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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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280話(神サイド) バトルロワイヤル①


「ふっ……ついにこの時が来たんだね」


 更地と化した生存戦争跡地を前にして、ニーラグラが小芝居を始めた。

 そのエメラルドグリーン色の綺麗な髪をかき上げ優雅に笑う。

 中身はともかく見た目はまさに女神そのもののため様になっているのがムカつくところ。


「さあみんな、行くよ!」


 そんなテンション高めのニーラグラに対し、俺たちはと言うと──


「「「はぁ……」」」


 おっもいため息を吐いた。

 それも息ぴったりのタイミングである。

 まあ無理もない。

 なにせここは、生存戦争や最終決戦、はたまたカナメと凪の墓場でもあるのだ。

 そんな場所ではしゃげるほど心臓に毛は生えていない。


「なんで僕まで……」


 セバスはまた違う部分で憂鬱そうだが。

 楽しそうに大股で歩くニーラグラを先頭に、乗り気なダクネスとアリウスクラウン、その後ろに俺を含むやる気ない組が続く。

 

「宏人さん宏人さん」


 上機嫌なニーラグラに呆れていた俺の裾を引っ張る方に目を向けると、流音がジト目を向けてきた。


「私、皆さんが寛いでいる間に働いてましたっすよね」


「言い方に語弊があるな。俺たちが会議している間にお前は散歩してたんだろ」


「会議はともかく頼まれたお仕事を散歩って言うのはやめてもらえないっすか!?」


 流音に頼んでいたお散歩、もとい簡単に世界に矛盾がないかの調査はなにも異常はなかったらしい。

 良かったというべきなのだろうが、そうなるとなぜ生存戦争跡地だけ戦闘の被害が未だ残っているのか……まあ、深くは考えまい。

 俺たちだけじゃなく、ここは色々と因縁のある地なのだろう。


「それで?今更どうした」


「いや今更も何も進行形なんすけど──なんで私ここにいるんすか?」


「そりゃお前もバトロワに参加するからだろ」


「そりゃじゃないっすー!なんでっすか!私働いてたんすよ!免除でいいじゃないっすかぁ……!」


「諦めろ。最後ぐらい、みんなでパァーっと遊ぼうぜ」


「諦めろって……えっ、最後?最後なんすか」


 ……つい口から漏れてしまった。

 まあ、ここは流音でよかったと思うべきだろう。

 俺は那種の顔で可愛い可愛い満面の笑みを浮かべて誤魔化すことにした。


「とにかく、頑張ろうぜ」


 流音の「っすね!」という声を聞きながら、俺たちは歩みを進めた。



 * * *



「さてさて、それではバトルロワイヤルのルールを説明します!」


 生存戦争跡地の中央の更地地点にて。

 ニーラグラは楽しそうにウッキウキで昨日も聞かされたルールを説明した。


 ニーラグラ式バトルロワイヤルのルール七箇条!


 ・殺さないこと

 ・死なないこと

 ・殺そうとしないこと

 ・死のうとしないこと

 ・「棄権!」って言ったらアウト

 ・「棄権!」って言った人に何かしたらアウト

 ・生存戦争跡地から出たらアウト

 ・一人アウトさせる毎に一ポイント

 ・三ポイント獲得、または最後の二人まで生き残ったらトーナメント出場。トーナメントのルールはまた後ほど。


 簡単にまとめると死ぬな殺すな出るなトーナメントだ。

 ルールというより常識である。

 参加者は八人のことから、トーナメントとやらに進めるのは半分の四人のみ……結構多いな。


「さあて皆んな分かったかなー?」


「分かりましたけど、これ審判誰やるんですか?全員参加ですよね」


「えっ」


 セバスの指摘にノッリノリだったニーラグラが硬直する。

 こいつマジか。


「る、瑠璃ちゃんは!?」


「黒夜たちのお墓を作ってくれているそうよ。大変そうね」


 アリウスクラウンの言葉に、ニーラグラの目が回る。

 そんなニーラグラにアリウスクラウンは指を立てて提案した。


「じゃあ非戦闘員チックなクンネルや流音に審判役やってもらえばいいんじゃないかしら」


「でも、一回ぐらい皆んなで一緒に遊びたいし……」


 ニーラグラがもじもじと人差し指同士をくっつける。

 こんな上位存在たちのちょっとした戦闘を遊び、ね……。


「じゃあもうニーラグラでいいんじゃないか。戦ってるところなんてロクに見たことないし」


「だからなんだよ宏人くん!私の出番がずっとあんまりなかったからこその今回の企画なんだよ!?ここで私が優勝して有終の美を飾りたいじゃん!」


 まあこんなことだろうとは思っていたが。

 そうなると他には──と考えたところで。

 背後に突然気配が。

 ……神人の俺の感知から逃れる奴だ。

 そんな存在、そうはいない。


「……何の用だ。菱花」


「おや。共に世界を救った仲だというのに随分辛辣な態度をとるのだな、向井宏人」


 菱花──神ノーズ闇裏菱花は感情のこもっていない瞳で俺を見ながらそう言う。

 相変わらず不気味で何を考えているのか分からない奴だ。

 

「いやなに。興味深い遊びをしているのだと思ってな。審判役が足りないのだろう?私が引き受けよう」


「えっ!?いいの菱花くん!じゃあやってやって」


 ニーラグラが親しげに菱花に言う。

 やはり神ノーズは純神の擬似的な親だけあり交流があったのだろうか。

 興味があるわけではないが、ふとそう思った。

 それはそうと、突然とんでもない奴が審判役になったものである。


「一体何を考えているんだか」


 俺がそうボヤくと、菱花はチラリとこちらを一瞥して。


「向井宏人。この遊びの結末がどうなろうと私の知ったことではない。審判役としてニーラグラが言っていたルールは尊守してもらうが、もちろんそれ以外は何も口を出さないと約束しよう」


「何が言いたい」


「お前の『予定』が終わってからでいい。その後私に付き合え」


「……お前」


 神ノーズは瑠璃みたいな『読心』系統の異能でも持っているのか?

 俺はそんな意志を込めた瞳を向けるが、菱花は黙って俺を見つめるのみ。

 達観しているような、どこまでも深い深淵のような瞳で。


「そう警戒するな。お前はこの世界を救った英雄だ。借りを返そうとしたまでのことだ」


「……そうかよ。邪魔はすんなよ」


「ああ。神ノーズほど、ルールに忠実な存在はそうはいない」


 「直近破ったばかりの私に言う資格などないが」と菱花は自重気味に笑いながら俺に背を向けた。

 やはり、先日菱花が行った行為は──

 

「……」


 俺は首を振って思考を中断させる。

 今はこんな奴に構っている暇などない。

 菱花がチラリと俺を一瞥し、「それでいい」と言っているような仕草を見せつけてきたのがムカつくところだが。

 

「──じゃあ、皆んな準備はいい?」


 菱花が上空に飛んだのを確認して、ニーラグラがニッと歯を輝かせながら言う。

 ……ん?


「なあ、始めの合図で戦うのか?」


「?そんなわけないよ?」


 俺の問いに、ニーラグラが「何言ってんの」というふうに首を傾げる。

 じゃあどうするのか──俺がそう言うよりも早く。


「それではお前たち──せいぜい楽しめ」


 菱花がそう言った直後──俺たちはその場から消えた。



 * * *



「……ん?」


 気がつくと、空にいた。


「おい……」


 俺は思わずかつてないほど深いため息を吐いた。

 まさかの落下スタートである。

 これ、俺やニーラグラみたいに神性を浴びてないとスタートから大ダメージ受けるやつだろ。

 神人や純神は神性というものを浴びていて、所持している異能に限らず己の意志で飛行できるのだ。

 アリウスクラウンやセバスはともかく、流音、星哉、クンネルの三人が心配でしかない。

 そんなことを考えながら着地すると──目の前には一つの気配が。

 俺はもう一度、深いため息を吐く。



「ったく……。場所が場所といい、演出といい……嫌な記憶を思い出しちまうよ」


「あはは。そういえば、生存戦争で宏人くんってスタートからザックゲインと戦ったんでしたっけ」



 目の前には、セバスが。

 こうして、バトルロワイヤルは始まった。




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