50話(神サイド) 思惑
「えと……これ、どこ?」
今、俺ーー七音字幸太郎は、高校中退以来全然使っていなかった頭を悩ませている。
それは……。
「めちゃこの地図複雑ー。アスファスとじじいはこれ見て分かれと?」
アスファスから貰った河合凌駕ーー『YES』が集結している場所が書かれている地図が、あまりにも複雑であったのだ。
そんな俺に同調したのは録七要。
苗字は六と七というあまり見た事ないものである。
なによりも七が被っているのがいただけない。
そんな事はともかく、要は俺と同じ、『超能力者』だ。
あまり知識がない人がそれを聞いても何だという話だが……。
世界に四人しかいないと謳われる最強の力を持つ存在、それが超能力者なのである。
超能力はみんな持っているのでは?と思うだろう。
だが、その超能力を持っているだけでは能力者だ。
超能力者とは、超能力を卓越した力を持つ人間にだけ与えられるーーいわば称号、みたいなものである。
「たくっ……。これだから、おれすげーちからてにいれたー!だからべんきょうしなくていいんだー!って言いながら勉強を疎かにしたバカ共は。私は分かるわよ」
「それは幸太だけじゃい!俺はちゃんと高校卒業しましたー!」
そんな俺たちに悪態を付いてきた可愛らしい童顔の少女の名は、海木璃子。
無論、彼女も超能力者である。
「要の事はどうでもいいけど……。じゃあ、頼んだ璃子」
「まかせなっさい!」
璃子は胸を叩き、親指を立てながら頼もしく応えた。
……揺れはしなかった。
「はあ……」
「要、何でため息付いてんの?」
まあ、そんな事はともかく。
こうして、俺たちはやっと歩み出した。
アスファスを倒す程の、戦力を集めるために。
*
「よろしいのですか?アスファス様」
「何がかな、エルメス」
私が『禁止者』の権能により新野……もとい録七要、海木璃子、七音字幸太郎の三名に対してのお説教をした後。
エルメスはそんな事を聞いてきた。
「もちろん、あの三人についてですが」
「裏切る可能性が高いのに、なぜあのまま逃がしたか、か?」
「ええ」
エルメスは深く肯定した。
まあ、分からなくもない。
あの三人は強力だ。
敵になるのはリスクが高い。
では、なぜ私は彼らを逃したのか。
「それは……その方が都合が良い結果になるからな」
「そうですか。では、私は心配しなくてよいですな!」
エルメスは快活に笑う。
私も思わず両頬が上がる。
「では、行くとするか」
「はい。ですが……大丈夫なのでしょうか?」
「ああ。シンノーズは、脅威だが……驚異ではない」
こうして、私たちはシンノーズへ会いに行った。
昔、『アスファス申請』をシンノーズに無断で使用した件について、お叱りを受けるために。
「本当に、くだらない」
私はボソッと呟き、エルメスと共に歩き出した。
記念すべき50話目!……向井宏人、主人公のはずだよね?全然出てきてなくね?




