36話(神サイド) [FORTHS]の過去⑥
「僕は……なぜアスファスの事を胡散臭いと思っても、何も質問や真意を問たらしなかったのだろうか……?」
「アスファスには感情操作系能力がある。完全とは言わなくとも多少なら相手に自分は守るべき存在だと認識……というか洗脳でもしてんだろうな」
「そうか……許せないな。あの邪神」
[魔王剣]を祐雅に託してから小一時間後、俺は落ち着きを取り戻した祐雅と話していた。
今後の事、について。
「じゃあ、僕もアルドノイズに協力しようかな」
「様をつけろよ勇者」
「もう勇者じゃないよ。……それはともかく、君はいいのかい?[魔王剣]を僕に託して。正直に言うと、君はそこまで強くは……」
祐雅が、言葉を濁らせながらも、はっきりと言う。
曰く、お前は弱いが、強い武器を手放してもいいのか?と。
「俺はアスファスを殺したい。だけど、殺すのは別に俺じゃなくてもいい」
「……」
祐雅は黙って俺の話を聞く。
「アスファスを殺せさえすればいい。それ以上は望まない。だから、味方が必要だ。特に、神の切り札的存在でもあるお前は」
「だから、[魔王剣]を僕に持たせて無理やり仲間にしたと。確かに、君が弱体化して僕が戦力になり、アスファスの切り札の一つを消す。それが、一番アスファスにダメージを与えられると?」
「ああ。……切り札の一つ?お前は……アスファスの陣営について分かるのか!?」
智也は驚いたように祐雅に詰め寄る。
……確かに忘れていた。
そうだ、こいつは、[勇者]。
神のそばで支えていた張本人だ!
「うん……と言いたいところだけど。僕もそこまで詳しい訳じゃないんだ。アスファスは臆病なのか慎重なのか知らないけど、滅多に理由、情報、目的を教えてくれない。でも……一度だけ、僕は彼女に会った事がある」
「彼女……?」
祐雅は思い出すように上を見上げ、苦笑いする。
「自分よりも圧倒的に強い相手は、彼女くらいだよ」と呟きながら。
その時点で嫌な予感しかしないが……。
「その女の名前は、[ダクネス・シェス]。能力は、[旧世界]」
「[旧世界]!?」
俺は、聞き覚えのある能力に戦慄を覚えた。
かつて、神々は八柱いた。
一柱 力神[ソクラノトス]
二柱 器神[アルベスト]
三柱 感神[マトモテリオ]
四柱 人神[ダストル]
五柱 造神[アスファス]
六柱 知神[ニーラグラ]
七柱 魔神[アルファブルーム]
八柱 幻神[ソウマトウ]
この内、ソクラノトスは生みの親である真神[神ノーズ]に抹消されてしまう。
アルファブルームはアスファスに裏切られ始祖[アルドノイズ]になり、マトモテリオとダストルはマトモテリオがダストルを殺し、吸収し、亜神[マトモテリオトダストル]となる。
その後、魔王[バゲルゲン]に倒され、剣に納められる事となるが……。
「[旧世界]って……亜神[マトモテリオトダストル]の専用能力だろ!?」
俺は、祐雅の腰にある[魔王剣]を見ながら、嫌な予感に襲われた。




