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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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276話(神サイド) 反省会②


 凪が『ガブリエル』を使わなかった理由はなぜか。


「……!」


 そんなセバスの言葉に、俺は背筋を凍らせた。

 凪は使っていなかったが──最後の最後に、ナギが呟いていた気がしたのだ。

 あの時は世界の崩壊に動揺していてあまり気に留めていなかったが……今にして思えば、あれは間違いなく『ガブリエル』だった。

 動揺する俺を置いて、アリウスクラウンたちがそれぞれ意見を言い合う。


「使ってないのならまずそんな能力なかったってことじゃないの?」


「凪は、『ウリエル』、『ミカエル』、『ラファエル』、『スリエル』、『レミエル』、『ゼラキエル』……。この六つの異能を使っていました。完全に七大天使の名前を冠している異能です」


「確かに、七大天使の『ガブリエル』が足りないわね。確か天使ガブリエルの役割って──」



「──情報の伝達」



 アリウスクラウン、セバス、瑠璃と順に話していたところを、瑠璃の言葉を遮ってダクネスがそう言った。

 『ウリエル』は、全ての純神の力を操る権能。

 『ミカエル』は、対象に絶対的な防御壁を展開する権能。

 『ラファエル』は、どんな環境でも自由自在に植物を育成、操作できる権能。

 『スリエル』『レミエル』『ゼラキエル』は、それぞれ独立した意思を持つ式神。


 そして、情報を操る『ガブリエル』……。


「仮に情報を好きな時に好きなように好きなだけ伝達や受信できるとしても……今更警戒するようなことなんてあるのかしら」


「瑠璃さんの言う通り意味ない、あるいは手遅れかもしれませんが一応皆さんに報告しました。とはいえ凪はもう倒したので杞憂──」


「──宏人くんから話ありそうだけど〜?」


 ここでダクネスがまた人の言葉を遮る。

 ……まあ、実際そうなのだからタチが悪いが。


「あー。言い忘れてたんだけど、凪、使ってたよ。『ガブリエル』。どんな能力かは分からなかったけど」


「いや私そんなの知らないのだけれど……」


「ナギが最後の最後で俺とアリウスクラウンの目の前でバリッバリに使ってたけどな。あの時は切羽詰まってたから聞こえてないのも無理ないけど」


「……余計分からなくなってきましたね。凪の残滓とも言えるナギが死ぬ直前に攻撃系統の異能じゃない『ガブリエル』を使った……?一体何のために……」


「最後に誰かに伝えるべきことがあった、とかかしら。でも凪の仲間は今回の戦いで全員倒したはず……まず前提の『ガブリエル』が情報を操るってところから見直した方がいいかしら?」


 セバスと瑠璃が頭を抱えてぶつぶつと思考する。

 俺も皆目検討がつかない……が。

 俺は俺の隣で未だ遠慮なく菓子を頬張るダクネスに目を向けた。

 

「おいダクネス。お前絶対知ってるだろ。吐け」


「宏人くん酷くな〜い?決めつけはよくないよっ」


 ダクネスがニッコリと笑みを向けてくる。

 別に長い付き合いというわけではないのに、この笑顔の裏には大体何かあるというのはもういい加減分かっている。

 

「俺たちは一心同体なんだろ?俺に不幸があればお前だってタダじゃ済まないんだぞ」


「ん〜、確かにそうなんだけど、これに至ってはセバスくんの言う通りもう手遅れなんだよねー。今更何かしても無駄って言うか」


「そこを、どうにか教えてくれないか?別に手遅れだって構わない。不安を払拭するためにも──」



「──勘違いしてるようだけど、宏人くん。確かに、私と宏人くんは一心同体。互いの死が互いに影響し合う命の手綱同士。だからといって、別に仲間ってわけじゃないんだよ?」



「……」


「なんなら敵。命のやり取りだけはしない、敵対者。それをどうにか、忘れないでね?」


 ダクネスの否定を許さない、猫のような鋭い眼光が俺を射抜く。

 敵……か。

 実際そうだ。

 ダクネスが俺を敵視しているように、俺だってダクネスのことを殺すべき敵として見ている。

 だからこそ。



「お前こそ、そのことを忘れてるんじゃないのか」



「えっ、ちょっ……ひ、宏人くん?」


 俺はダクネスの胸ぐらを掴み上げ、『万里一空』のオーラを放ちながら真正面から視線をぶつける。


「俺は何をしてでもお前を殺そうとした男だぞ……?今更『森羅万象』のためにお前を見逃すことなんてしない」


「そ、そうかなぁ!?あと宏人くん今は男じゃなくて女──」



「それで?言うのか、言わないのか。ハッキリしろ」



「……むぅ」


 ダクネスは俺に押し負けたのかしぶしぶと両手を挙げた。

 頬を膨らませて怒っている。

 ……地味に可愛いのがこれまた余計にムカつかせてくれる。


「はいはい私の負けですー。なんでも答えますー」


 ダクネスは軽く舌打ちして偉そうに踏ん反り返った。

 また脅して態度を改めさせてもいいが、話を進めるためにも今は口を噤んでおく。


「ナギが『ガブリエル』を使って、誰に、何をしたのか教えてくれ」


「はぁ〜。さすがの私でもほんとのことは知らないからあくまで予想の範疇だよ?」


「ああ。それでも頼む。……嘘は吐くなよ?」


 俺から再び不穏なオーラが漏れ始めたからか、ダクネスは若干片頬を引き攣らせながらも笑顔で「も、もちろんだよ」と言う。

 そして「ゴホン」と咳払いをしてから。


「『ガブリエル』は情報を操る異能ってところは間違いないよー。それで何をしたかっていうのは……これを説明するにはまず、神ノーズの『権限』について説明した方がいいかもね」


「神ノーズの『権限』、ですか」


「うん。もう皆んな知ってると思うけど、神ノーズって神人と同じ存在の格の名称のことで、一つの世界に一人まで存在できる、まあいわゆるその世界の頂点のことなんだよ」


 ダクネスの言葉に捕捉すると、現在この宇宙は三つの『世界』で構成されている。

 正確に言うのならば、神ノーズが『世界』を創るからこそ、神ノーズの数だけ『世界』が存在している。

 ハーヴェスト・ウェスティが支配する第一世界『天上世界』。

 ダガルガンド・ロードスペルが支配する第三世界『地獄世界』。


 そして俺たちが今いるこの世界が、闇裏菱花が支配する第二世界『繁栄世界』。


 その『繁栄世界』で、新野凪という新しい神人が生まれてしまったから──凪は新しく『世界』を創るのではなく、菱花の『世界』を塗り替えようとした。


 それが第四世界『八紘一宇』。


 第二世界を乗っ取るための力であるために、神ノーズの中で凪だけ『世界』に世界の名を冠することはなかったのだ。

 

 それで、ダクネスの言う神ノーズの『権限』とは──


「でも世界の頂点たる神ノーズは世界に干渉できない。唯一神ゆえに、制限がかけられているの──それが『誓約』。曰く、神ノーズは如何なる場合も世界に影響を及ぼしてはならない」


「世界に影響を及ぼしてはならない……」


 影響……なら最低限の干渉だったらアリってことなのか。

 俺が生存戦争でなんとか立ち回れたのは、事前に菱花が『ルール』を教えてくれたからだ。

 あれは影響を与えてない……ことはないと思うのだが、まあ深くは考えまい。


「神ノーズの『誓約』は分かったけれど、『権限』って何かしら。……なんだか本題から遠ざかっている気がするけれど」


 瑠璃は珍しく混乱したような顔でダクネスに話を促す。

 確かに『誓約』で世界に影響を及ぼしてはならないというのに、『権限』でできることはなんなのか。

 それと、それが議題の『ガブリエル』とどう繋がってくるのか。

 凪も、神ノーズだったのだ。

 俺だけでなく、瑠璃も皆んな嫌な予感を感じているのだろう。

 

 ダクネスはそんな俺らを楽しそうに見渡し──衝撃の一言。




「神ノーズの『権限』──それは、神人の選定」




「……ははっ」


 思わず出てしまった俺の乾き笑いが響いた。



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