いる上不死身だ。

 どんな強敵でも、相手が『式神』を展開し、逃げ場がなくなった中での『視線界』と『断罪人』は、アスファスが称賛するほどのものだ。


「オラァ!」


 尚も、祐雅は『断罪人』を斬り刻む。

 だが、今回は……。


「うおおおおおおおおおおおお!」


 高らかに叫びながら、『魔王城』に向かって全力で走っていった。

 その距離は数十メートルといったところ。

 『alzv』によって既に神の領域まで達している祐雅は一秒にも満たない速さで着くが、『断罪人』も神の領域にいる化け物だ。

 祐雅が着き、剣を横に振ろうとした瞬間、『断罪人』も既に一秒にも満たない速さで祐雅に向かってくる直前であった。

 

「「キシャシャシャシャーッ!」」


 『断罪人』二体が気持ち悪い笑い声を挙げながら祐雅に迫る。

 どこにも口はない人形が笑う姿は不気味を通り越して気持ち悪い。

 

「──ッ!」


 『断罪人』のハサミが、祐雅を切り裂く。

 だが、それでも祐雅は剣を横に振った。

 『断罪人』は二体いるため前も後ろも切り裂かれたが、身体の大事な部分は避ける事が出来た。

 だが、大量出血は避けられない。


「いいかよく聞け、教えてやるよ!アトミック!」


 しかし、祐雅は気にした素振りもなく、この『宇宙』のどこかにいるアトミックに向かって叫ぶ。


「『式神展開』から逃げる方法はな!『式神』を破壊すりゃあいいんだよ!」


「な──!」


 祐雅はアトミックにそう言うと、アトミックは瞳を見開き姿を現した。

 一瞬、祐雅の頭にこのままアトミックを殺そうという思考が過ぎったが、今の自分の状態を今一度確認し、断念した。

 一秒毎に相手の生殺与奪の権を握る戦いだ。

 悠長にしている暇などない。

 祐雅は『断罪人』二体によってハサミで身体を刻まれながらも、全力で『魔王剣』を振って『魔王城』にぶち当てた。

 そして、『魔王城』が瓦解する。

 祐雅は、その瓦解した『魔王城』の下から逃げるつもりだ。

 『式神展開』という『世界』は、完璧ではない一枚岩なのだ。

 その先には、現実世界が広がっている。


「逃すな!」


 アトミックが焦りながら『断罪人』に指示を飛ばす。

 アトミックにとって祐雅が生きる死ぬなど別にどうでもいいことだが、アトミックが敬愛するアスファスの指示だ。

 達成したいに決まっている。

 それと、自身の能力という情報を持ち帰られるのが一番危険だ。

 だからこそ、アトミックはここで全力を出さなければいけなくなった。


「『反転』!」


「なっ!?」


 アトミックがついに『超能力』を使った。


 『世界』が、ひっくり返る──!?


 瞬間、祐雅は真正面にいた『断罪人』に左手を切断されたが、なんとか『式神』から抜け出すことに成功した。


 *


「はぁ、はぁ、はぁ……はぁー!」


 安定した呼吸を乱すように、祐雅はその場で大声で叫んだ。

 やっと恥ずかしながらも自身の『式神』から抜け出せたというのに、またもやどこか分からない場所への転送である。

 見渡す限りは木しかない。

 自然が生い茂る、大森林だ。

 凪によって吹っ飛ばされて着いた繁華街でアトミックと遭遇したように、アスファスは着々と戦力を世界に分散させている。

 もう、アルドノイズとの戦争も近いだろう。

 まあ、祐雅はその時は全力でアスファスを潰しにいくだろうが。


「なっ……お前、祐雅か!?」


「ッ──!」


 突然祐雅の名前を呼ぶ者が現れたため、祐雅はすぐさま戦闘態勢を取る。


 その者は──


「……って。要、お前かよ」


 そう、祐雅の目の前にいたのは、アスファスが世に広めた三人の『超能力者』の内の一人の、要という少年だった。

 そのため祐雅は戦闘態勢を崩した。

 おそらく、要が唯一信用することが出来る人間だからだ。

 だが、祐雅が戦闘態勢を崩したのに対し、逆に要は戦闘態勢を取った。


「祐雅!お前も……俺を殺しに来たのか?」


「……?って、あぁ、そうか」


 一瞬祐雅は要が何を言っているのか分からなかったが、すぐさま思い出す。

 要にとって、祐雅はアスファスサイドかアルドノイズサイドか分からないからである。

 というか、どっちにしろ敵たりうる。

 だから、祐雅は要を落ち着かせるように『魔王剣』を投げ捨てた。

 祐雅の奇行に訝しむ要に、祐雅は言う。


「今までアトミックにボコられてた。だからボロボロで死にそうだ。……頼むから信じてくれ、正直余裕がない」


 祐雅ははっきりと本音を言った。

 まあ、虚勢を張るにしても見た目からして意味はないだろうが。

 

「……よかった」


 要はそれだけ言うと、ドサッと倒れた。

 要も血止めはちゃんと行っていたが、いかんせん出した血は相当多そうだ。

 

「……どうしたものか」


 祐雅は倒れた要を見ながらそう呟いた。

 倒れた要をどうするのというのもそうだが、一番の問題点は要をここまで追いやった何者かが今どこにいるかである。

 要の出血量や残り『能力』の残量の少なさからして、遊ばれたというより殺されかけたの方が濃厚だ。

 何者かは殺す気で要を襲い、要は何らかの方法で逃げ切った、そう捉えるのが妥当といったところ。


「……っ」


 そう考えた後、祐雅はすぐこの場から離れるという選択を取った。

 そのため要をおぶって獣道を歩くが、やはり若いといっても大人の男の体はそれなりの体重がある。

 いつもの祐雅ならどでかい『勇者剣』や『魔王剣』を振ることなんて苦じゃないが、慣れない人間の体という形態の上に自身の疲労困憊、出血過多。

 そして知らない道をひたすら歩くというちょっとした恐怖、足場の悪い森林……残り残量の少ない『能力』。

 祐雅にしても、かなり辛い。


「……あ?」


 要をおぶりながら歩くこと約二時間、祐雅はようやく自然以外の違う景色を見つけられた。

 それは、小さな一軒家。


「チッ……胸糞悪りぃことすんなよ……俺」


 祐雅はそう言い、要を地面にそっと寝かせると、『魔王剣』を虚空から出現させ、手に持った。

 そして、堂々と家の扉を開けると……。


「ふんふふんふんふーん。やっぱり人間界って楽しいー」


「……」


 ……祐雅が来たのに、この家の住人は何も反応しなかった。

 というか、最大に鼻歌を歌っていた。

 ただの変人の可能性も捨てきれなかったが、この容姿は。


「お、オイ?」


「って、うわあああああああああ!か、海野維祐雅だああああああああ!」


「ちょ、落ち着け……落ち着いてくださいっ……!」


「凌駕あああああああああああ!」


「……凌駕?……河合凌駕か」


 そう、祐雅の目の前で腰を抜かしている変人は……


 『知神』ニーラグラであった。


「な、なんでここに……」


 祐雅は、色々と疲れながら、そう呟いた。

約1ヶ月ぶりの最新話です。もはや月刊といっても過言ではないです。週間に出来るよう頑張ります。

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