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超能力という名の呪い  作者: ノーム
間章 呪いの生誕
84/301

78話(神サイド) セバスの過去②⓪


「……マジか」


 瞬間、空に亀裂が走ったかと思えば、凄まじいスピードで、目の前から少女が降ってきた。

 長い黒髪を全て後ろに持っていき、その端正な顔のみが凪を捉えてくる。

 そんな少女に、凪は……。


「式神構築!『蟻地獄』!」


「『旧世界』!」


 凪はバチンと両手を叩き、少女ーーダクネスは、片手を前に突き出した。

 すると、どんどん接近していく二人の背中から翼のようなナニかが生えてくる。

 

 凪は、黒色のーー


 ダクネスは、白色のーー


 翼がそれぞれ両者を覆うように成長したかと思えば、それぞれを飲み込んだ。


 *


 アルドノイズとアスファスを置いてきぼりに、凪とダクネスは姿を消した。


「……」


 アルドノイズは相変わらず人間って人間やめてきてるよなと思いながら、コットを心配していた。

 アルドノイズを庇って、一人『旧世界』に取り残されてしまったアルドノイズの半身でもあり、親友でもあるコットが、今どんな状況にあるのか。

 ダクネスが『旧世界』から出てきたのから、コットも出てこないとそれは……。


「チッ……」


 アルドノイズは舌打ちをし、頭を振って思考を中断した。

 これ以上考えても詮無い事である。

 まあ、それ以上に更に心配してきてしまうから考えたくないだけだが……。


「……」


 そんな事を思い、アスファスがまだいる事を思い出したアルドノイズは、真正面を見た。


 すると、何故かアスファスが衝撃の顔を造っていた。


 不思議に思い、なんとはなしに後ろを振り返ると……。


「こんにちは。アルドノイズ」


「ッ!?お前は……!」


 アルドノイズの視線の先には、男がいた。

 その男はアルドノイズを肩に優しく手を置きながら、ニッコリとした、穏やかな雰囲気を纏っており、一周回って不気味過ぎる。

 その男は挨拶を済ませたと同時に、アルドノイズを()()()


「……な!?」


「クソッタレぇ……!」


 アルドノイズは何が起きているのか分からないという衝撃した声を、アスファスは歯を軋ませながら、怨嗟の声を呟いた。

 なにせアルドノイズが押された部分だけ、景色が違うのだ。

 アスファスはともかく、アルドノイズはその事にも驚いた。

 だが、それだけではない。

 それだけで、片付けてはいけない。


 ーーこの男は、何も口に出していないのである。

 

 ーーこの男は、そもそもアルドノイズに気付かれる事もなく背後にいたのである。


 ーーこの男の存在に……アスファスが驚愕しているのである。


「『愚者を飲み込む神の水(リュウスイグン)』ッ!!!」


 アルドノイズはそのまま別の景色に引っ張られるように、落ちていった。

 落ちていくアルドノイズを横目に、アスファスは男に向かって全力全霊の『カミノミワザ』を放つ。

 その景色の中に落ちていく中、アルドノイズはこんな事を思う。

 

 (ああ、くそっ……!なんか知らんがまた助けられたのか……)


 そう。

 ダクネスの『旧世界』の際もコットに救われ、今回のアスファスの件についても見ず知らずの男に助けられようとしている。

 運が良いというか、タイミングが良いというか、アスファスに敵が多いというか。

 様々な人間の思考や行動によって、アルドノイズは救われている。

 そんな事を思いながら、アルドノイズも無意識に別の景色に身を預けようとしていると……。


「死んでぇ!アルドノイズゥー!」


「!?」


 急に、目の前に女が現れた。


 つい先程、コットを『式神』に連れ込んだ、アスファスの使徒……ミリィ。


 ミリィ・澤田・マタターク。


 間延びした声が特徴の、人を不快にさせる様な笑顔を顔に貼り付ける、壊れたような女。

 アルドノイズは突然の事態に目を見開きながら、片手を突き出し、ミリィに向かって『バースホーシャ』を放とうとしたが……。


 (……間に合わないっ!)


 完全に油断していた。

 今回も助けられたと思考していたのもあるが、何よりあのコットを殺す気で襲った人間が生きているとは思っていなかったのである。

 アルドノイズの半身でもあるコットは、己が死すればアルドノイズも力の大半を失うという事を理解しているため、敵対する者は殺すと決めていたのだ。

 そんなコットから逃げ切り、アルドノイズを殺そうと伺っていた少女。

 だからこその完璧なタイミングに、アルドノイズは何も出来ず、ただただ己の首にミリィの手が近づいてくるのをスローモーションに感じながら眺めていると。


「アルドノ、かはっ!?……ズ、様」


「「!?」」


 アルドノイズの前に、一人の悪魔が現れたかと思えば……首がふっとんだ。

 その悪魔は首だけになりながらも、悪魔のタフな生命力のおかげでアルドノイズを様まで付けながら最後まで呼ぶ事ができたが……死んでしまった。

 一瞬、誰が自分を庇ったか分からないアルドノイズだったが……空に落ちていく顔をチラッと見、その悪魔を思い出した。


「お、お前は……!」


 セバス・ブレスレット。


 アルドノイズをアスファスの使徒であるダクネスから命をかけて守った、初めてアルドノイズが死なせたくはないと思った元人間。

 ダクネスと話に行くと言ってから帰ってこず、アルドノイズは勝手に戦いから逃げただけだと思い込んでいた少年。

 別に、アルドノイズはそれでよかった。

 アルドノイズを守った、だけ。

 それだけで、ただそれだけで、嬉しかった。

 なにせアルドノイズの前に現れる奴は大体殺そうとしてくるのである。

 愛着ぐらい、簡単に湧いてしまう。

 だから、だからこそ。


「セバス……!」


 アルドノイズは思わず大声を出していた。

 セバスの首が切られてからまだ数秒と経っていないため、制御を失った身体がだんだんと重力に従うように落ちていこうとしているところを、アルドノイズは見つめていた。


 そんなアルドノイズを、ミリィは見ていた。

 

 ーーこういう展開は、危険だーー


 ミリィは復讐の怖さを知っているため、人が復讐の炎を燃やす瞬間を完全に熟知している。

 そのため、いつ殺せばいいのかも。

 それは……復讐するほど大切な者を失ったと確認するため、死体を見つめる瞬間。

 ここを逃すと、アルドノイズは無理やりにでもアルファブルームになる、可能性が濃厚となる。

 だから……。


「死ね」


 ミリィはただただ、呟いた。

 いつもの間延びした声ではなく、ただただ、殺すという宣言。

 だが……その宣言は実行に移される事はなかった。

 ミリィは自身の『超能力』である『移動』という、空間に穴を開け五メートル範囲の何処にでも任意で移動出来るというのに能力を有効活用し、その移動出来る範囲の中に鎌を入れ、アルドノイズの首元に『移動』させてそのまま首を掻き切ろうとしたのだが……。


「……はぁ?」


 なぜか、ミリィの相変わらず間延びした声だけが残った。

 なぜなら……ミリィの鎌を持つ手自体が、落ちていったのだ。

 

「死なせは……しない!」


 頭のない、首から血を噴出するセバスが、どこから声を発しているのか分からない声で、ミリィにそう言った。


「だから……お前を、殺す!」

 

 


はーい目標のセバスの過去①⑨で終わらす事の出来なかった者です……!なんと、まだ投稿してないだけでセバスの過去は全部書いたのですが……まあ、まだまだあります。そんなこんなで、相変わらずやけに間章が長いなぁ……と思いながら見てくれると幸いです!話は変わりますが、なんとこれから一話二千五百から三千文字程度で頑張っていく事になりました!今まで一話千文字で内容薄かったですよね……。とにかく!これまで以上に頑張っていきますので、よろしくお願いします!どうも、読者が全然いねぇくせにやけに後書きを頑張るエンジョイ作家(!?)でしたー!

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