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超能力という名の呪い  作者: ノーム
五章 封印前夜・後編
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84話(神サイド) 始祖の悪魔との戦い②


「なっ……雫!?」


 セバスにより、快が『蘇生』不可能の死神の『鎌』によって斬られる直前。

 雫は快の『式神』への侵入を果たし、この『世界』へ来た……瞬間に快が死にそうだったので、『金剛』を使い代わりに己が『鎌』を受けた。

 

 ーー辺りに静かさが漂うーー


 そう、なにせ。


「俺の『金剛』は身体のどこか一部分を最強の『盾』とする能力だ!」


 羽島雫の『超能力』は『金剛』という、対象に一度だけ『絶対』の防御を施す事が出来るものだ。

 そのため、例え一撃必殺である『死神』の『鎌』が直撃したとしても、効果はなくなるのである。

 ……だが、一見完璧に見えるこの『金剛』には、欠点がある。

 それは、簡単に述べると『ラグ』である。

 言葉そのままの意味であり、一度『金剛』を使用すると、次同じ対象に発動出来るのは五分後である。


「大丈夫か?快!」


 雫は吹っ飛びつつも回転を以って勢いを殺し、快の隣にスタッと綺麗に着地した。

 それと同時に快にも『金剛』を付与し、快に安否を尋ねた。


「……ああ、お陰様でな」


 それに対し快は尻もちをついた状態からフラフラと立ち上がり、安堵のため息を吐いた。

 絶望的な状況から助かったため、思考がフリーズして固まっていた快だが、すぐにそんな事をしている場合ではないと頭を振り目の前を見つめた。

 

 ーーそこには、『始祖』の悪魔、又元『神』の一柱であるアルドノイズの幹部、セバス・ブレスレットが佇んでいたーー!


 セバスはいきなりの雫に少しばかり驚いていたが、面白がる様に含み笑いをした。


「……今のはベストタイミングだったな。なあ、雫?」


「……No.3(セバス)か。こりゃあまずいな」


 セバスの面白がる様な問いに対し、雫は片頬を引きずらせながら応答した。

 何を隠そう雫は、昔『本気』のセバスにより瀕死の状態まで追い込まれた事があるのだ。

 

「もう『ワザと』負ける戦いは終わりにしたのか?マゾさんよ」


「……しばらく姿を隠す必要があったからな。そのためお前たちの組織の『パス』の中に潜っている方が都合が良かった。だが……もう、時は来た」


 そういった後、一瞬で雫の首元へ『鎌』を遣った。

 ……が、それを快がすぐさま察知し、雫と同じように己の身体を盾とするため滑り込んだ。

 快は先程『金剛』を付与してもらったため、どんな致命傷でも一回だけ無かった事とされるからである。

 だが、そんな快の行動をセバスは見透かしていたのか、不意に『鎌』の軌道を変えた。

 正確には、雫の首元を狙った『鎌』の先が、勢いをそのままに矛先を回転させ、快に向かって『鎌』の先を向けた。

 

「っーーー!」


「ぐぁっ……!」


 『鎌』の一撃をモロに受けた快は、『金剛』でなかった事にしつつも勢いは殺さず地面にバウンドと共に叩きつけられた。

 そして雫は『鎌』の取手の部分を顔面に叩きつけられ、吹っ飛んだ。

 

「……これで証明されたはずだ」


 身体のあちこちから血を吹き出しながらフラフラと立とうとする快と雫に向かって、セバスは嘲笑うかのようにそう言った。


「人間が神に抗おうとするのは、ただの傲慢だ」


 *


「エラメスはもうここにいないからな。手を出したくても出せん。だから、ただただ、下っ端共を潰す」


「……はあ」


 『神仰教』の総本山である『アスファス教会』にて。

 新野凪とニューマンは教会前の扉の前に佇んでいた。

 ニューマンは凪の話をなんとなく聞きながら、父親の事について考えていた。

 実際、ニューマンの実の父であるエラメス・バースト・エーデンについての事は全然覚えていない。

 なにせエラメスはニューマンが産まれると共に家を出ていったのである。

 確かに母であるカリシャは毎日の生活費やニューマンが欲しいと言った物を買うために遅くまで働いていた事もあり、エラメスには怒りしか湧いてこないのだが……それを抜くと、ほんとに何でもない。

 そう、何でもないのだ。

 会った記憶もなければ、話した事もない。

 ニューマンがエラメスの顔を覚えていないのと同様に、おそらくエラメスも成長したニューマンの顔など分からないだろう。

 ……まあ、赤ん坊の頃のニューマンの顔を覚えているかすら定かではないが。


「……はぁ」


 ニューマンはそこまで思考すると、なんとなくため息を吐いた。


「じゃあ、さっさとやりますか……って。というか今更なんですがなんで僕も連れてきたんですか?蹂躙するのなら一人の方が良いのでは?僕弱いですよ?」


 ニューマンは改めて根本的な事を問う。

 ニューマンは凪に何も分からないまま話を進められてここにきたのである。

 理由くらい聞かせてほしい。


「なんでって……。そりゃあ、『神仰教』の奴らが心良く『扉』を開いてくれるからに決まってんだろ?」


「……は?」


 ニューマンの問いに、凪は当たり前の事を言うように言った。

 凪の言う『扉』とは、『神仰教』が神仰教たりえる理由の一つでもある。

 『扉』は『神仰教』の入り口に設置されており、なんと『神仰教』に所属する幹部クラス以上ではないと開放出来ないものだ。

 そんな『扉』を、なぜニューマンが開放出来る前提で話が進んでいるのか。

 ニューマンは再度はあとため息を吐くと、重い口を開いた。


「あの……すみませんですが、僕、『神仰教』に入会すらしてないんですけど」


「は?バカ言え。してるぞ。まあ、どうせお前が知らない内にだろうが」


「……はい?」


 凪はそう言うと共にニューマンの腕を引っ張り駆け出した。

 迫る『扉』。

 凪は無理やりニューマンの腕を上に持ち上げ、『扉』に手を触れさせーー


「開いた!?」


「言ったろ。お前『神仰教』に入会しているどころか幹部クラスだぞ。入れない訳がない」


 走る勢いをそのまま、凪は『扉』を足で蹴って盛大な音と共に開ける。

 ニューマンはたった今衝撃の事実を伝えられた気がしたが、質問する時間はなく、とにかく走り抜ける。

 バン!と耳に痛い音は、神の間という場所にいる神仰教信者達が一斉に振り返る。

 そんな驚きを露わにした信者達に、向けて、凪は呟く。


「『流水群』!」


 凪がそう言った瞬間。


「なっ……!」


 ニューマンは思わず凪に掴まれていない方の手で口を塞いだ。

 なぜか。

 

 ーー凪の『流水群』によって、百名近くいた信者達の首が、全員見事になくなったからであるーー

 

「な、凪さん!これはさすがに……!」


「……お前の言いたい事は分かる」


 ニューマンが凪に批判の目を向けると、意外にも俯いた顔で凪はそう言った。

 まるで、自分も本当はしたくなかったとでも言うように。

 だが、ニューマンにとって、そんな凪の態度が更に怒りを煽った。

 

「凪さん、自分でこの人達を殺したのに……なんでそんな悲しそうな顔するんです?じゃあ殺しをやらなければよかったじゃないですか……!なのになんで……」


「こいつらは、後に『禁忌』を犯す。だから殺した。これ以上は……聞くな」


 感情を露わにするニューマンに向かって、凪は静かに言った。

 だが、ニューマンはまだ話は終わってないと言おうとした瞬間。


「あーあー、派手にやったなぁ凪くんよ。早死にしてぇの?知らんけど」


「来たか、幹部が」


 部屋の奥から、派手な格好をした男がゆっくりと出てきた。

 歩き方から余裕が滲み出ており、ニューマンは思わず戦慄した。

 だって凪が皆殺しにした信者達の総監督でもある男である。

 強いに決まってるし、戦闘になるに決まっている……!

 

「まあ、お前らの予想通りだが……俺は強っ!?」


「『流水群』」


 幹部の男は言葉を遮断して攻撃してきた凪に対し、ギリギリで反応し、反撃する。


「『乱舞』!」


 すると、『流水群』を『乱舞』が全て飲み込んだ。

 そう、『乱舞』とは、相手の遠距離系の『超能力』を、完全消滅させるという能力なのだ。

 なので、遠距離系である『流水群』も敵ではない。

 それに加え、近距離戦でも相手にぶつけ、妨害しながら得物でトドメという戦法も出来る。

 ……のだが、一見完璧に見えるこの能力には、一つ欠点がある。

 それを、凪は見逃さなかった。


「『空間圧縮』」


 そう、()()()()()()()()()()()()は飲み込めない、という事である。


「……ッ!」


 ニューマンのゴクンと唾を飲み込む音を聞きながら、幹部の男は虚空に消えた。

 

 ーー否、虚空に、潰されたーー

 

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