表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
94/301

87話(神サイド) 『魔王剣』と『断罪人』①


「チックショウ!まさかあのタイミングで新野凪が来んなんて聞いてねぇぞ!」


 禍々しい剣を背中に背負った少年が、繁華街の真ん中でいきなり叫んだ。

 突然周りの人間は驚き、中には警備兵を呼んでいる者もいる。

 まあ、それも無理はないだろう。

 なにせ町の中で恐ろしいオーラを纏った剣を背中に担ぐ少年が情緒不安定を思わせるように叫んだのである。

 その少年の名は、海野維祐雅。

 元『勇者』であり、現『魔王』である。

 

「ったく……めんどくせえなオイ」


 『勇者剣』と『魔王剣』はそれぞれ協力な能力を所有者に付与するといわれているが、それは性格にも影響が出る。

 現に今の祐雅は昔と性格が一変しているというが、真逆になっている。

 『勇者剣』を所持していた時は、優しく爽やかな、されど敵には容赦ないというものであったが、今は常日頃から刺々しい雰囲気を放っており、口も非常に悪い。

 ついさっきまでアルドノイズと共にいた時は幾分か気持ちに余裕があり、名前も知らない少女に過去の話が出来た。

 もちろん、あの過去を話したのは祐雅の意思ではない。

 アルドノイズに命令されたから行ったものだ。

 そのアルドノイズの目的を祐雅は聞かなかったが、大方知ってもらいたかっただけだろう。


 自分たちも、必死なのだということを。


 だが、途中で凪に邪魔された。

 その凪の攻撃のせいで、アルドノイズの『式神』から弾かれてしまい、どこかの地へ転移させられたのである。

 

「あ?」


 周りがザワザワとうるさくなったため祐雅は見回すと、警備兵が駆けつけてきた。

 五人一組での体制らしく、五人で祐雅を囲み、腰にある剣鞘を抜刀して突きつけてきた。


「お前!その剣が何か話してもらうため、同行を願う!」


 五人の内のリーダー格と思わしき男が無駄に大きな声で叫ぶ。

 周りに対しての威嚇みたいなものでもあり、知らしめでもあるのだろう。

 この街での違反行動は許さない、という。

 まあ、この男にそれをするのは……!


「邪魔だ」


 瞬間━━


 警備兵の頭が四つ、飛んだ。

 血飛沫が飛び散り、祐雅の身体を赤に濡らした。

 だが━━


「ふむ。落ちたものだな、元『勇者』」


「なっ……!?」


 祐雅は抜刀の状態のまま固まった。

 周りからの凄まじい悲鳴すらも耳に届かないほどの緊張。

 リーダー格の男の首は既に地面に落ちている。

 今、祐雅の剣を止めた男は、隅にいた目立たない男。

 そんな存在に、祐雅は見覚えがあった。


「……お前、アトミックか!」


 祐雅は叫んだ。

 そう、この男━━アトミック・レイワードは、昔の『アスファス親衛隊』の同僚である男だった。

 常に目元に深いクマがあり、敬語らしいものを使いながらも人を見下す様な態度を崩さない。

 だが、アスファスに対してのみいやに敬虔な奴隷の、三十代後半の男。

 

「いかにも。ふむ、どうやらあなたは『勇者剣』の方が適正に合っていると見える。あなたは『魔王剣』をまったく使えていない。もう一度言うが……落ちているぞ?」


「ただの警備兵が、大きく出るな!」


「……ふむ」


 祐雅は叫びながら、手をパンッ!と合わせた。

 すると、両手の平から魔法陣の様なモノが掲載され、どんどんと大きく広がっていった。


「死ね!式神展開『魔王城』!」


「ふむ。『剣』は式神を内包しているのか」


 二人のそんな声だけ残し、『世界』が二人を包んだ。

 周りの人々は、ただ呆然とその光景を見ている事しか出来なかった。

 

「……」


 ただ、一人の少女を除いて━━


 *


「ふむ。ここが『魔王城』か。なかなかに趣がある」


「……やっぱお前は『顕現』の方が得意なんだな」


 深い闇夜に包まれた闇の館の中で、祐雅とアトミックは召喚された。

 相変わらず祐雅の手には『魔王剣』が握られているが、この『世界』に来たことにより真の能力が解放されていた。

 その真の能力とは、『カミノミワザ』。

 そう、なんと『魔王剣』にも『勇者剣』にも『カミノミワザ』が内包されているのだ。

 その『カミノミワザ』とは『魔王剣(デス・クラクション)』。

 『魔王剣』を、完全にする能力だ。

 

「そうだ。式神顕現『断罪人』」


 アトミックが手をかざしながら言うと、二体の人形の様なモノが現れた。

 顔がない、藁で編まれたような人形二体はその両手に巨大なハサミを握っている。

 

「……気味が悪い『式神』だな」


「ああ、この『式神』で私はもう五人は『式神』使いを殺している」


「あっそ。キョウミネーな!」


 そう言いながら祐雅はアトミックに切り掛かった。

 だが、アトミックは動じず、静かに呟く。


「『視線界』」


 アトミックはそう言いながら、そっと目を閉じた。

 そして、消えた。

 

「……は?」


 そう、消えたのだ。

 今この『世界』の神である海野維祐雅でさえも感知できない。

 文字通り、この『世界』から消えたのだ。


「アスファス様は貴様が裏切る可能性を考慮し、一部の情報しか与えなかった。そしてその例外が、私だ」


 アトミックの声だけが聞こえるが、やはり当の本人の姿は見えない。

 アトミック自体も祐雅に干渉出来ないのか、二体の人形型の『式神』である『断罪人』が祐雅を襲ってくる。


「ちっ!やっぱあいつ嫌いだわ!俺たちをコマとしか見ちゃいねぇ!」


 そう言いながら、祐雅は『断罪人』を『式神展開』の力で強化された『魔王剣』を斬った。

 が……!


「ッ!?」


 『断罪人』は見事『魔王剣』を右手の巨大なハサミで受け流し、左手のハサミで切りつけてきた。

 祐雅は受け止めようとしたが、反対方向から二体目の『断罪人』が二本のハサミで切り掛かってきたためそれを断念し、『魔王剣』で受け止めた。

 そのため始めに切り掛かってきた『断罪人』の右手のハサミが祐雅を切り刻んだ。

 

「う、っそ、だろ……?」


 祐雅の『魔王剣』を保持している状態の『式神展開』、『魔王城』は、主にバフ効果に特化している。

 効果の対象はほぼ全て『魔王剣』に注がれているが、もちろん使用者にもそれなりに与えられている。

 そのため、祐雅はハサミで切り刻まれようと大量出血ほどで済んだはずなのだ。


 そのはずが……左腕が、切断された。


「クソッ!」


 悪態を吐きながらも必死に『魔王剣』をなぎ払い、『断罪人』二体の胴体を纏めて一気に切断した。

 が、上半身の切り口と下半身の切り口から糸の様なモノが出てき、やがて繋がると再生して切り掛かってきた。


「不死身かよっ……!」


 また祐雅は『断罪人』二体と斬り合うが、やはり無駄だった。

 何度斬っても再生し、切りかかってくる。

 それに加え、『断罪人』の保有者であるアトミックも姿を現さず、終わりがない。


 完全に、詰みだ。


「……っ!お前、アスファスの隠し札だったりするだろ?」


「……ふむ。貴様が言う通りだ。よく分かったな」


 聞こえた声の方向さえ分からない不気味な感覚がする声でアトミックは言う。

 だが、正直過ぎるアトミックに祐雅は違和感を覚えた。


「もう貴様は死ぬからな。それくらい別に構わない。もう既に『勇者』も決まっているため、『魔王剣』保持者の貴様には価値が一切ない。悪く思うな」


 アトミックはそう言いながらも、未だ姿を現さず、不死身の人形である『断罪人』によって祐雅を切り刻む。

 『断罪人』はそれほど強くはない。

 だが不死身の上二体、それに加えいつアトミック自身も攻撃に参加するか分からない極限の緊張の中、自身の『式神』の『核』をも守らなければならない。

 『式神展開』の『核』というのは『式神』の何処かに隠されているモノである。

 その『核』を破壊されれば、『式神』所有者の身体の自由が奪われてしまうのだ。

 『式神顕現』は『式神展開』の中でのみしか『顕現』することが出来ないからこそ、相手の『式神展開』の解除の妨害をする事が出来る。

 

 そのため、祐雅は完全に八方塞がりであった。


 だから、手段を選ぶことが出来ない。


「しゃーなし、か」


 祐雅はそう呟いた後、深呼吸をし、叫んだ。


「『魔化』『炭界』『結界』『凌駕』…… 『alzv()』!」


「ふむ……正直、驚いたぞ」


 祐雅は、己が持つバフ系統の『超能力』を全て叫び、使用した。




 祐雅とアトミックが、激突する。





久しぶりの祐雅くんです!いやー最初に登場した時の敬語が懐かしいですね。なんだかんだ言って祐雅くんが一番のお気に入りだったりします。そして今回はやっと『alzv』を出す事が出来ました!神のメモ②で紹介してからボツ設定となりつつありましたがなんとか持ってきました!次話もかなり遅くなるでしょうがこれからも頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ