44話(神サイド) vs[始祖]アルドノイズ⑨
「はあ、はあ、はあ、はあ……!はあ!?」
大技を何度も使った反動で、頭の中が真っ白になりながら、肩で必死に息をする。
ただ単に息を吸って吐くという簡単な動作のはずなのに、今はそれだけの動作のリズムが取れずに、苦労しながら。
そんな可哀想な俺が復活し、ようやく現実を確認すると……。
「隕石でも降ったんかよ……!」
「降るわけないだろ」
そんな感想を述べる凌駕に対し、凌駕の横に突っ立っていた凪は、最もな事を言う。
確かに、降ってたら進行形で生きていない。
いや、そうじゃなくて。
「じゃあこの惨状はどういう事だよ!?」
今、俺達の前には、とてつもなく大きなクレーターが出来上がっていた。
そのクレーターの中心には……。
「そして……なんでアルドノイズがボコボコにされてんの!?」
クレーターの中心には、アルドノイズがいた。
いたというか、倒れていた。
倒れていたというか、気絶していた。
なんか、こう……超能力やら呪いやらでどんぱちやった結果敗北したという感じではなく……めっちゃ殴られて失神した的な?
「俺がミンチった」
「おかしい。まずミンチったなんて言葉が存在しない事はもちろんとして……何で?」
凪は頭をポリポリ掻く。
それによって凪の頭から、大量のフケが散乱する。
ぜひ、帰ったら洗ってもらいたい。
「一回倒しただけじゃさ、人っつーのはなかなか諦めきれないわけよ」
「おうおう」
「だから、恐怖を植え付けた」
「……んー?」
凪の言葉に、ちょっと納得する自分がいる。
だが、今回はアルドノイズ退治じゃないんだ。
あくまで協力関係を結ぶために、話し合いを行うための闘いだった。
悪魔だけに。
……気が、緩んでる……?
「あっ……!」
下らない事を思った俺に、急にどっと疲労が襲ってくる。
自覚してなかったが、今、俺は相当疲れているらしい。
俺は、いきなり前のめりに倒れた。
「寝ろよ、凌駕」
「今の今まで寝てたろ……!」
「あれは寝てんじゃなくて気絶していただけだ。ていうか気絶していた時間なんてたった一分程だ。休め、寝ろ」
「くぅ……」
もう、全然凪の声が耳に聞こえなくなってきた。
人っていうのは、自覚するしないだけでもこんな違うのか……?
「後の処理と準備は俺がやっとくから。あー、ついでみたいで申し訳ないんだが、ニーラグラの件も片付いたぞ」
凪は、凌駕を落ち着かせるような声音で言う。
確かに、凌駕が今からやるべき事は膨大にあり、時間もない。
凌駕は、今から[NoS]を襲撃しなければならないのだ。
別にそれを凪がやっても構わないが、それでは凪の言う[恐怖]を、完全に植え付ける事ができない。
やはり、突然現れた人物ではなく、顔見知り以上の人物でないと、衝撃や恨みは少ない。
だからこそ、もっと完璧を考えなければ……。
「………」
「……寝てるし」
チラリと凌駕を見ると、完全に沈没していた。
まあ、当たり前だろう。
「さて。仕事仕事」
凪は、そう呟きながら、肩を回し、凌駕を引っ張りながら、別の[世界]に入って行った。




