34話(神サイド) [FORTHS]の過去⑤
「アスファス様側についていると無知無能無知蒙昧?まずはふざけるなと言いたいところだが……どういう意味だ?」
「冷静で助かるよ。流石[勇者]様だ」
人々の希望に満ちた剣と、人々の絶望に満ちた剣が交わる。
両者が一振り剣を振るうだけで、辺り一面が吹き飛び、まるで世界の砂漠化現象はこの2人が原因なのではないかと思えるほど。
互角。
互いに凄まじい威力を叩き出しているが、互いに凄まじい威力でその凄まじい威力を掻き消している。
それは、ジリ貧にも思えてしまうが……。
2人ともまだ余裕があるのか、剣を振りながら会話をしている。
「アルドノイズの悪行は知っている。だが、それはアスファス様からみたアルドノイズであり、アスファス様が言った事が全てだと思える[神仰教]ほど愚かでもない。だからこそ、アルドノイズ側についた君の見解が欲しい」
「長いねー。根っからの真面目さが漏れ出ているよ。まあ、それはともかく。やめない?」
「何をだ?」
「戦い」
そう言いながら、智也は剣との相殺の際にバックステップを踏み、離脱して両手を挙げた。
もちろん、右手には[魔王剣]を握っているが。
「……」
その様な智也を見て、しぶしぶといった感じで祐雅も剣を下す。
もちろん、右手には[勇者剣]を握っている。
そんな祐雅を智也はニヤッとした表情で見つめながら、問いかける。
「お前の知っているアルドノイズは?」
「……そうだな」
祐雅は思い出すように顎に手をあてる。
「一つ、堕ちた神族だという事。前世の名前はアルファブルーム。二つ、[超能力]を消そうとしている。三つ、アスファス様、神ノーズ様を殺そうとしている。かな?」
「少しは自分で考えたらどうだ?そんな訳ないだろ。それじゃあお前は[神仰教]の奴らとなんら変わりはない。そもそもシンノーズは封印中。殺すも何もない」
「それはそうだが……」
「本当の事を教えてやろう。アルドノイズ様は自ら悪魔へ堕ちた訳ではない。アスファスだ。アスファスがアルドノイズ様を神族から追放した。アスファスは、ただ自分が本当の[神]になりたいが為にアルドノイズ様を陥れた。カスだよ、あいつは」
「そうか……」
「まだ、信じていないな?」
祐雅は悩むように顔を歪ませる。
自分が知っているアスファスとは逆の説明をされたのだ。
どっちを信じるかと問われても……どっちも疑ってしまう。
だが、祐雅は。
「ああ。だが、まあいい。もし仮にアスファス様が乱心を起こしたなら僕が止めてやろう。君は安らかに、逝け」
「がっかりだよ」
祐雅が断った瞬間……大量の記憶が頭に流れてきた。
これは、経験した事がある。
勇者剣を手にした時も、このような記憶の海に放り出された事がある。
記憶の世界、それは則ち第10次元世界。
「……は?」
何故か、[魔王]バゲルゲンの記憶が、僕の頭の中に流れてきた。
経験則だが、僕は魔王になった。
……智也、お前そこまで強かったのかっ!?なぜ未だに作中で一勝もしてない?主人公にぶん殴られてた!?そして名前は普通!




