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超能力という名の呪い  作者: ノーム
四章 封印前夜・前編
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57話(神サイド) 廻る

 目まぐるしいほど、世界が回る、周る、廻る。

 吐き気を催すため、口に手を持っていきたいところだが……。

 まず、自分の口がどこだか分からない。

 というか、手を動かす事もできない。

 体の機能は失われてないが……なんというのだろうか、自分の体の動かし方を忘れた、という表現が正しいのかもしれない。


背を丸め、胎児のように黒く、暗い空間で蹲る少年、向井宏人は、一瞬のときの中、そう考え混んでいた。

 まあ、宏人自体は何時間もいたのではないかと錯覚していたが。


 それはそうだ。


 ただでさえ不定形な式神構築で、バグを起こしてしまったのだから。


 そんな空間では、自分が生きているのか、それとも死んでいるのかすらも分からない……というか、曖昧だ。

 宏人は必死に考え込む。

 何を考えるべきか考え、その浮かんだ考えを考え、また新しい考えを考える。

 それをひたすら繰りかえす。

 それは、自分がまだ生きている、という事を実感したいのでもあるが……今、自分はなぜこうなり、どんな状況かすらも分からないからだ。

 そんな思考を繰り返し、考え、考え、考え続けた先にーー地獄は開け、また新しい地獄に引き込まれた。


 その地獄の名は……式神構築『獄廻界』


 式神『地獄犬』を媒介とした、アルドノイズとその眷属のみが使役する事のできる、地獄が。


 宏人と、数名を飲み込み、戦場へと誘う。


 *


 ついこないだまで平和な日常という、高価で、幸福で、高級な日々を送っていたであろう、悪魔の死骸があっちこっちに広がっている大地を見て、とある人間は、はあとため息を吐いた。

 なにせ、さっきまで悪魔が大量にいたところには、巨大なクレーターしかなかったのである。


「『爆破者』、か……」


 要の能力であり、称号でもあるその名を呟いきながら、その人間はその人口クレーターの中を見下ろした。

 

「……」


 案の定とでもいうべきなのだろうか。

 そのクレーターは、横幅だけでも五十メートルはあるのに、深さはおよそ二十メートルほどあった。

 この横幅に対してこの深さは、恐らく一気に纏めて片付けた訳ではなく、何回も連発して仕留めていったのだろう。

 

「……さっすが、要だ」


 人間は、ため息を吐きながらも、そのクレーターを作った犯人を称賛した。

 その人間の友人……というか親友であり、よき好敵手であり……たった今から、敵となる少年に。


「でも、お前じゃ、シェスには勝てない」


 人間は、そう呟くと、要に背を向けるかのように、クレーターから後にした。


「……ごめん、な」


 人間は、小さく、小さく、そう呟いた。

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