66話(神サイド) セバスの過去⑧
「ふむ……それは、どういう意味でだい?」
アスファスはダフネスの質問に驚く様に目を丸くした後、質問を質問で返してきた。
と、思ったらそのまま続けてきた。
「それは、私たちにとっての敵かい?それとも、人類にとっての敵かい?きみにしてはやけに抽象的だね」
まあ、質問に質問で返してくるのは変わりなかったが。
「どっちもよ。当たり前でしょう?私たちが戦う理由は人類を守るためだもの。必然的にそれは私たちの敵にもなりえるじゃない」
アスファスの問いに、ダフネスははっきりと言った。
なにせそれこそがこの『NoS』の存在理由にして活動目的である。
だが、この言い返しは諸刃の剣でもあった。
それはーー
「じゃあ、なぜ今までその敵とやらは悪魔だけだった?」
「……!」
そう。
ダフネスの言葉の中の、私たちの、人類の敵には、悪魔しか当てはまらなかったのである。
例え中身が元人間だったろうと、人間を襲うのなら完全な等発対象なのだ。
そんな事が頭をよぎったダフネスに対して、アスファスはまるで察したように口角を片方上げた。
「大丈夫だ、ダフネス。もう心配なんていらないさ」
アスファスは顔にいやらしい笑みを貼り付けながらそう言った。
何を根拠に、ていうか何が?とダフネスがアスファスに言い返そうとする前に、アスファスは続けた。
「今から、この世界に再度擬似特殊隕石を降らす事をシンノーズが承諾した。だから、もう、大丈夫だ」
「なっ!?」
アスファスはそれだけ言うと、くるりと方向転換し、歩いていった。
私は呆然としながらも、その背中を見つめ続けた。
「……」
やがて、去りゆくアスファスの背中ーーまあ、どこかの誰かを器にした虚像だがーーを見つめながら、何かを決意したように、喉をこくんとならして拳を握りしめると。
私は、その背に向かってーー
*
「コット、準備はいいか?」
「もちろんだ。アルドノイズ」
アルドノイズの元にアスファスが来てからおよそ半時間後。
アルドノイズは、拠点としているため制限中の式神構築『獄廻界』にて、とある人物と会っていた。
いや、人物、というには語弊がある。
なにせ、その者はーー
「僕たちの神の力と超能力に、さらに新たな力が加わるなんて、夢にも思っていなかったんだから」
コット・スフォッファム。
悪魔にして、超能力使い。
その悪魔は人間の特権である超能力を持つ者でもあり……『超能力者』、でもある。
『超能力』。
人知を超えた超能力の、上位互換とも言える、最強の、選ばれた超能力を持つ者に送られる、最強の称号。
そんな能力を、この悪魔は持っていた。
「さあ、戦争だ。アスファス……いや、アスカス、だったけか?」
アルドノイズはそう呟くと、『獄廻界』から出て行った。




