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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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85話(神サイド) 超能力者同士の戦い①


「『魔眼』!『電眼』!」


「『炎華』!」


 太刀花創弥が右目に『魔眼』左目に『電眼』を展開し、アリウスクラウン・カシャ・ミラーが『炎華』を放つ。

 創弥の『魔眼』は対象に己の『能力』を刻ませる『超能力』であり、『電眼』は対象に向けて目から電撃を撃つ『超能力』である。

 そして、アリウスクラウンの『炎華』は、己の身の周りに炎を纏い、自在に操るというものだ。

 そう、それこそが、今回、アスファスがアリウスクラウンにこの場を頼んだ理由だ。

 己の周りの炎を操る──つまり、アリアスクラウンに『爆破』は効かない!


「『爆破』!」


 すると、創弥とアリウスクラウンの能力が、大爆発によって掻き消された。

 もくもくと煙が辺りに発生し、その煙の中から男が歩いてくる。

 たった今、この爆発を起こした張本人である、七録要だ。

 要はハイライトを消した目で二人を睨みながら、叫ぶ。


「だから、アスファスは敵だ!確証を持ってなくてすまないが、取り敢えず手を引いてくれ!……頼む!」


 要は切羽詰まったように言う。

 なにせ、要の『爆破者』は、ロクに手加減が出来ないのだ。

 殺しかねない。


「ごめんなさいね、要。私たちは、()()()()でアスファスに協力してるの。……狂弥を殺すためにね」


「ああ!俺も同じだぞ要!だから、悪魔側になったあの元『勇者』もこれから殺すつもりだ!分かったなら戦え!俺はお前と全力で戦いたい!」


 要の懇願を、二人は拒絶した。

 しかも、創弥の方は仲間であった元『勇者』である海野維祐雅を殺すと言い出した。

 要は確信する。


 ……アスファスにとって、(俺達)は駒でしかないと……!


 要は知っている。

 強い者の協力を得るため、今までアスファスが何をやってきたか。

 そう、いわゆる戦う対象を無理やり作る、という事だ。

 アリウスクラウンにとっては、要の知るよしもない狂弥という人物。

 創弥にとっては、アルドノイズ。

 要は創弥がアルドノイズを殺すと誓っている理由を知っている。

 アスファスが、アルドノイズとの戦闘を誘導し、創弥の知人を巻き込み、結果的に皆殺しにしたからだ。

 アルドノイズはもちろんだが……これはアスファスが殺したといっても過言ではないだろう。

 こうやって、「アルドノイズの敵」を集め、構成されたのがアスファスサイドだ。


「……反吐が出る」


「「……!?」」


 そう言い、要は辺り一面を『爆破』した。

 退散するのだ。

 別に勝てないという訳でもない。

 ただ……アスファスに無理やり戦う運命にされたこの二人を、要は殺したくなかっただけだ。

 辺りに土煙が舞い、視覚が制限されている。

 今なら、要自身が巻き込まれない程下の地面の中で『爆破』する事により、勢いで吹っ飛ばされる事が出来る。

 地面に落下する直前でそれを繰り返していく事により、凄まじいスピードで駆けることが出来る。

 これは要の戦闘スタイルでもあるのだ。

 だから、要はそれを行った。

 

 バゴン!


 耳を痛める程の音量と共に、地面が爆ぜる。

 

「要!どこだ!早く出てこい!」


「はいはい。()()()()()()これで終わりでしょ?今からはアイツの出番よ」


 要か天に向かって跳躍する瞬間、そんな会話が聞こえたが、要は構わず飛んだ。

 どんどんと空の上まで登り、落ちるところで己の真後ろに『爆破』。

 そして、凄まじい勢いで、璃子や幸太郎のいる場所へ戻ろうとした時ーー


「……は?」


 要は、思わず間抜けな顔をしていた。

 だってそうだ。

 

 ーー目の前に、幸太郎がいるのだからーー!


「戻るぞ。要」


 幸太郎も跳躍しているだけなのか、少しずつ落下していっていると確認した瞬間。


「『身体者』」


「かぁっーーーーーーーーー!?」


 幸太郎から、回し蹴りをくらった。

 それも、ただの回し蹴りではない。

 『超能力者』である七音字幸太郎の、『身体者』の回し蹴りである。

 要は咄嗟に幸太郎に右手で抑えようとしたが、それだけでは足りないと直前に察し、己の右手を自ら『爆破』した。

 それのおかげか、幸太郎の足の起動は逸れ、威力は軽減された回し蹴りが腹に直撃したのだが……。


 それでも、要を彼方まで吹っ飛ばす威力を持っていた。


「つぅぅぅぅぅぅ!『爆破』ぁ!」


 要は地面に直撃する直前に、さっきのように地面の中を爆破し、己をも少し吹き飛ばせると同時に落下速度を殺し、地面にバウンドして着地する。

 

「はぁー、はぁー、はぁー。がはっ……」


 満身創痍な要はフラフラと立ち上がり、荒い呼吸の後に口から何か込み上げてき、吐き出した。

 

 どす黒い血だった。


「よう、要。今ぶりだな!」


「あんた、手酷くやられたわねー。てうわ!血、黒……。内臓ヤバイんじゃない?」


 すると、畳み掛けるようにさっきの二人が要の元へやってきた。


 (おい……これ、ガチで死ぬパターンじゃね……?」


 要は片頬を引きつらせながら、そう思った。

 だが、やられっぱなしは性に合わない要である。

 もう立っていられるのもやっとな程ボロボロだが、無理やり立ち、聞く。


「……幸太も、アスファス側なのか?」


「そうだ。要」


 しかし、答えたのは別の人物だった。

 そう、七音字幸太郎本人であった。


「でも、安心しろ。俺もアスファスが本当はヤバイって事は承知している。その上で、協力しているんだ」


 幸太郎は要に向かって少しずつ歩きながら、続ける。

 もう、距離は十五メートル程だ。


「……そうか。じゃあ、璃子はどうした?」


「殺そうとしたんだけどな、逃げられた。まぁかなり手酷くやったから今もう死んでんじゃね?」


「……」


 幸太郎の挑発に対し、要は静かに頷いた。

 別に、怒っている訳でもない。

 ただ、自分ではなく、なぜアスファス側に幸太郎は付こうと思ったのか。

 それだけが知りたかった。


「言っても、意味ねぇじゃんよ?」


 要が思考の渦にはまっていると、もう目の前に幸太郎が立っていた。

 幸太郎は要の頭に手を置くと、要が聞こうとしてた質問を察し、事前に拒絶した。

 そして、言う。


「今から頭を握り潰される覚悟は?」


「……出来てねぇよ?」


 幸太郎の質問に、要は少しずつ頭を上げ、目が合うと共に笑いながら言った。

 そんな要に不信感を覚える幸太郎だが、聞いたのにも関わらず「お前の意見は聞いてない」と呟くと、己の手に力を込めた。


 『身体者』、と、言いながらーー!


 『身体者』とは、『身体能力上昇』の上位互換ーー否、『者』級と成ったものである。

 人類の約六割が持って産まれるという『身体能力上昇』は、基本的に四つに分類される。


 『身体能力上昇・下』。


 『身体能力上昇・中』。


 『身体能力上昇・上』。


 そして、『身体能力上昇・特大』。


 一般的にこの四つに分類されてはいるが、実際に『上』はおろか、『特大』の所有者を見た事のあるものはそうそういないだろう。

 なにせ、人類が持つ六割の『身体能力上昇』は『下』であり、運が良ければ『中』といったところだ。

 『上』クラスとなると、簡単にスポーツ選手や体操選手になれるのは当然といったところであり、本気を出せば残像を残せるくらい『速く』、速くなれる。

 ……そのため、『特大』所有者は、異次元の身体能力者となる。

 だが、産まれて持つ者は全く居ない。

 ……()()()()()()()だが。

 そう、なにせ『者』と成ればなんと『身体能力上昇・特大』がセットに付いてくるのである。

 そのため……いや、それも併せるため、『超能力者』は人間を軽く凌駕する。

 そんな『身体能力上昇』と『超能力者』を、併せ持つ者がいる。

 

 それが、七音字幸太郎だ。


 持って産まれた『身体能力上昇・上』が、『身体者』と成れた者だ。

 もちろん、『特大』を軽く超え、人間が出せる……否、人類が作り出せるスピードを超えている。


 そんな幸太郎に、『身体能力上昇』は、更に力を与えた。


 そう、『超能力者』特典である、『身体能力上昇・特大』だ。


「幸太あああああああああああああ!」


 『身体能力上昇・特大』と『身体者』を併せ持つ人間の完全体に向けて、『爆破者』七録要は叫んだ。


 

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