30話(神サイド) [FORTHS]の過去①
「あああぁぁぁぁぁぁ!」
凌駕の右手から。
凌駕の真下の地面から。
いくつもの植樹が生え、伸び、影を貫く。
その度に、影が言葉にならない悲鳴をあげる。
神の恩恵を受けた、悪魔の植樹が。
「死ねえぇぇぇぇぇぇぇ河合凌駕あぁぁぁぁぁ!」
「うぜえんだよアルドノイズぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
両者が、大声をあげながら殺し合う。
片方は無限に湧き出る植樹で。
片方は無限に繰り出す極炎で。
神の力を得た植樹が、悪魔の力を得た炎を払う。
悪魔の力を得た炎が、神の力を得た植樹を焼く。
そんな戦いの横では。
*
「なぜ、あの者はあそこまで強い?」
「……え?」
凌駕とアルドノイズが殺し合いをしている近くの林の中で、No.4と呼ばれている悪魔が、ライの首元に剣を突きつけていた。
それに対し、ライは尻もちをつきながら、凌駕とアルドノイズの戦いを見つめている。
アルドノイズは、ライの[カット]によって右腕が丸ごと切り取られ、凌駕の式神構築[死者患難]によって回復困難状態になっている。
凌駕は、右手でNo.1の眼を潰し、その状態で至近距離の暴走[破眼]を受けたため、左手が潰されて、右手を火傷している。
……この世界に来てすぐから、私はずっとこの体制をし続けている。
ライは、No.4に「動いたら、殺すぞ」と言われているため一才動いていないが、つい先程まで自分が抱いていた[死]ほど、そこまで恐れなくなくなっている。
一回、死んでいるからだろうか。
それは、何というか、嫌だな。
……生理的に。
「なんで……あっちに参加しないの?」
「私が動いたら、おそらくアルドの邪魔になるだろうからな。あなたを牽制しておいた方が、楽で疲れない」
「へー……」
アルドって呼ぶんだ。
なんか意外だな、と思った。
「植樹!」
凌駕の叫びがここまで聞こえてる。
そういえば……。
「あの、なんで……No.1は[超能力]を使っているんですか?なんか私[呪い]はカタカナとばかりに思っていたんですが……」
「もちろん、そうだよ」
「え……?」
No.4は、優しい笑みを浮かべる。
なんというか、人間らしい人だ。
見た目も、肌が赤黒くなく、剣も白色とかだったら、[勇者]と勘違いしてしまいそうなほど。
「[超能力]は書くと漢字、[呪い]はカタカナ。その見分け方で、今のところは、いいだろう」
「え、ええ……」
「だから、少し、昔話をしようか」
凌駕とアルドノイズが大音量で殺し合いをする中、そんな場所でも響く、彼の穏やかな口調が、私の耳を支配した。
No.4は、昔を懐かしむような顔つきで、ライに語った。
[FORTHS]の昔を。




