63話(神サイド) セバスの過去⑤
「あいつ、いったいどこに行ったというのだ……」
アルドノイズは、はあとため息を吐いた。
ついさっき、セバスという少年を拾い、ちょっとばかし病んでいたため、綺麗事を並べて仲間にした。
アスファスに対してこっちの陣営が少なすぎるため、多少弱くても数を増やしたいというのが本音であった。
まあ、それはともかく。
「……」
アルドノイズはなんとはなしに辺りを見回す。
床に散らばったラノベやら漫画。
掃除が行き届いていないのか、どこの上にもホコリがたまっており、ゴミ箱は捨てに行ってないのかパンパン。
というか溢れ出ている。
「……死んでなければいいのだが。少しばかり、様子を見に行くか」
そう。
およそ三十分前、突然セバスが「俺、ちょっとアルドノイズ様を吹っ飛ばしたあの常識知らずのクソ女に会ってきますね」と言ったきり帰ってこないのである。
「はあ……」
アルドノイズは再度ため息を吐くと、この部屋の扉の鍵を開けた。
セバスが心配という事もあるが、さっき思ったようにこの部屋は掃除がされていないためか臭いので、一刻も早く抜け出したかったという事もある。
そんな事を思いながら、ガチャッと扉を開けるとーー
「やあ。久しぶりだな、アルファブルーム。いや……今はアルドノイズ、だったっけか?」
「……!」
扉の前には、アスファスがいた。
*
「『NoS』……これもアルドノイズ様がさっき言っていたな」
私はふむと唸りながら、そんな事を発した。
「ところで……あんたって人間……じゃないわよね。私の攻撃くらっても死んでないもの」
目の前で未だに座っている少女ーーダフネスは、私に質問をなげかけてきた。
まあ、確かに腹にぽっかりと穴を開けた奴が、開けられた数時間後に何事もなかったかのように話していたら、そりぁ人間か疑うだろう。
「少なくとも、お前に腹を開けられる前までは普通の人間だったよ。今は、おかげさまで悪魔だけど」
「……えっ?」
私がダフネスからの質問に応えると、ダフネスは顔を驚愕に染めていた。
これは、イコール人を殺しているという事に驚いているとは、別な気がした。
「悪魔は……元、人間?」
ダフネスはそれだけ呟くと、一気に跳躍し、いつの間にか空にいたと思いきや……一瞬で消えた。
「まだ、聞いてない事たくさんあるんだが……」
私は呆然としながらも、そうぽつりと呟いた。
例えば、君の能力は何なんだ、など。
例えば、君こそ人間なのか、など。
例えば……アスファスサイドなのか、と。




