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超能力という名の呪い  作者: ノーム
最終章 灼熱の魔神編
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275話(神サイド) 反省会①


 ここは夢の中。


 遍く全ての『魂』が循環する狭間。

 真っ暗な空間に、浮遊する『魂』が幻想的に映える。

 浮世離れした彼岸。

 非現実的であり、架空でありながら、実在する虚無。

 そんな場所で。

 俺たちは示し合わせたかのように全く同じタイミングで現れた。


 交差する視線。


 それだけで、互いに何が言いたいのか理解できた。

 それくらい、一緒にいた。

 それくらい、一つになっていた。


 だけど俺は、あえて声に出して言う。

 ……どうやら、相手も同じ思考だったらしいが。




「最後の勝負といこう──アルドノイズ」


「決着をつけようか──向井宏人」




 俺は、俺の姿をしたアルドノイズとそう言い放ち合った。


 正真正銘、最後の戦いが始まる。



 * * *




「──さて。さっそくですが、先日の戦いの振り返りといきましょう」



 俺が目覚めた次の日には、戦いに参加していた皆んなも大体目が覚めた。

 俺や瑠璃は皆んなよりいち早く気絶していたため一日早く起きたわけだが……流音はどうやら意外と余裕があったらしい。

 だから彼女にはとりあえず俺たちが滞在している街の調査に赴いてもらっていた。

 昨日の今日で悪いが、これも大事な仕事なのだ。

 菱花が見た目は完全にもとの世界に直してくれたとはいえ、細部までしっかりと復元できているかを調べるのも必要だろう。

 ……とはいえ、たとえ食い違いを発見できたとしてもそれを修正する力を俺たちは持たないわけたが。

 まあ、知っておくことが大切なんだ。


「何か、昨日の戦いで違和感を覚えたりした人はいませんか?どんな些細なことでもお願いします」


 それで、俺たちは今は昨日の戦いの振り返りをしている。

 セバスが進行役をしていると、さっそくアリウスクラウンが手を上げた。


「あの、なんだかんだあって結局うやむやになってしまったのだけれど……私のお母さん、死んじゃった?」


 ……そういえばアリウスクラウンの母、セリウスブラウンも今回の戦いに敵として参戦していたんだったな。

 その相手を務めたのは──


「……すみません、アリスさん。僕がやりました」


「そっか。お母さん、なんて言ってた?」


「最後にアリスさんの顔が見たかった、と」


「……」


 ……重たい雰囲気が場を支配する。

 だがそんな状況でも空気を読まない俺の両隣の奴らは、テーブルの真ん中にあるお菓子に手を伸ばして舌鼓を打っていた。

 お菓子を頬張る音だけが鳴り響く……。

 アリウスクラウンは、そんななんとも言えない空気を笑って壊した。


「正直、母さんのことはあまり気にしてないから。セバスも、あまり責任を感じなくていいのよ」


 アリウスクラウンが、優しげにセバスに微笑む。

 しかし当のセバスはと言うと。

 

「あ、はい。敵でしたからね。責任なんて感じてませんよ」


 そうだった、こいつも空気読めないんだった。

 アリウスクラウンのこめかみがビシッと音を立てたので、俺は咳払いをして──両隣の奴らの頭頂部にげんこつを食らわす。


「お前らはいい加減食うのやめろっ」



「「いっ──た〜〜〜い!」」



 俺の両隣──ニーラグラとダクネスがわざとらしい悲鳴を上げた。

 

「……おい。ニーラグラはともかく、ダクネス。お前戦った時めっちゃ殴ったのに笑ってたよな」


「だって私はダクネスであってダクネスじゃないんです〜。宏人くんのえっち」


「おんなじ『魂』使ってる時点でもう本人だろ……。あと今俺は女だ。えっちじゃない。男だったとしてもえっち要素はなかった」


「……宏人くん。それって大丈夫なんですか……?」


 俺とダクネスの会話に、セバスが冷や汗をかきながら割り込んできた。

 ……まあ、心配するわな。

 なにせダクネスはめちゃくちゃ厄介な敵だったからな。

 

「安心してくれ。こいつの能力は今『森羅万象』。もっと細かく言うとこいつ自身が『森羅万象』みたいなもんなんだ。で、その所有者は俺。こいつが何かやらかしたら俺の一存で消滅させられることができる」


「でもでも、私が何かやらかさない限りは自由にしていい、って約束してもらったんだよねー」


 ダクネスは、ニコッ!と笑って。


「これからヨロシクね?セバスくん、アリスちゃん、瑠璃ちゃ……あぁめんどくさいっ、皆んなよろしく!」


「……まあ、ツッコみたいところは山ほどありますがいいでしょう。僕たちとしても強い味方が増えるのは嬉しいです。よろしくお願いします」


「実際に死闘した身としてはなぁんだか釈然としないけれど……。まあ、やらかさないのなら、なんとか……」


 セバスとアリウスクラウンは不服ながらも納得してくれた。

 他の瑠璃、星哉、ニーラグラも否定する気はなさそうだ。

 ニーラグラはまず聞いているのかすら怪しいが。

 それはともかく。


「じゃあ今度は俺が聞きたいんだが──クンネルに、何があった?」


「……」


 俺の言葉に、瑠璃がビクッとして顔を俯かせる。

 ……今回の戦いの死者は、カナメ。

 実際俺も死んだのだが今こうしてなんとか生き残ってはいるが……今はそれはどうでもよくて。

 問題は、治療室で寝ているクンネルが未だ目を覚まさないということ。


「……黙ってしまってごめんなさい。そうね──話すとしましょう」


 そう言い、瑠璃は俺たちの戦いの裏側で起こった出来事を語った。

 どうやら俺の知らないところで瑠璃は半分死んでいたらしい……。

 確かにただの能力でカミノミワザに立ち向かうのは無謀だとは思ったが、まさか死ぬギリギリまで菜緒と戦っていたとは思わなかった。

 そして菜緒が──『世界真理』が瑠璃を倒すために権能をフルに使い、瑠璃は瀕死の状態まで追い詰められてしまったと。


 そんな瑠璃を──クンネルの反転効果の『吸収』が救った。


「……なるほどな。俺の他対象の『変化』みたいなものか」


「ええ。宏人の『変化』はもとが自己対象限定だったから他対象と銘打っていたけれど、クンネルの場合はもともと自己対象も他対象も可能だったからね。反転効果と言わせてもらうわ」


「それで、クンネルさんの反転効果の『吸収』の能力はなんだったんですか」


「放出……いえ、発散と言った方がいいのかしら。ともかく『吸収』の反対の現象──彼女の命が、私に一部移されたの。空っぽのコップに水を注ぐように」


「ッ……。それって……」


 俺はなんて返したらいいのか分からず言葉に詰まる。

 能力の譲渡といった、本来の使い方と違う仕方を『変化』で無理やり使うことになった際に感覚を掴んだのだろうか。

 それとも……。


「『者』級になったのね。クンネルは」


「その線が濃厚ね。ともかく、私はクンネルの『吸収』によって、言葉そのままクンネルの命をもらって生きているわ。さすがにクンネルも全部を私に移したわけではないと思うけれど……いつ目覚めるかは、分からないの」


 アリウスクラウンの言葉に瑠璃は納得しつつ、顔を俯かせてそう言った。

 罪悪感があるのだろう。

 俺だってそうだ。

 今、瑠璃と同じように那種の命を文字通り使わせてもらっている。

 瑠璃は同じ境遇にいる俺に気遣ってか、これでこの話題を終わらせることにした。

 

「……ありがとな、瑠璃」


「一体なんのことかしら。これ以上私が辛い思いをしたくないだけよ」


「そんなことよりさー。セバスくん、さっさと言いたいこと言っちゃいなよ」


 突然、ダクネスがそう言って割り込んできた。

 てっきり俺たちには無関心だと思っていたのだが、そうでもないらしい。

 意外そうに見つめる俺を、ダクネスは心外そうに口を尖らせる。


「今、私と宏人くんは一心同体なんだよ?私が死んだら宏人くんの『森羅万象』は失われるし、宏人くんが死んだら私の──『森羅万象』の所持者がいなくなるってことだから私も存在できなくなる。分かる?分かって!」


「お、おう。めっちゃ納得」


 要するに、俺が死んだらダクネスも死ぬのだ。

 そりゃあ俺のことを気にかけるようになるだろう。

 下手に善意とか言われるより余程納得である。

 そんなことより、ダクネスの今の言葉が気になるところ。

 俺たちのそんな反応を見て、セバスは真面目な雰囲気で。



「凪の『神ノーズ』の権能の一つ、『七大天使』。──その中で、なぜか『ガブリエル』だけが発動されなかった件について。皆さんの意見を聞かせてください」



 ……セバスはまだまだ面倒なことが続きそうな不安げなことを話し出したのだった。

 


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