81話(神サイド) 終戦①
「……あれ?」
私は疑問の声を上げると共に、ベットから上半身を上げた。
「つっ……!」
バキバキと腰から音がなると共に激痛が腰を支配し、屈服し、再度ベットにダイブした。
悶えながらベットを転がると、更に頭に、手に、足にも激痛が走り、もう涙目になる。
そんな私は何かを含んだ様な視線を感じ、やっと辺りを見渡すと……。
「目覚めたか。セバス」
「……。……?……!あ、アルドノイズ様!?すみませんー!」
私はアルドノイズを目に映した瞬間一気に頭が冴え、取り敢えず誤った。
いきなり謝られたアルドノイズは一瞬困惑したが、取り上げず無視して呟いた。
「……まあ、無事で良かった。まさかお前の『呪い』が『アンデット』とはな。本当に、何が起こるか分からないものだ……」
アルドノイズのそんな声と共に、私ははっとした。
そういえば、なんか一回目に死んで蘇った後上空にあった、あの馬鹿みたいにでかい隕石?はなんだったのかと。
そんな事を思い出した私はその旨をアルドノイズに聞くと。
アルドノイズは訥々と語りだした。
曰く、アスファスと神ノーズが『呪い』なる『設定』を『創造』したとのこと。
曰く、あの巨大隕石はその『呪い』をインストールされ、着弾したら人類種にその『呪い』をダウンロードする様に『設定』していたとのこと。
曰くーーアルドノイズの部下であり、盟友であり、兄弟でもある存在ーーコット・スフォッファムが行方知らずだということ。
ーーそして、『呪い』という、『超能力』と似たような悪魔専用の能力を、不完全で獲得したということーー
「……」
そんな事を聞かされた私は、コットの件に心を傷ませながらも、己の行動を称賛していた。
アルドノイズを庇ったあの際、実は戸惑いを感じていたのだ。
ーーアルドノイズを庇った自分は、本当に正しいのだろうか、とーー
まあ、これからはずっとアルドノイズの味方だと決めていた私だが、さすがに神である『アスファス』サイドであるミリィに手を出すのは抵抗があった。
(……ていうか、俺自身はそこまで手を出していない、が……?)
私がそんな事を思考していると、ふいに、あの事を思い出した。
「そういえば、あの『死神』はどうなったんですか!?」
そう。
ミリィに勝ったのはセバスではなく、私の死が三回目に到達した途端、空間を歪ませながらこの世に顕現した『死神』カールデス・デスエンドだ。
完全に回復系ーー主に己のみーーの私に完全な攻撃型でもサポート型でもあるミリィに対抗するのは不可能だ。
せいぜい味方の肉壁か、敵の足止めくらいしか出来ない私にとって、一対一の戦いーー特にアスファスの部下という化け物たちとのーーは勝てる訳がない。
そんな思考を一瞬でした私に対し、アルドノイズが答える。
「『魂』の管理に戻ったよ。今回アイツが顕現したのは一日にお前が何回も死ぬからだ。……結果的に助かったが、その原因を作りだした俺やアスファスにも攻撃してくる可能性もなくはない。だから、これからは出来るだけ死なない様にし、アイツをあまり刺激しないでくれ」
アルドノイズが珍しく続けて長く喋る。
魂の管理とやらは全く分からないが、仕事に戻ったという事だろう。
そして、なによりアルドノイズからの頼み事。
私は高揚した。
なにせあのアルドノイズからの頼み事である。
アルドノイズの役に立ちたい私にとって、嬉しくない訳がない。
ぶっちゃけ超嬉しい。
だから私は「はい、分かりました!」と叫ぼうと元気よく息を吸い込みーー
「はい、『そいつは出来ねぇ相談だな』した!」
「……ま、さか……」
私が元気よく言ったはずの声は、不気味な声によって遮られ、そして掻き消された。
それに対してアルドノイズは口を引きつらせると、精一杯の声を出した。
そんなアルドノイズに対し、不気味な声ーーなぜか私の口から出たーーは。
「そう、カールデスだ。『死神』の。んじゃ、バイバイ。セバスくん?」
「……は?」
不気味な声の主ーー『死神』カールデスは、そんな事を言うと……。
「がはっ!?つぁっ!ゴフッ……!」
私の身体の中を貪る様に、攻撃してきた。
もちろん、ここに本人はおらず、セバスの中、というか口から声だけが聞こえてくるだけなのだが……。
(まてよ……中、だと!?)
私は内心絶句した。
私の『魂』を管理する『死神』は、『魂』を弄る事ぐらい容易ではないのかと。
そんな確証もない事を考えていると、『死神』が答え合わせする様に呟いた。
「セバスくんが考えている通りだと思うぞ?お前の『魂』を少々弄ってな。『俺』を住まわせる事の出来る程のスペースを作った。だから……」
『死神』は、顔は見えないながらも、さもニヤついている様な声音で、続ける。
「お前の身体は不死だが……『魂』が砕かれたら、それまでだな」
「……っ!」
私は『死神』の言葉に、飲み込まれる様に顔を歪ませながら、固く拳を握る。
今の『死神』の発言はいわば私の身体をのっとる事とどうりだ。
(……クッ!ソッ!)
そこまで思考してからは、途端に視界がボヤけてきた。
手足がふらつき、ろくに呼吸も出来なくなる。
「おい、大丈夫かセバス!?」
アルドノイズが必死に叫んでいるが、応答すら出来やしない。
だが、そんな中でも、私は思った。
思えた。
魂は、身体の中にあるのではないかと。
「あうどろいずっ!おへを……撃て!」
必死に舌を回しながら叫ぶ。
自分でも言えてない事を理解しながらも、文字通り死ぬ気で叫ぶ。
そんな私の言葉を、アルドノイズは……。
「死ぬなよ、セバス。……『バースホーシャ』」
アルドノイズは、私の胸めがけて、地獄の炎の塊を、撃った。
*
「はぁ、はぁ、はぁ……くそっ!」
アスファスやアルドノイズたちが戦っていた戦場真下であるショッピングモールなどが立ち並ぶ大通りにて。
男三人が、一対ニの構成で戦っていた。
「諦めろよ、向井宏人。お前の……お前たちの、負けだ」
「……ッ!」
味方のいない方の男ーー河合凌駕は、一人ながらも二人の男を圧倒していた。
一人は辛うじて意識を保っており、苦言も発っしているが、もう一人の方は完全に気絶している。
なによりそこには、アルドノイズと戦っていたオルグトールの死体が転がっており、その隣りにはなんとか生き残ったカミルド少年がいた。
もちろん、意識は保ってないが。
そして、その二人の男の名は。
永井快。
向井宏人。
「『アスファス親衛隊』っつーダサイ組織に身を置いてるから負けんだよ」
河合凌駕はそれだけ言うと、ジャンプし、上空へ飛んでいった。
向井宏人は、歯噛みした。
だが、なにより一つだけ不思議な事がある。
「何で、俺ら二人は殺さねぇんだよ……!」
向井宏人はそれだけ呟くと、河合凌駕がいるだろう上空を睨みつけ、快とカミルドを『神の手』により簡易治療した。




