40話(神サイド) [FORTHS]の過去⑩
「アルファブルーム様。現状報告は後にして、まずは[眼]を回収しましょう」
「えっ……生理的にそれは……」
「アルファブルームめっちゃ引いたんじゃん」
構築者が死に、少しずつ世界が崩壊していくなか、これからの事を話し合っていた。
まず、海野維祐雅がこちら側に加わった経緯を説明してもらった。
説得やら恐怖やらで支配している訳ではないというだけで、十分信頼出来る引き入れ方だ。
むしろ智也の方が信用に欠けているが。
まあ、智也がいなかったから俺は死んでいただろう。
[勇者]は、神ノーズに[神]を殺す事を正式に認められているからな。
もちろん[魔王剣]も対象のため、[勇者剣]と[魔王剣]をこちら側に引き込めた事は大きい。
まあ、そんなこんな話し合った後、いきなり智也が先程からずっと俺達を見つめている、そこら辺にめちゃくちゃある[眼]を集めないかと提案してきた。
「なぜだ?今、世界が集合しているから今すぐにでも去りたいのだが」
「まだ猶予はあります。[眼]は単体だけでも十分に役立つのに加え、この世界の創造者は創弥です。[魔王剣]でこの世界の[眼]をアンデット化させると疑似人格の創弥となります。戦力としては十分過ぎるかと」
「……なんでお前そういう事色々知ってんの???」
俺が智也に感心していると、祐雅はもっともな事を言う。
どうでもいいが海野維って苗字珍しすぎないか?
「まあ、色々あってな……。とにかく、さっさと集めよう」
智也は何か含む様な言い方をしていたが……今は時間が惜しいため質問はせず、[眼]を集めだした。
*
「これで全部だろ」
「すげー……」
「……」
祐雅が背伸びをして呟いた。
そんな祐雅に対し智也は、口をあんぐりと開けながら称賛を口にした。
……俺は言葉が出なかったが。
さすが[魔王]というべきか。
すさまじい速度で[眼]を集めだした祐雅は、十分ぐらいで、何万個もあったであろう[眼]を回収した。
「これ、何個ぐらいで創弥になんの?」
「あくまで疑似人格だから創弥本人には全くならないが……まあ、二千個から三千個ぐらいじゃね?」
「ほーう、結構作れんね。他には何ができんの?」
「他には[眼]の攻撃を投げるだけで……まあ、使い捨てだけど[攻眼]や……」
どんどん世界が崩壊していき、命令した創弥が死んだからか知らないが、ゆっくりと色々な世界が集合していくのが分かる。
そんな中、二人は談話している。
たまに気になる内容が入ってくるが、やはりまだ子供なのだろう。
たまに微笑ましい会話も混ざってくる。
そんなふうに眺めていると……。
「……っ!」
背筋に悪寒が走った。
これは、まずい……!
「今すぐに出口を創るぞ!」
「?……はい!」
「ああ、まずいな」
俺が叫ぶと、不思議そうな顔をしている智也と、俺と同様に気づいていたらしい祐雅はすぐさま「扉」の制作に取り組んだ。
これからの事を体験した俺は、知ることになる。
神は、ただ人より優れているというだけのことを。




