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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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287話(神サイド) 宏人vsアルドノイズ③


 アスファスの『世界』──『水天一碧』。

 それが俺の『天地万有』の後押しをし、アルドノイズの『光焰万丈』を押し返す。

 アスファスがフッと鼻で笑って俺に視線を向ける。


「危ないところだったな向井宏人。もっとも、俺はキサマが無様に殺されるサマを見たかったが……」


「なんだよ」


「いやな、今この時この瞬間だけ私とキサマの目的は合致する。なら協力するのが得策であろう」


「素直に自分一人じゃアルドノイズに勝てねぇって言えよ」


「フハハ。まだまだ随分と元気がありそうで何よりだ。さて、やるぞ」


 アスファスは悠然と、そしてゆっくりと歩を進め、俺の隣に並ぶ。

 そして、やっと俺の姿に気がついたのか。


「……キサマ……向井宏人、だよな?エラメスと戦っていた女ではなく」


「ああそうだよ。ってか今更すぎるだろ。さっき俺の名前言いながらここ来ただろ」


「いやな、それも仕方ないと思ってほしいものだ。アルドノイズがキサマで、キサマが少女なのだぞ。少々ややこし過ぎるのではないか?」


「まあ、そりゃそうだよな……ってだからこんな話してる場合じゃないだろ!」


 俺は思わず場の空気を読んでないアスファスに怒鳴る。

 アスファスが来てくれたおかげで数的には有利になった。

 状況は二対一……だが、そうは問屋が卸さない。


「いいねいいね〜。アルドノイズ、アスファスがお前らの戦い横槍入れてくるならさ、俺だって戦っていいだろ?」


 そう言って邪悪に微笑むのは当然山崎智也。


「好きにしろ」


 アルドノイズは否定せず智也の参戦を容認する。

 智也は「よっしゃ」と軽くガッツポーズをし──カミノミワザを解禁する。


「『天魔波旬』ッ!」


 すると、智也の背から二対の禍々しい翼が生える。

 その翼はドス黒い瘴気を放ち、智也自身も真っ黒な外装で覆われた──ダクネスの『天使』とはまるで正反対の悪魔。

 

 カミノミワザそのものを全身に包んだ智也を前に、笑う者が一人。


「フハハ。まったく、人間には不相応な力だな。そんなキサマに、私という神が天罰を与えてやろう──『天水分神(アメノミクマリ)』」


「「ッ──!」」


 俺とアルドノイズ、そして智也の目が見開く。

 なんとアスファスが使用したのは──カミノキョクチ。

 最高にして、絶対たる神ノーズの力。

 

 アスファスのカミノキョクチ──『天水分神』。

 それは神聖なる水の奔流。

 ありとあらゆる生命を生命の源──水で以って、死を施すカミノキョクチ。


「ゴホッ──!?」


 アスファスの『天水分神』が直撃し、智也は後方に吹っ飛ばされた。

 だが智也は焔の壁に衝突する直前になんとか地にその凶器的な鋭いツメを引っ掛けることに成功し、目を血走らせながらアルドノイズの隣に戻る。


「ハハッ!大事な翼がボロボロだぞ」


「マジで殺す。マジでな」


 アスファスの言う通り、智也の翼はもげ、ツメが裂け指からは夥しい量の血が流れていたが……段々と、ゆっくりと再生していく。

 ……こいつも回復能力を持っているのか。

 ダクネス自身が神人だったため知らなかったが、どうやら『天使』自体にも回復能力が備わっているみたいだな。

 ……だが、問題ない。


「智也。お前は場違いだ」


 俺は収束した『万里一空』を一気に智也に向けて放つ。

 アスファスみたく痛ぶる程度の威力に調整することはせず、本当に殺す威力を込めて──そんな俺のカミノキョクチを、アルドノイズが片手で掴んで衝撃を殺した。

 アルドノイズの右手が爆ぜたが、一瞬で再生する。


「向井宏人の言う通りだ。智也。お前は後方から嫌がらせ程度にカミノミワザを放ってろ。欲張れば死ぬぞ」


「……チッ。あーあーわぁーったよ。クソ。マジムカつくぜ」


 智也は悪態をつきながらアルドノイズより一歩退がる。

 ……正直、ここで智也を仕留められなかったのは痛い。

 だがアスファスという予想外の味方をつけられることができたのだ。

 俺一人でアルドノイズと決着をつけるつもりだったが……あまり高望みはするものではないな。

 しかしみんなをここに連れてこなかったことに悔いはない。

 最悪、死んでしまうからな。

 俺とアスファスだけなら、めちゃくちゃ気が楽だ。


「ハッ。私の参戦が嬉しいことは分かるが、あまりニヤけるな。気色が悪い」


「ざけんなニヤけてねーし。お前こそ俺が戦っている時に来るって……ほんと一人じゃ自身ないと言うか、俺のことが好きというか」


「フハハ……フハハハハハ!今ここで決着をつけてもいいのだぞ向井宏人ォ!」


「いいぜやってやんよ決着は俺の勝ちでついてるけどなぁアスファス!」


「「──アルドノイズをぶっ殺してからなぁ!!」」


 俺とアスファスはそう言い合い──アルドノイズに向けて戦闘態勢を取る。

 アルドノイズは──楽しげに嗤う。



「クハハ……!いいぞ来い──仕切り直しと行こうかッ!!」



 途端、周囲の爆炎の勢いがさらに増す。

 最低でもカミノミワザを持っていなければいるだけで焼き尽くされてしまいそうなほど、脅威的な煉獄の渦の中心にて。

 アルドノイズは、両手に『神剣赫龍』を生成させ──剣を神化させる。



 神剣──『赫怒龍』。



 対して俺は神剣『暗黒龍』を、アスファスは神剣『白龍』……ではなく。



 神剣──『白銀龍』。



「ったく、いつの間にンな強くなってんだよ」


「恥ずかしいことに、私はキサマやザックゲインといったニンゲンに苦戦したからな。敗北から学ばん者は愚者だろう」


 俺とアスファスは片手剣、アルドノイズは両手剣──四つの剣が、火花を散らす。


 『暗黒龍』から放たれる黒い瘴気がアルドノイズを包み込み、『白銀龍』から発せられる眩い光がアルドノイズを焼く──はずが。

 『赫怒龍』より放出される爆炎が、俺たちの異能を悉く破壊する。

 それは『魂』を焼く聖なる神の炎。

 今もっとも神ノーズに近い実力を持つ者の、憤怒の灼熱。


「……おい向井宏人。なぜアルドノイズはこうも強くなっている!?」


「お前知らないで戦ってたのかよ!?バカかよ……」


「バ、バカだと!?バカはキサマだバーカバーカ!!」


「──オイ。死にたくなければ避けることだな」


「「──ッ!?!?」」


 瞬きの間に繰り出されるアルドノイズの縦横無尽の煌めき。

 それが剣の軌跡だと分かった頃には──俺とアスファスの身体に無数の深く抉られた跡ができていた。

 ……マジかよ……!?

 これ、アルドノイズ本人からの忠告がなければかなり不味かったぞ。

 

「戦いの最中だというのにキサマが私を罵倒するからだぞ!さっさと答えろっ」


「そうだなすみませんね!簡単に言うと、凪が神ノーズの力でアルドノイズを神人にした!以上!」


「そ、そんなバカなことがあるか!それでは、それではアルドノイズは私より強いではないか!!」


「それくらいもう分かってろよ!今の見たろ今までのアルドノイズじゃないだろ!?」


 俺はアスファスと大声で叫びながらアルドノイズの剣捌きを受け流しているが……正直、めっちゃ心強い。

 アスファスの流麗な剣舞は美しいだけでなく、アルドノイズの剣を撫でるように軌道を変えるという、機能性も申し分ない。

 アルドノイズは力を全て解放したが、その分をアスファスが補ってくれている──これなら。


「『万里一空』!」


「ッ──」


 俺はアルドノイズの剣を掻い潜って、その身にカミノキョクチによる衝撃波を浴びせることに成功。

 アルドノイズのバランスが崩れ、俺とアスファスの殺気が募り──アルドノイズの両手を斬り裂く!

 宙に舞う『神剣赫怒龍』──それが、アルドノイズの両手を包み込む。


「七録カナメからは、学ぶものが多いな」


「──ッ!?クソがぁ……!」


 刹那、アルドノイズの焔の拳がアスファスの腹部を貫く。

 カナメから学んだって、じゃあアルドノイズはカナメと凪の戦いを見ていたってことか……!

 そりゃそうだ。

 なんてったって俺が死んだあとにカナメと菜緒が戦い始めたんだ、アルドノイズが解放されるのもそのタイミングだ。

 今アルドノイズがしたのは、切断された部位を異能で再現してさらに強化するという離れ業。

 肉を切り骨を断つ……とはまた違うが、アルドノイズの強力無比な一撃にアスファスが呻く。


「アスファス、今のアルドノイズの拳は『赫怒龍』だと思え!当たりどころが悪けりゃ死ぬぞ!」


「クソ……クソクソクソ!つくづくイラつく言い方だな向井宏人。だが──だが!アルドノイズ!キサマにはもっとイラついている」


 俺がアスファスを庇うようにアルドノイズの猛攻を抑えている最中。

 アスファスの気配が、変わる──

 神剣『白銀龍』を、『天水分神』が包み込み、その鋭利な剣の鋭さをさらに増す。


「本当に、私には剣が似合う」


 これが、アスファスの本気。

 アスファスの戦闘方式は純神による生来の強力な異能での攻撃ではなく、その鍛え上げられた剣技。


 アスファスの一閃が、静かに。


 アルドノイズの──俺の身体を切り刻んだ。


「……!アスファス、お前……」


 アルドノイズが驚愕に目を見開く。

 その速度は異常で、俺ですら目で見切れないほどで──それは、多分アルドノイズも同じで。



 これなら、いける……!



 勝てる。



 そう確信しながら。

 アスファスに四肢を切断されて唖然とするアルドノイズに、俺も追撃しようと飛びかかる。

 いくらアルドノイズに『森羅万象』が効かないと言っても、出力最大の『万里一空』ならおそらくどんな存在も木っ端微塵にできるはずだ。

 だから俺は、この手に己の全ての力を注ぎ込み、アルドノイズにぶっ放──




「『焔ノ海』」




 ポツリとアルドノイズが呟いたその瞬間。



 突如として出現した荒れ狂う焔の津波に、俺とアスファスは飲み込まれた。

 






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