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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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281話(神サイド) バトルロワイヤル②


 バトルロワイヤルがスタートすると同時に、俺はセバスとエンカウントすることとなった。

 生存戦争のザックゲインといい、なぜ俺はこうも運に恵まれていないのだろうか。

 ダクネスも一人のプレイヤーとしてこのゲームに参加している今、俺には『森羅万象』がない。

 後ほどの計画もあることだし、ここでセバス相手に能力を使いたくはないな……。


「なあセバス。ここはひとまず、お互いに見逃さないか?ほら、お前参加するつもりなかったんだろ?」


「ですねぇ──棄権」


 おお、と思った。

 いくらやる気ないとはいえ、まさか開始早々リタイアするとは。

 だがこれで俺は好きなように動け──


「──と言いたいところですが、すみません。皆んなに頼まれてますので」


 クソ、戦うことは避けられないか。

 ……皆んな?


「ああ、なんか宏人くんが暴れないように、今回のゲームはみんなで宏人くんを倒そうってなってるんですよ」


「……ん?」


 ポカーンとする俺をよそに、セバスは空高く『万華鏡』を撃ち放ち、空中に巨大な花火を咲かせた。

 すると──ドドドドドドと地ならしと砂埃が……。


「おいセバス、これってどういう──」


「宏人おおおおおおお!絶対思惑通りなんかにさせないわ!」


 刹那、アリウスクラウンのバカみたいな威力の拳が頬を掠った。


「ッ!アリウスクラウン……!」


 どこから情報が漏れた……!

 ……って、奴しかあるまい。


「おいダクネス!」


「あっはははは。ごめーん。でも安心してね。私は攻撃しないでおいてあげるから」


 ダクネスはあっけらかんとそうのたまう。

 本当に、つくづく人の気を平気で逆撫でる奴だ。

 何より、ダクネスが承諾してくれなければ俺は『森羅万象』を使うことはできない。

 『万里一空』もカミノキョクチのため十分通用するが──ここにはもう一人カミノキョクチ持ちの奴がいる。


「風を操る女神──それは、このニーラグラちゃんのことよ!」


 ニーラグラが颯爽と姿を現す。

 これはもう隠し通す意味なんぞない。

 ニーラグラたちには悪いが、今回はトーナメントとやらは中止とさせてもらうとしよう。


「ああクソ!そうだよ今からお前ら全員ぶっ倒して一人でアルドノイズんとこ行ってやる!そして勝ってやる!だからお前ら全員──ボコす!」


 俺はそう叫び、『万里一空』で辺り一面に衝撃波を放つ。

 それはタダの衝撃波ではなく、カミノキョクチによる大破壊。

 アリウスクラウンやセバスは抵抗し切れず後方に飛ばされる──がしかし、二人ともカミノミワザを全開に発動させて、叫ぶ。


「やってみなさい宏人。逆に、私たちがあなたをフルボッコにしてアルドノイズを煮るなり焼くなりしてくるわ」


「ですね。まあ、アルドノイズの件については僕は不干渉ですけど」


 セバスに至ってはほぼほぼカナメのような姿に変化した状態で、二人の真っ直ぐな瞳が俺を射抜く。

 だが俺が警戒すべきは、『万里一空』を悠然と耐えて魅せたニーラグラのみ。


「ふっふっふ。宏人くん──私の強さを、教えてあげる!」


 ニーラグラはイヤらしく不敵に笑って──周囲に緑色の風を展開していく。

 それは、ニーラグラのカミノキョクチ──!


「『須佐之女』!」


「ッ……!」


 俺の『万里一空』の衝撃波とニーラグラの『須佐之女』の爆風が衝突し、互いに相殺し合う。

 やはり互角──この場合は……!


「『炎舞魔神』!」


「『万華鏡』!」


 数的に有利な方に群杯が上がる……!

 俺は強く足を地面に押し付け、再度衝撃波を発生。

 カミノキョクチによる絶対攻撃が、アリウスクラウンとセバスのカミノミワザを打ち消す。

 『森羅万象』と違って遠距離攻撃できるのが『万里一空』の強みだな。

 ……まあ、逆に『森羅万象』みたく直接攻撃しなければ効果を発動するタイプの方が少数派なのだが。

 

「二人とも!まずは私と宏人くんのタイマンでさせて!」


「いいですよー」


「えなんでよ!?」


「なにせ、今回は私の強さを見せつけるためのゲームなんだからね!」


 ニーラグラはそう言うや否や風を収束させ、一気に解き放つ。

 タイマンは俺も嬉しいが、それでもニーラグラの後に二人が控えていると思うと敗色濃厚過ぎて辛いな。

 俺は今度は打ち消すのではなく、『万里一空』の極意──風を、跳ね返す。


「んな!姑息なー!」


 『須佐之女』がニーラグラに直撃するが、ニーラグラはぷんすか怒るのみで何も手応えがない。

 これは厄介どころじゃないぞ……!


「なんでそんな何ともないんだよ!これ一応カミノキョクチなんだろ!?」


「一応は余計だよ!ふふん!なにせ、私は風を操る純神だからね。どんなに強い風だって、風の時点で私みたいなもんなんだよー!」


 俺は思わずヤケクソで怒るが、ニーラグラはどこ吹く風で胸を張る。

 衝撃波は決定打ではなく、このまま行けば異能の練度が高いニーラグラは俺が『須佐之女』を理解するより早く『万里一空』への対策を完璧にするだろう。

 だが──そうならないためにも、俺だって『万里一空』のみで戦うスタイルを確立してきた。


「ふっ──」


 俺は一つ息を吐き出して──ニーラグラの眼前に躍り出る。


「えぇ!?」


 悪いとは思いながらニーラグラの顔面に拳を叩き込む!


「ぐほぉっ……!」


 ニーラグラは鼻血を撒き散らしながら後方に吹っ飛ばされる。

 これは『万里一空』の弾く力を応用した瞬間移動だ。

 座標さえ定めてしまえば、ただでさえ最強の神人の身体能力にカミノキョクチの権能で音速を超えて移動できる。

 加えて拳にも反発する力を付与した。

 カナメの戦闘術を応用した戦い方だ。

 イヤなのが、これをセバスが見ていること。

 カナメの戦闘術を熟知するセバスが俺の戦いを見れば、確実にその穴を突く戦い方をしてくるだろう。

 とはいえ、対策できないほどの神速で翻弄してしまえばいいだけだが──


 さて、ニーラグラがタイマンの場を用意した理由は分かっている。

 それは、味方を巻き込まないため。

 相手がニーラグラだけなら、俺だって何の心配もなくできるってもんだ。


 悠然と、鬱陶しそうに前髪を払いながらニーラグラがこちらに歩んでくる。

 そして、同じタイミングで俺たちは。



「「式神構築──」」



 俺とニーラグラの両手が合わさった。

 仮にも俺は戦闘経験だけは豊富だ。

 ニーラグラ相手にも、『世界』の押し付け合いで勝つ可能性は十分に──




「あ、宏人くーん。『天地万有』の媒体は『森羅万象』だから、宏人くんは今『世界』使えないよー」




「……おい」


 ダクネスは呑気な間伸びした声でそんなことをぬかした。

 ということはつまり……ニーラグラのカミノキョクチの『世界』が、無抵抗の俺に襲い掛かる!


「おいおいおいおい──!シャレになんねぇだろ……!」



「ふっふっふっ──展開!『花鳥風月』!」



「ッ……!」


 ニーラグラの『世界』──『花鳥風月』。

 大地の全てに鮮やかな花々が咲き乱れ、流れる河が穏やかな音色を響かせる優しい世界。

 だがその実この『世界』を形作っているのはカミノキョクチなわけで……。




「奥義──『桜花爛漫』っ!」




 ニーラグラの元気で楽しそうな甲高い声に反応して──

 満開の花が、その正体を現す。

 

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