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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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285話(神サイド) 宏人vsアルドノイズ①


 アルドノイズは、気がついた頃には既に解放されていた。

 向井宏人に封印されてから二年。

 自力で脱出を試みようと力を貯めていたが……まさか。


「このような形での復活は望んでいなかったんだがな」


 アルドノイズは、向井宏人の死体を見下しながら静かに呟く。

 正直、アルドノイズは宏人を認めていた。

 宏人はアルドノイズだけでなく、アスファスも、ダクネスさえも倒したのだ。

 アルドノイズでさえ勝つのが困難な、ダクネスを……。

 そんな男が、さらに神人打倒の栄誉を勝ち取るあと一歩のところで、ザコの不意打ちを受け死に至った。


「……クハッ。ざまぁないな」


 アルドノイズは興味なさげに遠方の上空を見上げる。

 そこでは七録菜緒と七録カナメが苛烈な戦闘を演じていた。

 

(七録カナメの勝ちだな。なんともつまらん)


アルドノイズは鼻を鳴らしてその場を立ち去ろうと踵を返す──その時。

 宏人の死体の隣にあった少女の死体が、光り輝く。

 宏人じゃないことに落胆すると同時に、死者が蘇るとは興味深い……そう観察したところ、アルドノイズは気がついた。


 今から蘇るのは名も知らぬ少女ではなく、向井宏人なのだと。


 それはアルドノイズが宏人と長期間一心同体だったからこそ分かった『魂』の共鳴。

 ……アルドノイズは、嗤う。


「クハハ……!やはり、俺の敵はお前だ、向井宏人」


 アルドノイズは手を翳し、宏人の死体を己の『魂』に改造する。

 今までみたく「閉じ込められる」『神の代姿』ではなく、「閉じ込める」『神の代姿』として。


「この身体はもう必要あるまい。もらっていくぞ」


 そうして、アルドノイズは宏人の姿と成ったのだ。

 

 ──それを、静かに見つめている人物が一人。


「何の用だ──新野凪」


「なに。悪い話ではないさ」


 菜緒とカナメが発す異能の衝撃が、アルドノイズと凪の髪を揺らした。



 * * *



 俺の強みは一撃必殺を持っていることだ。

 『変化』、今となっては『森羅万象』。

 これがあるから、俺は今まで格上相手に勝利してくることができた。

 

 ……だけど、今回は。


 長い間一心同体となっていたことに加え、もとの俺の身体を操るアルドノイズ。


 ──アルドノイズに、『森羅万象』は効かない。


 一撃必殺が、通用しない。

 ……ハッ。


 上等だ。


「ふっ──!」


 短い息を吐きつつアルドノイズに肉薄する。

 俺は今『森羅万象』と『万里一空』の二つのカミノキョクチを持っている。

 全身に『万里一空』の弾く力を、拳と足に全てを破壊する『森羅万象』の力を付与する。

 たとえアルドノイズ本体に『森羅万象』が効かずとも、その異能には有効なのだ。

 今の俺は完全無欠。

 

 ──そんな俺の拳を。


 アルドノイズは、真っ向から殴り返す。


 

「ッ──!やっぱり、お前も……!」



「クハハ!そうだ、お前だけとは思うなよ──カミノキョクチを持っているのを」


 

 * * *



「悪い話ではないだと?」


「ああ。今俺がリスクを冒してここにいる理由は、お前に頼み事をするためでな」


 アルドノイズは、宏人の顔で怪訝そうな顔で凪を見つめる。

 宏人に封印されている状態では敵わなかったが、今のアルドノイズからすれば凪は取るに足らない小物だ。

 殺そうと思えば殺せる、その程度の存在。

 だがしかし──今の身体が宏人のものだからか、アルドノイズは凪の話に興味を示した。


「言ってみろ」


 アルドノイズに促され、凪が言ったのは荒唐無稽な妄想話。

 凪が菜緒の力を奪い神人と成り、残る宏人陣営を全て殺し尽くし覚醒し──神ノーズと成る。

 その際にアルドノイズに神人の力を授けるから──アルドノイズが、純神のトップとして、新たな神ノーズの候補となってほしいと。


「……お笑いだな」


「ああ。今はな。だが俺は本気だ。この世界線は狂弥の望むままのルートを辿っている。俺が神ノーズと成るのは、確定路線だ」


「クハッ。仮にそうだとしてもだ。確か神ノーズが新たに神人を選定する際、己の口で対象に神人の称号を授けなければいけなかったはずだ。お前が神ノーズに成ったとしても、なんらかのアクシデントで俺を神人にする前に死んだら全てが崩れるだろう」


「なんらかのアクシデント……お前は本当にそんなものが存在すると思っているのか?」


 今度は凪がアルドノイズに怪訝そうな視線を向ける。

 アルドノイズたち純神は神ノーズの成れの果てだ。

 純神であるアルドノイズ自身が、その神ノーズの強大さを誰よりも知っている。


 ──殺すことは不可能。


 絶対であり、最強の存在。

 それが本物の神である、神ノーズの実態なのだ。

 だがしかし。

 生まれてしまった。


 神ノーズすらも殺しうる存在──向井宏人が。


 アルドノイズが意味深に嗤うと、凪もその真意を読み取ったのか……だがあり得ないと首を振る。


「確かに、宏人の『変化』は一撃必殺。どんな存在でも殺せる……だがそれはカミノミワザレベルまでの話だ。ただの能力如きでは、カミノキョクチには届かない」


「神ノーズの異能と言われる異能、カミノキョクチか。クハハ。意外と、奴はなるかもしれんぞ」


「……くだらないな。まさかアルドノイズ、お前が夢物語が好きだったとはな。まあいい。死人について考えることよりくだらないことはない」


 凪はため息を一つ挟み、その鋭い瞳の中にアルドノイズを写しながら。


「俺の仮定が揃った時、協力してくれるな?」


「クハハ。いいだろう」


 アルドノイズが了承すると、凪は踵を返し、菜緒とカナメの戦場は足を向けた。

 しかし一度立ち止まり。


「……さっきのアクシデントについてだが。その可能性も考慮して、最適に解決する異能も生み出しておくことにしよう」


「クク……。勝手にしろ」


 こうして、アルドノイズは凪に神人と選定され、己の力を全て結合することで──


 

 * * *



「カミノキョクチ──『迦具土神』」


 

 アルドノイズの爆炎が込められた拳が、俺の拳を爆ぜた。

 

「ッ──!」


 俺は激痛を歯を食いしばんで耐えながら、カミノキョクチを発動し続けることを止めない。

 それが功を成したのか。

 数瞬遅れて、アルドノイズの拳も砕けた。


「クハハ!なかなかやるな」


 両者ともにバックステップで後方に飛び、距離を開けた。

 ……アルドノイズのカミノキョクチ、『迦具土神』。

 さすがに俺みたくカミノキョクチを二つ持っているということはないと思うが、その一つだけで俺の二つのカミノキョクチと相殺した結果となった。

 ……いや、僅差で、負けた。


「クソ……!」


 俺は『森羅万象』で身体を完全に修復させ、アルドノイズも神人と純神の回復能力により凄まじい速度で全回復した。

 ただの拳に付与した異能のぶつけ合いでこの威力。

 まだまだ『迦具土神』の全容は見えない。

 だったら。


 真価を発揮される前に、殺す。


 俺の考えていることを察しているのか、アルドノイズが嗤う。

 そして。



 互いに自然な動作で両手を合わせて。



「「式神構築」」



 『世界』を、ぶつけ合う。




「『天地万有』!!」


「『光焰万丈』!!」




 両者の『世界』が激突し──そのまま俺とアルドノイズは互いに肉薄した。


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