52話(神サイド) 溜息
「あ……?宏人、お前……どうしたんだよ?」
「ん?」
俺が颯爽とカッコいい台詞を言いながら登場したら、智也は訳が分からないというように、困惑しながら聞いてきた。
……俺が、どうしたのかと。
ふと、周りを見渡すと、結構な人数がいた。
無論、俺が来てから誰一人と声を発していないが。
女性陣より特に、なぜかナンチャンとストフはガッチガチに震えていた。
まあ、こういうピンチの時ほど、凌駕に腹をぶっ刺された時の記憶が甦るからなぁ。
「質問が悪かった。お前、なんで殺気消えてんの?」
智也は頭をガリガリと掻きむしりながら俺に問う。
「あー。まあ、凌駕もそこまで悪い奴じゃないらしいしな。これから確認するけど」
「……っ!お前、……」
智也は俺の反応に戦慄した様に身を震わせた。
だが、その反応も最もだとも思う。
なにせ、智也は俺と同じく仲間を人質にとられ、半強制的にこの組織へ入隊させられたのだ。
俺は池井のお陰でこの組織の実態を見、少しずつ冷静さを取り戻しているのに対し、智也はまだ何も説明されていないのだ。
「智也、大丈夫だから、とりあえず落ち着け。まず、俺たちはお前に危害を加えようなどとは考えていないんだ」
「お前……!はあ、そっちにつくのか」
「は……?」
智也は俺の反応をどう思ったのか、落胆するように肩を竦めた。
そして、目を細めると。
「式神構築、獄か……」
「ダメ……!今したらっ!」
智也が何か気になる単語を吐こうとした瞬間、長野華という弱気そうな少女がいきなり大声を出した。
一瞬、智也は顔を歪め、どうしたものかと思考するが……。
「獄廻界」
再度、唱えた。
「「……っ!」」
その言葉に、長野と、その隣にいた永井美琴という少女も、顔を驚愕に染めていた。
式神構築。
なんか、聞いた事があるような……。
「さあ、地獄を魅せてやる」
智也がそう呟いた同時に、世界が黒くモヤのようなモノに染まっていく。
最初は視界の端にあったものが、どんどんと辺りを侵食していき、やがて俺たちを誘うように、身体を塗り潰してくる。
まるで、この部屋に居る、俺、山崎智也、北岡飛鳥、クンネル、クリストフ・ナイン、永井美琴、チャン・ナンを、地獄に堕とすように。
瞬間ー。
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!
「なっ!?」
「「「「「「……っ!?」」」」」」
突如、頭の中まで響くような、重低音の気味が悪い音が響いた。
この能力を使ったはずの智也でさえ戦慄していることから、何かしらの予想外の事態が起こったようだ。
そんな事を思考した一瞬で、掃除機をかけられたかのように、黒いモヤが吸い込まれていく。
「な……んだ?」
そうして俺たちは、黒いモヤと共にどこかに吸い込まれていった。
これ読み返してみたら……誤字脱字ひどいですね!ていうか七録要は『爆発者』から『爆破者』になっていました。……改変が多いぜ。




