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超能力という名の呪い  作者: ノーム
十七章 最終決戦・後編
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269話(神サイド) 頂上決戦㉑


 互いに名乗り終えると同時、凪は一つ息を吐いた。

 それは凪が集中する際に行う動作。

 凪の手に持つ緑の剣──神剣『翠龍』。


 ただでさえ惚れ惚れするくらい美しいそのエメラルドが、凪から力を与えられ更に輝きを増していく──!


「神剣──『翡翠龍』」


 やがて完成するは、様々な種類の緑で染められた異質な剣。

 生命力溢れる『命』の剣。


「来い。神剣『暗黒龍』」


 俺も虚空から自慢の剣を取り出す。

 凪の『翡翠龍』とは正反対な雰囲気を放つ、『死』の剣……なんだかまるで俺が悪役みたいだな。

 それはともかく、よく見てみると『暗黒龍』がいつにも増して禍々しくなっている……。

 凪みたいに、俺も進化したからその力を吸収したのだろうか。

 

 俺の『暗黒龍』も、凪の『翡翠龍』も龍種の中では若い部類にあるから、顕現したところで出現するは図体がでかいだけの怪物。

 しかし剣のままでなら、そのありあまるエネルギーを十全に活用することができる。


 見た感じ『暗黒龍』と『翡翠龍』の内包エネルギー量は同等。

 これなら、十分凪に通用する。


 ただ一つ懸念しているのは──凪の剣のレベルがよく分からないところ。


「行くぞ──!」


「……ッ!?」


 刹那、凄まじい速度の剣戟が俺を襲う。

 ギリギリで反射して『暗黒龍』で受け止めるが、続く連撃に身体中が切り刻まれる。

 とはいえ俺は神人。

 いくら身体が裂けようが、そのありあまる回復能力で悉く傷を癒す──はずなのだが。


「なるほど、これが『絶対攻撃』か」


「……」


 凪の『天照大神』の権能の一つ、『絶対攻守』。

 相手に絶対ダメージを与え、かつ回復させない『絶対攻撃』と、相手からの攻撃を絶対に防御できる『絶対防御』のどちらかを常時発動できるぶっ壊れ能力だ。

 事前に狂弥から聞いていてよかった。

 回復できない──それは、回復能力ではの話。


 俺の身体の傷が、あっという間に再生された。


「……やはり、同格の権能では互いに効果が打ち消されるのか。厄介だな」


 凪が苦い顔をする。

 俺がセバスや俺自身を『絶対攻撃』から回復させられた理由、それは言わずと知れた『変化』にある。

 今では『森羅万象』の権能の一つとなっているが、その効果は未だ健在なのだ。


 凪の連撃が止まったタイミングで俺も仕返しの一閃。

 だが凪はそれを読んでいたのか、剣の裏でそれを受け止める。

 そして凪の気配が揺らぐ──『絶対攻撃』を『絶対防御』にシフトしたのだろう。

 『絶対防御』……破れなくはないが、毎度『変化』で防御壁を壊さなくてはならない。

 この一手間はかなり辛い……!


「正直、話にならん」


 凪はつまらなそうにそう言うと……一気に俺を吹っ飛ばした。


「──!?」


 後方に飛ばされる俺に凪が追撃の『絶対零度』!

 付近にいる全てを凍てつかせる恐ろしいそのカミノミワザ──だが俺はそれを一刀両断する。

 凪が『翡翠龍』に『絶対攻撃』を付与していたように、俺だって『暗黒龍』に『変化』を付与しているのだ。

 超能力だった頃の『変化』ならともかく、今の『変化』はカミノキョクチの『森羅万象』の中の一つの権能。

 その性能は段違いであり、たとえカミノミワザの最高位である『絶対零度』だって、難なく無効化できるのだ。

 

 俺は『絶対零度』を切断した勢いのまま凪に反撃。

 『森羅万象』の権能の一つ、『完全予知』で凪の動作一つ一つを予測し、的確に攻撃を与えていく。

 凪の左腕に、俺の『暗黒龍』が深く刺さる。

 そしてそのまま『暗黒龍』を介して『変化』を発動!


「ッ!器用だな」


 凪は顔を顰め──途端に暴風を吹き荒らす!


「な──!」


 突然の乱風に俺は遠方に吹き飛ばされる。

 凪はそのまま離れた位置から剣を振り──その斬撃が俺に襲い掛かった。


 これは、ニーラグラの能力!?


 さっきからやけに速いし押し合いに強いなとは思っていたが、ニーラグラの『風』が絡んでいるなら納得だ。

 どうやら凪は凪の中にいるニーラグラの権能も十分に使いこなしているらしい。


 俺は幾度も迫り来る斬撃を弾き返す……するといつの間にか『真なる太陽』を形成している凪が。

 そしてノータイムで放たれる『真なる太陽』。

 しかしそういった攻撃は俺の『森羅万象』の前では無意味──そのため俺は手で触れただけで『真なる太陽』を破壊した。


 その瞬間。


 凪の人差し指が、俺に向けられる。


「最速出力──『烈日煉獄』」


 それは『真なる太陽』のエネルギーを極限まで圧縮した超高密度エネルギー収縮砲。

 その光線が、俺の胸を穿った。


「……!」


 だが今の凪は『絶対攻撃』を使用していないため、神人の回復能力でどうとでもなる……のだが、隙ができることは事実で。



「式神構築──!」



 それは本格的にまずい──!

 俺も対抗しようと急いで手を動かそうとしたが……!


「ゲホッ……!」


 手は動かず口から血が噴き出る。

 無理やり外傷の回復能力の循環を早まらせた無理が祟ったのか、まだ内臓までは回復できていなかったらしい……!

 いつも『変化』で無理やり一気に修復していた感覚がここにきて失敗に繋がった。

 凪の口角が、少し上がる。

 まるで最初から読んでいたとばかりに……!

 

 そんな憎たらしい顔をしていた凪──その口から、血が溢れる。


「ゴホッ……!?」


 俺よりも酷い量の血が凪の身体を濡らす。

 これは。


「カナメ……!」


 凪は神ノーズに成ったといえど、神人の時に受けたダメージは未だ健在なのだろう。

 カナメが死んでまで与えたダメージ──ここで必ず決着をつける!



「式神構築──『天地万有』ッ!」



 それは俺の新たな『世界』。

 『変化自在』、『変獄廻在』の集大成──『天地万有』。

 『天地万有』の能力、それは。


「この『世界』の能力は、常時『森羅万象』の発動──つまり、お前の異能は全て封殺される」


 『天地万有』では、俺以外の異能の存在など認められない。

 排出される異能は発動と共に霧散するのだ。

 だが身体の内部で完結する異能はその対象外で……計らずともダクネスの『旧世界』と似たような能力になっているのである。

 

 そんな『世界』で、俺は『森羅万象』の権能の一つである『八熱地獄』で、凪を焼き尽くす。

 『八熱地獄』はアルドノイズのカミノミワザが『森羅万象』に含まれた結果生まれた権能の一つだ。

 威力としては『バースホーシャ』と同等ぐらいといったところ。

 

 俺は無言で、凪に歩み寄る。


 決着はついたのだ。

 俺の『天地万有』に入った時点で、いくら神ノーズといえど詰むことは避けられない。

 『八熱地獄』は容赦なく凪を燃やしたが、神ノーズとしてのありあまる回復能力が凪を癒している……が、凪はもう異能を使えないためこれ以上戦うことは無意味だろう。


 

「凪。俺の勝ちだ」


「……」



 凪は答えない。

 確かに、万全の状態の凪との戦いだったら、勝負の行方は分からなかっただろう。

 だけど。


「いや違うな……俺たちの勝利だ。俺との決着は、また今度でもつけようぜ」


 俺は凪に手を差し出す。

 凪は俺のその手を数秒見つめ……自嘲気味に笑った。


「相変わらず、お前は甘いな。俺はカナメを殺したんだぞ?そんな俺を許すのか」


「はぁ?許すわけねーだろ。俺がアスファスにやったみたいに、お前のその無駄に強力な力を封印して、みんなに土下座して謝ってもらう。その後のことはこれからのお前の態度で決めることにするよ」


「……はっ。だから、それが甘いと言っている」



 凪はそう言って、俺の手を握る──そして、俺の手を破壊した。



 * * *



「はぁ。彼、やってしまいますよ」


 ハーヴェストは眼前の映像を見ながら、気怠げにそう言った。

 彼とはもちろん新野凪のこと。

 凪は先程式神の構築に失敗していたが……宏人の高次元『世界』をその身で体験して、掴んだのだろう。


「ふむ。確かに先程は失敗していたが、それもこれもおそらくは『世界』とは世界の中で構築するもの──という固定観念に囚われていたからだろうな」

 

 ダガルガンドは映像の向こうの凪を値踏みするような目で見てそう言った。

 今のダガルガンドは先程までとは一変して落ち着いた様子だ。

 それもこれも、先程しっかりと今後の方針が決まったからである。

 この戦いに向井宏人たちが勝てなければ──ダガルガンドとハーヴェストが菱花を殺し、そのまま凪も殺す。

 神ノーズの三角関係が初めて崩れることとなるが……制限の効かない新たな神ノーズの脅威はそれ以上なのだ。

 

 そのため冷静に戦況を分析するダガルガンドに、菱花も深く頷く。



「私たち神ノーズが神人と違う点は二つ。一つはカミノキョクチの保持。もう一つは──『世界』が、この世界そのものに影響されること」


 

 * * *



 凪が発動した異能──それは『変化』。

 どうやら未だ『模倣者』は使用可能だったらしい……!

 俺は痛む手を抑えながら、迷わず決断する──!


 ──凪を、殺す!



「『奥義』──ッ!」


「──世界改変」



 俺が『奥義』を発動すると同時、凪は両手を合わせてそう叫んだ。

 それは、まるで『式神構築』のよう……だが。

 凪がその口から唱えたのは、世界改変──それは。


 俺の『奥義』が発動するよりも早く、この『世界』を──『天地万有』を消滅させた。


 パラパラと頭上から『世界』の欠片が降り注ぐ。

 ……どういう、ことだ?

 凪の『世界』が展開されるならともかく、これではただ俺の『世界』が破壊されただけだ。

 ならばもう一度式神を構築すればいいだけの話で──




「第四世界──『八紘一宇』」




 刹那──世界が、塗りつぶされる。



「は──?」


 思わず間抜けな声が出た。


 なにせ、凪は『世界』を構築するのではなく──この世界そのものを改変したのだ……!

 

 凪と同じように、俺の『天地万有』だってカミノキョクチで創った『世界』だ。

 だがここにきて、神人と神ノーズという生物としての差が顕著となる──!


 あり得ない現実に思考が硬直する俺の前で、凪がドス黒いオーラに包まれる。

 それは凪が望んだ力。


 七録カナメから受けたダメージから逃れるために己のエネルギーを犠牲にし、超短期決戦型の最適解に改造した姿。




「さぁ、そろそろオワラセヨウ」




 もはやヒトの形から逸脱した凪は、そう言ってこの『世界』を動かす──!


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