73話(神サイド) セバスの過去①⑤
式神、という神の使徒が存在する。
式神は天性の才能がある者に宿り、その者の人生を補佐する。
神の使徒であるがためにその力は絶大であり、主人の最高のパートナーとなる。
そんな式神には、『顕現』『具現化』と言う権能があり、言葉通りの事を主人に提供してくれる。
それと、『構築』。
これは、神の意図してない人間による式神の行使方。
それは、式神にしか出来ないまさしく神の術。
それを、ダクネスという少女が、『超能力』として、発動した。
そんな歪な『世界』で、ヒトと悪魔が向かい合っており、悪魔が叫んだ。
『アルファブルーム』とーー
*
「なっ……!?」
「あはぁ。流石に私もアルファブルームさんになってもらったら困っちゃうからね」
『超能力』が使えない『旧世界』という『超能力』の中に閉じ込められ、追い詰められているアルドノイズは、『アルファブルーム』の存在を取り戻そうと、叫んだ。
だが……。
「だから言ったでしょ?ここは過去の一部を切り離した『旧世界』。原理も理屈も『設定』も、なにかもかもが昔の世界。だから……『超能力』も、『カミノミワザ』も使えないよ?」
結果は、何も起きなかった。
未だ『カミノミワザ』は使えないし、『超能力』はもちろん、『呪い』もインストールしきれておらず、姿も変わってーーアルファブルームになってーーいなかった。
「よくもまあ、戦いの最中にペラペラと」
アルドノイズは、今出来る精一杯の余裕の表情を顔面に貼り付けながら、言った。
アルドノイズは、かれこれ一万を超えてから数えていない時を生きてきたが……こんな窮地に陥ったのは初めてであった。
正直、アルドノイズはこのダクネスという少女に勝てる法則がかんがえられない。
まあ、窮地に陥ったことはいくらかあったが……。
今回は、別格であった。
おそらく、本来の力の源である『アスファス』の力をーーアルドノイズのコット・スフォッファムの様にーーダフネス?という少女に授けたのだろう。
ダフネスかダクネスか分からないが……今はそんな事を思考している場合ではない。
なにせ今ダクネスが言った通り『超能力』も、『カミノミワザ』ですら使えない状況にある。
「何を考えているのか知らないけど……もう、詰んでるよ?」
気味悪い笑顔で、ダクネスがアルドノイズの正面に着いた。
「……っ!」
そして、衝撃する。
「なんで、お前は『超能力』を使えんだよ……!」
ダクネスの両手には、凄まじい『能力』が渦巻いていた。
ダクネスの『超能力』は『旧世界』だけではないのか?という考えが、アルドノイズを支配する。
「女の子に、秘密は付きものだよ」
ーーじゃあ、一体どんな攻撃をーー
アルドノイズが構えーー意味がないだろうがーーダクネスが笑いながらーー高揚するようにーー両手の能力を『超能力』に変換してーーアルドノイズを殺す根源ーー攻撃を放ってくる!
「じゃあ、死んで。アルドノイズさん」
「それは、させない」
ダクネスがアルドノイズを穿つ瞬間。
「コット……!?」
アルドノイズの力の源であり、アルドノイズの片割れでもあり、アルドノイズの唯一信頼できる友が、ダクネスの両手を切り刻んだ。
「つぅ……。いった。ていうか、どこから出てきたの……?コットさん」
ダクネスは両手が切り刻まれたのにも関わらず、血が止まらない手を横に振りながら、訳が分からないというポーズをとる。
「……っ」
もはや人間であるかすら疑わしいその様子に、思わずコットも身震いする。
今までミリィとーーしかも式神構築された状態でーー戦っていたのだ。
その上司的なダクネスにーーこちらも式神が構築された状態でーー勝てるはずがない。
だがーー
「今は、逃げといて、アルドノイズ。僕が、なんとかして時間を稼ぐから」
「な……するはずがないだろ!ていうか、そもそも論としてここからは出られない……。どうやら、俺たちはここま」
アルドノイズが、ここまでだったらしい、と、弱音を吐こうとしたその時、コットは両手を合わせ、離し、その両手を地面につけた。
この、儀式は。
「式神構築『魔国魁星』」
瞬間、アルドノイズは、突如地面に出現した穴によって、底へ落ちた。
「は……?」
「逃げて、勝ってよ。アスファスに」
コットは、微かに笑みを浮かべながら、落ちてゆくアルドノイズを、静かに見ていた。
またもやお久しぶりです。……いや、ちゃんと書こうとしていたんですけどね?中々この『セバスの過去』の終着点が見えずにいまして……。まあ、大丈夫です。なんとか①⑨までにはら終わらせます!……20を丸で囲っている文字がないので……。




