76話(神サイド) セバスの過去①⑧
「『エンブレム』!『エンブレム』!『バースホーシャ』ァッ!」
アルドノイズは、常人なら一瞬の内にいつの間にか死んでいる程の攻撃の嵐の中、歯を食いしばりながら必死に反撃していた。
反撃と言っても、ただただ相手の攻撃を相殺しているだけであり、己の攻撃は一才相手に通っていない。
「ふっ!」
「『バースホーシャ』!」
左方面からは八角形の形をしたクリスタルが飛んでき、右方面からは『化石化』やら『氷漬け』やらの能力が付随された矢が飛んでき、真正面からはアスファスの剣が迫って来る。
それだけならいい。
それだけなら、アルドノイズはまだ対処出来る。
だが、今回は例外中の例外だ。
クリスタルの攻撃も、矢も、剣も。
一撃一撃がアスファスの加護を宿した文字通り一撃必殺の攻撃であり、一撃をモロに喰らえばもちろん大ダメージ。
しかもこの戦場は一体三だ。
一撃喰らえば、二人も黙っておらず、攻撃してくる。
だから。
だからこそ、アルドノイズは、必死に一撃一撃を対処していた。
「『流水群』!」
「『バースホーシャ』!……ッ!?」
そして、アルドノイズは毎度の如く華麗な剣舞でアルドノイズを圧倒しようとするアスファスに向かって、これもまた毎度の能力消費が非常に高い『バースホーシャ』を撃とうとしたが……突然、アスファスが『カミノミワザ』を撃ってきた。
もちろん、対等な神同士であるアルドノイズとアスファスの能力は互いに同威力であるため、お互いの『カミノミワザ』が大爆発を残して霧散する。
が、その爆発した中から、アスファスが神剣『白龍』を突き出してきた。
「ハッ!」
焦るアルドノイズに向かって、嘲る様な顔のアスファスが容赦なく剣を突こうとしてくる。
「チッ!」
それに対し、アルドノイズはその一瞬で左手を虚空にかざし、空間を歪曲させると、その左手にはいつの間にか剣が握られており、その剣を振るった。
それは、前述に述べた通り、僅か一瞬。
されど、一瞬。
アスファスはアルドノイズの胸を僅かに傷付けたが、左方面から振るわれたアルドノイズの剣によって位置がずらされ、虚空を突いた。
アルドノイズの剣ーー神剣『黒龍』。
神ノーズより授けられた正真正銘の神の剣が、再度振り上げられたアスファスの剣とぶつかり合った。
威力は互角。
されど、使い手の技量による差が、二人を分かつ。
再度述べる……アスファスの得意とする戦術は、剣舞だ。
「珍しいな、お前が黒龍を使うなんて。どちらかと言えば顕現した方がお前の戦術らしいのだが」
「殺されたら意味ないだろ……っ!『フレア』!」
アスファスと鍔迫り合いと会話をしながらも、二方から飛んでくる『死』を対象する。
……コスパが良い『エンブレム』と威力がトップクラスの『バースホーシャ』ばかり使っているので誤解されているかもしれないが……アルドノイズも神だ。
技が二つしかないなんてあり得ず、実は何十もある。
「……しぶといな、お前」
「生憎、それが取り柄だからな」
余裕の笑みを浮かべるアスファスに対し、不敵な笑みを顔に貼り付けるアルドノイズ。
その二人を囲み、ひたすら凄まじく、人間離れした威力の『超能力』を放つアスファスサイドのオルグトールとカミルド。
もちろん、アルドノイズの不敵な笑みは頑張って取り繕っているだけだ。
さっきまで堪えるのが精一杯だったのに対し、今は堪えるのが精一杯な風に見せているのに精一杯だ。
実は、かなりまずい。
もう『能力』が切れかかっており、危うい。
まあ、『アルファブルーム』に戻れば、解決する話なのだが……今は、なりたくても出来ないのである。
コット・スフォッファム。
アルドノイズの片割れである彼が、ダクネスという少女の簡易『式神』の中で戦っているからである。
今、取り敢えず現状が維持出来ていられるのは、アルドノイズですら対処する事が出来ないダクネスを抑えといてくれているからである。
アルドノイズは、ついこないだまでコットと共にアスファスの部下を対処しまくるという作業を行なっていたので、戦闘員の五割は対処したと言っても過言ではない。
今も、アルドノイズの信頼出来る唯一の部下であるメタトロン・フラットカードが例の『重要要請十大人間兵器』とやらを抑えといてくれている事だろう。
アルドノイズの言うことは全然聞いてくれないが、してほしいことはいつの間にかやっといてくれている、そういう奴なのだ。
アルドノイズが必死に現状確認に脳を回転させながら剣を振って、魔法を撃っていると、突然、アスファスたちの動きが止まった。
「……?」
アルドノイズは不自然に思い、目をアスファスに向けると……。
「ア・ス・ファ・ス……化。じゃあな、アルドノイズ。お前はダクネスが俺の片割れを受け継いだと勘違いしていたようだが……バスレだ。残念だな」
「な……んだ、と……」
アスファスは、アルドノイズを嘲る様に、そう呟いた。
この言葉は、アルドノイズにとって、絶望の塊であった。
そんかアルドノイズをさらに叩きつけるように、アスファスは光に包まれ、圧倒的な『力』に、アルドノイズを震わせた。
ーー瞬間ーー
「『模倣者』……『流水群』!」
辺りに、着弾した者を『壊す』設定が施された『神水』を纏った隕石が、降ってきた。
アスファスたちに向かって。
今回の話はなんと今までで一番長いです!セバスの過去を早く終わらせるため、詰めるに詰めました!……まあ、これでも短い方なのは承知してますが。今後もこの調子でいきたいと思います!




