72話(神サイド) セバスの過去①④
ーー今、アスファスや、重要要請十大人間兵器とやらが来たら、確実に負けるーー!
アルドノイズは、幾度もそんな考えが頭の中で遮られる中、自分の力を振り絞るように、隕石を小さくしていった。
だが、隕石はまだまだ大きい。
完全に取り込まなければ、その権能を最大限酷使することができなくなってしまう。
だが、ここにいるのはアルドノイズただ一人。
先程までコット・フォッファムと共にいたが、ミリィという少女の式神の中へ吸い込まれてしまった。
だからこそ、先程から不自然なほど姿を見せないアスファスの事を考えられずにはいられなかった。
「……っ!」
地球よりも一回りほど小さくなった瞬間、アルドノイズの頭の中に、『呪い』という能力の説明が表示された。
いわゆる、『超能力』に才がなかった者により濃く強くなる、超能力と対となる、権能。
もう、これは、アスファスと対となると言っても過言ではないと思っているアルドノイズにとって、ぴったりであった。
ーーあと、少しで、この権能をこちらのサイドへ引き込めるーー!
そんな期待を膨らませながら、どんどんどんどんと隕石を小さくしていく。
そして、あと少しとなったところでーー!
「やっぱりというか、なんというか……そりゃあ、来るわな」
アルドノイズの目先にはーーつい先ほども戦った、そしてセバスという少年が会いに行った、名も知らぬ少女がいた。
「初めまして、は二回目だね、アルドノイズさん」
少女は両手を合わせ、祈るように目を閉じる。
つい先ほど蹴飛ばされたばかりなのだが……と、アルドノイズは言おうとしたが、先程とは雰囲気がかなり違っていたため、口をつぐんだ。
「私はダクネス・エクスカリバー・シェス。あなたを殺す、可愛い可愛い女の子だよ。それじゃあ、行ってみようか、『旧世界』!」
「……」
ダクネスと名乗る少女は、アルドノイズに向けて、きゃぴっ!という擬音が似合うようなポーズをした後、唱えた。
そんなふざけた少女に対し、アルドノイズは油断なく構える。
だが……絶対不可避を避けるには、いささかその構えはお粗末だったようだ。
ーー瞬間ーー
「……なっ!?」
アルドノイズは、自分の身体が、まるで自分の身体ではないかと錯覚するような、なんとも言えない謎の違和感にさらわれた。
いや、実際に何かをされた訳ではない。
なんと言うのだろうか、何かが起きたのではなく……何かが変わったかのような感覚。
そんな何かに、アルドノイズは背筋が凍るような恐怖を感じた。
まるで、世界そのものから見放されたような……!
「ここは『旧世界』。真神ノーズと造神アスファスが、人類に『超能力』を与える隕石を降らせる前の世界。時間という枠に囚われた昔の世界から呼び起こした、もう一つの世界」
「なっ……!は……?」
ダクネスは、独り言のような事をぶつぶつと呟きながら、どんどんとアルドノイズに近づいてくる。
それに対し、アルドノイズはダクネスに渾身の『バースホーシャ』を放とうとするが……。
「……冗談だろ?」
『バースホーシャ』は出ず、形成する第一段階である『能力』の源すら、感じることが出来なかった。
アルドノイズは、ダクネスの滅茶苦茶な能力に一瞬頬を引きつらせるが……。
「だが、所詮は人間だ。存在設定・改!『アルファブルーム』!」
「あはあっ……!」
アルドノイズが叫ぶと同時、ダクネスはうっとりする様に、笑った。
ダクネスは、異様に楽しげだった。
すごくお久しぶりですー!大丈夫です。超能力という名の呪いは死者と生者のスパイコンビの様に途中でいきなり終わったりしません!……多分。




