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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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282話(神サイド) バトルロワイヤル③


 ニーラグラの『世界』の『奥義』──『桜花爛漫』が発動する!

 

 満開に咲き乱れる美しい花々が、その姿のまま俺の身体をゆうに超えるほど巨大化した。

 ──それは、「成長」の力。

 俺の身体に、花が咲く。


「ッ……!」


 俺は身体に咲いた花を引き裂く。

 まるでその花は自分の身体の一部だったかのように、激痛とともに散っていった。


 これがニーラグラの『世界』──『花鳥風月』……!


 存在する全てを『花』に変換する力。


 

 刹那──一気に身体の至るところに花が咲く!



 この程度で済んでいるのは俺がカミノキョクチ所有者だからだろう。

 つくづく、カミノキョクチはデタラメだ。



「へいへーい!宏人くん、死んじゃいそうになったら言ってね!」


「ハッ!こんくらいで死ぬかよ。こちとら今までもっと理不尽な奴らと戦ってきたんじゃい」



 俺はそう言い切って見栄を張るが、実際割と本当にまずい。

 今こっそりと『万里一空』を発動させてみたが……発動すると同時に『花』になって散る。

 反則だろ……。

 たった今、ニーラグラが理不尽な奴らの代表第二位となった。

 一位はもちろん凪だが。


「ふっふっふ」


 ニーラグラが悠然とこちらに歩んでくる。

 俺の『天地万有』もそうだが、カミノキョクチレベルになってくると『世界』を展開した時点で勝利は確定すると言ってもいい。

 だけど。

 それでも弱点はあるはずだ。

 俺の『天地万有』だって、一切の異能制限とはいえ、俺の『変化』のような体内発動タイプの異能は当てはまらないのだ。


 この『花』だって、どこかに抜け穴が──


 だが、無慈悲にもついにニーラグラが俺の目と鼻の先に到着した。

 抜け穴を見つける時間なんて、無かった……!


「……ははっ。まさかまさか、お前に負けるとはね……」


「しょうがないよ。宏人くんの戦闘スタイルは『森羅万象』があって初めて成り立つんでしょ?またでも?私の勝ちは勝ちだからね!大人しくしてもらうよ!」


 ふふん!とニーラグラが胸を反る。


 ……あれ、何か違和感が。


 俺はふと感じた疑念を晴らすために、ニーラグラに鎌をかけてみることにした。


「なあニーラグラ。俺は負けを意味のなかったことにしたくない。だからさ、一発、お前の自慢の風で俺を吹き飛ばしてくれないか?」


 ふと感じた疑念──それは、この『世界』、ニーラグラも異能使えないんじゃね、と。

 ありとあらゆる存在が『花』と化す『世界』だ。

 生き物だけでなく、それは異能にも影響する。

 ニーラグラがこの『世界』の主人なのだから、ニーラグラだけが例外というのは分かる。

 ……なら、ニーラグラの異能は?

 『花』に……なるのではないだろうか。


「えっ!?いや……そんな乱暴なこと、私にはできないかな……?」


 ……おや。

 リーチ、だろうか。

 もう単刀直入に言ってみるか。


「風、出して」


「出しません!」


 ビンゴ。


 俺はギュッと拳に力を込める。

 ニーラグラは目敏く俺の拳が凶器と化したのを察知し後ずさるが──遅い。


「ちょっとちょっと待って待って宏人くん!私の負け!私の負けでいいから──!」


「ニーラグラ。ぶっちゃけ、今おまえすげー邪魔なんだよ──すまんな」


 ニーラグラの溝内に、俺の拳がめり込んだ。

 完全に意識を落とすニーラグラ。



 ……なんとも言えない決着に終わった。



 * * *



 崩壊するニーラグラの『世界』から、俺はニーラグラの首根っこを掴みながら脱出した。

 そんな俺を見て、アリウスクラウンやセバスだけでなく、ダクネスまで目を見開く。

 ……まあ、ニーラグラの異能を考えればニーラグラが負ける要素なんかないもんな。

 傍から見れば、今の俺はなんらかの手段で現状この『世界』のトップレベルのニーラグラに時間をかけず勝利したと思われているのだろう。

 誰もニーラグラの自爆とは思ってない様子。

 こっちの方が都合がいいため、あえて訂正せずそう思わせておくことにしよう。


「さて、次の相手はお前らか?」


 俺は強気でアリウスクラウンとセバスを見下す。

 以前までの俺ならともかく、今の俺はカミノキョクチ所持者だ。

 二人とも最高位のカミノミワザとはいえ、カミノミワザの時点で勝利はほぼ確定している。

 カミノキョクチを持つ凪に抗えたカナメが異常だったのだ。


「……宏人」


 ニーラグラを隅に横たわらせていると、アリウスクラウンがぽつりと小さな声量で言う。


「私たちを倒した後、アルドノイズのところに行くの?」


「ああ。そして、アルドノイズを殺す。……別にアルドノイズに恨みなんてない。だけど、これは俺がやり残した役割だから。アルドノイズを、ここまで生かさせてしまったのは、俺のせいだから」


「……やり直した役割、ね。やっぱりあなた、これから死ぬつもり?」


「そうだ。今俺が生きていられるのは那種がこの身体をくれたからだ。……借り物は、返さなくちゃいけないからな」


「……そう。──なら、死ぬ気で止めるわ。いいわねセバス」


「ですね。個人的にも、今後起こりうる問題の上でも僕たちには宏人くんが必要なんですよ。ここで安易失うわけにはいきません」


「お前たちは十分強くなった。ニーラグラもいる。そしてこの世界の強者は大半が死んだ──俺がここにいる必要はない。だから、安心して死ねるんだ」


 俺の言葉を最後に──アリウスクラウンの姿が消えた。

 それは神人と成った今の俺ですら視認不可能の瞬間移動。

 『炎舞魔神』による超身体能力向上により、今のアリウスクラウンの一撃はやばいなんてもんじゃない。

 ……だが、それよりも問題なのがセバスだ。

 さすがにアリウスクラウンがいる以上『生死尺玉』はしてこないと思うが、『万華鏡』でも十分致命的だ。

 

 だからとりあえず。


「『万里一空』」


「なっ──!」


 俺は足から『万里一空』を発動させ、直接地面にぶつける。

 衝撃波は大地を駆け巡り小規模な地震が発生し、アリウスクラウンの動きが鈍った。

 その隙を見逃さず、俺は『万里一空』の弾く力で一瞬でアリウスクラウンの眼前に移動する。


「ッ!イヤらしいわね……!」


「戦闘センスがあると言ってくれ」


 咄嗟に反応したアリウスクラウンと俺の拳が激突する。

 アリウスクラウンの自前の拳法と『炎舞魔神』で極限まで強化された拳と、神人による俺の力と『万里一空』の弾く力が合わさった俺の拳。


 打ち勝ったのは──俺。


 アリウスクラウンの腕がひしゃげる。


「うッ……!」


 苦悶の表情を浮かべるアリウスクラウンに、俺は意識を刈り取る一撃を──


「お前なら、ここで邪魔してくると思っていた」


「──ははっ……!読まれてましたか」


 俺は衝撃波を後方に飛ばし、背後より迫っていたセバスの『万華鏡』を掻き消し、そのままセバスすらも吹っ飛ばす。

 やはり本家のカナメほどの威力はないな。

 

 ──次の瞬間、俺の右腕が消し飛んだ。


「マジかよ……!」


 セバスが再度放った『万華鏡』。

 カミノキョクチの『万里一空』をモロに食らったのだ。

 そのまま攻撃に転じられるわけが──


「『適応』か」


 ただの異能がカミノキョクチに通ずるなんてあり得ないが、ダメージの軽減くらいの役目は務めるのだろう。

 驚く俺の後頭部に鈍い衝撃が走る。


「まだ私も戦えるわよ!」


 アリウスクラウンが目を真っ赤に血走らせながら、俯向きに倒れた俺を追撃する。

 だが俺は衝撃波を駆使して宙に浮かび一回転──そして神人の回復能力で生やした腕の勢いを利用してアリウスクラウンに反撃した。


 アリウスクラウンの顔面に俺の拳が炸裂した──はずなのだが。

 俺が殴ったアリウスクラウンは、幻想のように揺らめいて霧散した。



「それ、私の残像と、『炎舞魔神』で生み出した陽炎よ」

 

「ッ──!」


 俺は咄嗟に後方を振り返る。

 だが、そこにアリウスクラウンの姿はない──刹那。

 周囲を警戒する俺の脊髄が、絶望的なエネルギーを感じ取った。



「──出力最大」



 ……なるほど。

 アリウスクラウンは、とっくに退散してたんだな。

 

 俺の目の前には、超破壊エネルギーを収束させて微笑むセバスの姿が。

 放つのは、もちろん。



「『生死尺玉』」

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