51話(神サイド) 復活
池井を先頭に、俺は長い廊下を歩いている。
歩く、歩く、歩き続ける。
「いや、長すぎだろ!」
「しょうがないでしょ。ここは拠点兼戦場の役割も有しているのよ」
俺が叫ぶと、池井はため息を吐きながら応答した。
曰く、此処はもしアスファスに見つかった際、誘き出して爆破やらトラップやら仕掛ける場所らしい。
さすが地下。
なんでもアリだ。
「じゃあ『YES』の本拠地とか存在すんの?」
「ええ。まあ、私は場所、教えてもらってないけど」
「へー」
そんなたわいもない話しをしていると、どうやら廊下の終着点に着いたらしい。
目の前には、指紋認証型の、よくマンションとかで見かけるあの扉があった。
その扉に池井が手を伸ばし、指紋を認証させ、ガチャッ、という音と共に扉を開けた。
そこは、ついさっきまで俺たちが自己紹介という平和な話をしていたリビング?みたいな所だったのだが……。
案の定というかなんというか、やっぱりというべきか……。
名前は普通の、異端な少年ーー山崎智也が、殺気を撒き散らしながら部屋にいる奴らを睨んでいた。
もう今暴れだしても、おかしくない程に。
「こんなこと、分かりきっていた事だろうに……」
俺は額に手を当てながら、小さく息を吐いた。
*
「こんな事が、日常なんですか……!?」
私は思わず戦慄した。
ちょっと表現がおかしいかもしれないけど、私は思わず戦慄した。
「……」
私は横を眼球運動だけでチラッと見ると、やっぱりクンネルも思わず戦慄していた。
……別に思わず戦慄したって連呼したい訳ではない。
彼女たちは、今、こう言ったのだ。
「いたんだー」
「こういう事、偶にあるんですよね……」
と!!!
私は手をワナワナさせながら、こんな得体の知れない組織に閉じ込められているという事を再認識していると……。
「ごふっ!あ……、何があった?」
さっきまで気絶していた、というか私とクンネルが腹を破って気絶させた、ある少年が、口から血を吐き出しながら立ち上がった。
無論、もう回復は済んでおり、今すぐ身体を動かしても、なんも支障はきたさない。
だからこそ、今度こそ、本当に、心から、私は戦慄した。
「マジかぁ……」
「これは……」
「……」
みんな脂汗を垂らしながらも、臨時戦闘態勢をとる。
智也はそんな事はどうでもいいように、私たちを一瞥もせずに腰を上げると。
「今、河合凌駕は、いないのか……?」
思わず泣いてしまいそうな程怖い殺気を撒き散らしながら、私たちに聞いてきた。
「は……はいぃ」
私は上ずった声で応答した。
怖い。
怖すぎる。
いつ、何をするかわからない、そして私たちを殺せる力を持つ少年が、目の前にいる。
その事実に、腰が抜けそうだった時。
「女の子に、手ぇあげちゃダメだぜ?智也」
「……」
ついさっきどこかに行っていた宏人と瑠衣ちゃんが、扉を開けて入って来た。




