43話(神サイド) vs[始祖]アルドノイズ⑧
……もう、無理だ。
俺の体力は、もう後10分の1程しか残っていなかった。
対してアルドノイズの方は、まだまだ底が見える気がしない。
アルドノイズももちろん疲れているが、それは精神的苦痛だろう。
アルドノイズの強さを、見誤っていた……!
「弱気になんな、川合凌駕。[龍水群]」
突然、空間に歪みが生じた。
もうかれこれ何十分も続いていたアルドノイズとの一騎打ちを中断するため、凌駕はバックステップをし、一時退却した。
瞬間。
アルドノイズに向けて、いくつもの龍の形をした水の塊が降り注いだ。
これは、アスファスの技だ。
アスファスだけが使える、奥義。
だが、そんな奥義をパクった奴がいる。
それは……。
「……凪!なんで……?」
「助太刀に来たぞ。川合凌駕」
新野凪。
能力は、[略奪者]。
*
突然空間が割れ、男が入ってき、アルドノイズに向けて[龍水群]が放たれた。
「ちいいいいいいいい!」
アルドノイズが苦痛の叫びをあげる。
そりゃあ、比喩でもなんでもない正真正銘の神の技だ。
[植樹]なんかよりも効果は絶大だろう。
おそらく、川合凌駕も[自由者]に制限を課せられていなければ、その権能で、[龍水群]を発動する事は容易だったろう。
まあ、知らないが。
「ったく!面倒事を増やしやがって!」
俺は、[魔王剣]を片手に、川合凌駕に「凪」と呼ばれた少年に向かう。
すると、少年は気付いたのか、すぐに俺に対応する。
「まずは、お前だ」
「やってみろよ!」
俺は嬉々として凪に斬りかかろうとしたが……。
凪は、グッと虚空を掴みながら。
「[空間圧縮]」
「は?」
突如、俺は押し潰された。
*
……まずいな。
[空間圧縮]は、今は亡き、力神ソクラノトスの技だ。
当時あいつは人界で暴挙を犯しており、それを人神ダストルが真神ノーズに追放し、ソクラノトスは殺戮処分された。
そのため、ソクラノトスの暴挙を知る人間は、一部の地域に多いと聞く。
おそらく、その時に凪という人間は[空間圧縮]を[略奪者]の権能で略奪したのだろう。
[略奪者]の能力が略奪だけではないところが怖いところだ。
なぜそんな事が分かるのかと聞かれると、[者]が付く能力は、その能力の進化系統のモノであるからだ。
もし、[略奪者]の能力が略奪だとしたら、その進化前の[略奪]の能力は略奪ではなくなってしまうからな。
まあ、今はどうでもいいが。
「……仕方ない、か」
「……?」
「まぁーさか……」
二人の少年が、並びながら俺に近づいてくる。
ついさっき、試しに神ノーズにアルファブルーム化を申請してみたが、案の定駄目であった。
だが、アスファス同様、呼び出しを受ける事を覚悟すれば……!
「凌駕、俺と一緒に結界はれ」
「おう、いいけど……」
凌駕達がそんな会話をしている間に。
俺は、無理やりアルファブルームの力の変換を要求する。
「造神!アルファブるぅッッッ!?」
だが……。
突然、式神構築[怨山迎合]が圧縮、破壊されると同時に、地球に戻った。
「何が起き……がはぁ!」
俺に向けて、龍が降り注いだ。
それは、比喩でもなんでもない……水色の龍が。
なぜ、間にふぉーすのかこを入れたのか……謎で仕方ないっす。




